30年のブランク
私が、初めてギターを手にしたのは中学生の頃でした。
当時年齢制限のなかったアルバイトをして貯めたお金で、YAMAHAの16,000円也(当時は消費税ナシ)のフォークギターを買ったのです。買ったお店は神戸・元町商店街に昔あったYAMAHA楽器店。あまりの嬉しさに、半世紀ほども前のことなのにはっきりとした記憶が残っています。例えば、震える手で16,000円もの大金を渡した店員さんの顔も覚えている(笑)。
なぜフォークギターだったかというと、
ボブディランにあこがれたから。
私の最初のヒーローはボブディランでした。
転機は、地元の高校に進学すした春でした。
ジミヘンの存在を知り、文字通り「電気」に打たれたようなショックを受けて、どうしても「エレキ」ギターが欲しくなります。
多くのロックギタリストが愛する名器ギブソンのレスポールか、はたまた、やはりジミヘンが愛用したフェンダーストラトキャスターか…。
それは、少年にとってはあまりにも意味のない選択であった。なぜって、お金がない。手元には1000円もなかったのだから。
当時悩みに悩んで少年は決意しました。極端に安価な通信販売でもなんでもいい、とにかくエレキを手に入れるんだ!と。1万円少しお金を貯め、Gibson LP Standardを真似てつくった「Tomson LP Standard」の購入をニコー通販に申し込む。当時漫画雑誌の裏表紙にカタログ広告を出しまくっていたニコー通販の思う壺、飛んで火にいる夏の少年でした。
これがやはり安かろう悪かろうで、ギターのカタチをした別の楽器?みたいなひどい代物。エレキギターのボディも指板も、種類は別にして「木」でできているのだけれど、このニコー通販のレスポールモデルは、プラスチック製でした。
そんな代物でも、「本物」を知らない、なん十万円もする本物に触れたこともない無垢な少年にとっては、「Gibson LP Standardというのは、こういうものだ」と。ところが、高校の軽音の部室に持ち込んで鳴らして見ると、これが少年の耳にも明らかにわかるひどい音。チューニングも合わない。
少年は、「飛んで火に入る夏の虫」から「安物買いの銭失い」へと。一夜にして失意の「変態」を遂げたのでした。
私は、それなら自分で作ってやると。
高校生の時に作った、自作のギターが写真です。当時流行って「いたクイーンのブライアンメイのサウンドが欲しくて、ピックアップ周りに独特の工夫が施されています(涙)。ちなみにヘッドには「Gibson」とあるのですが、これはアクリル絵の具を使って私が筆で描いたロゴ。もちろんやってはいけない行為ですが、当時はそんな心配をするほどの頭もない。少年法に照らしていただきたいし、あれから実に46年!すでに時効ということで。
ギタリストになりたくて、これほどギターに夢中になっていたにも関わらず、私は高校卒業時にその道を諦めて美術に転向。
芸大に進んでからは本気になってギターを弾く事はなくなってしまいます。
そして、その後30年という途方も無い年月を、ギターに触れることもなく過ごすのでありました。
30年のブランクは、大きい。