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元彼《モトカレ》・後悔と許し/小説⑨-②/ストレスジャンププール

1時間後に、来てくれる…

元彼モトカレとの電話は、お金が無くなり、そこで終わった

ほ、ほ、本当に、来てくれるのかな?

所持金0円の無一文になった、あたしには、もう選べる選択肢は少ない…

公園の時計を時々、気にしながら、、、

来る・来ないと、花占いでもするように、頭の中で繰り返し、つぶやいていた

陽も陰り、街灯に明るく照らされる中で、視界に懐かしい姿を見かけた

元彼だった!

この公園で今、真剣に人を探す人なんて、他いるはずがない

けど、あたしと目が合ったはずなのに、気付いていないのかな?

せっかく来て貰ったのに、行き違いと思われたら困る

元彼が、最後の頼みだから…

走って駆け寄りたいが、キャリーバッグを引きずる様に、歩くのが精一杯だ

お願い、まだ行かないで…

そう思いを込めて、元彼に近づく…

話せる距離まで近付くと、あたしと、気付いて貰えた様だった

とても驚いていて、複雑な顔をしている…

「…元彼女、ひ、ひさしぶりだな。

待たせたかな?」

「…うんうん。

本当に来てくれるか、分からなかったけど…

来てくれて、ありがとう。

元彼、なんか変わったね。」

「そ、そうか? 別れてから、大分経つしな…

なあ、オレの番号よく覚えていたな?」

「語呂合わせのいい番号だったし、あたしは印象に残るものは、昔からよく覚えていたでしょう?

ゲームの攻略をする時も。」

「あー、そうだったよな。

ゲームで記憶力が求められる時は、よく教えて貰っていたよな。

懐かしいな…

と、ところでさ…

電話してくれたのって、そっ、その、なにかあったのか?

財布を落として、しまったとか…」

「…」

別れる前、一緒にゲームをする時以外は、ケンカをすることが多くなった

元彼の言葉や言い方が、キツイと感じることもあった

今は、なんだか、丸くなっている様子に、とても驚いた

新しい女が、いるのかな?

別れてから、大分経つし、いてもおかしくはないか…

「…言いたくない。」

あたしが、この言葉を言うと、ケンカに発展することが、多かった

なのに…

「…そうか

言いたくないなら、言わなくていいよ。

なあ、ひさしぶりに会ったし、ご飯でも食べに行かないか?」

行きたい!

と言いたいけど、甘えても、いいのかな…

もう付き合っていないし、友人という関係でもない…

けど、、、

「…お金持ってないから…」

ああ、どうして素直になれないんだろうか?

素直に、気持ちを言えないのだろうか?

「…金は、気にしなくていい。

この前、宝くじが当たったから。

それに、ひさしぶりに会ったんだしさ…」

宝くじを買わない人だとは、知っている

なのに、見え透いた嘘を付いたりして…

変わったなあと思った

付き合っていた頃より、頼れたり、甘えられる

「…行く」

「よし。何か食べたい物あるか?バック、よかったら持つよ?」

頷いてから、元彼にキャリーバックを渡す

「なんでもいい。静かなお店なら…」

「…わかった。じゃあ行こう」

元彼が、あたしの腕を軽く掴む

まあ、元恋人同士だから、手を握ったりしないよね…

あたしの歩みを気遣いながら歩く元彼は、泣きそうな顏をしていた

~~~~~~~~~~

お店に着くと、席を案内されるまで、少し待つことになった

静かな音楽が流れるお店だけど、ここでも人の視線が怖い…

住む家を失くしてから、ずっと怖い思いをして、手足が震える…

それに気付いた元彼が、視線の主達を睨みつけている

あたしは、元彼の服を引っ張り、止めてと首を振るが、動かない

ケンカしている時は、怖くて・嫌な奴で・クソ野郎で・鬼みたいな顔をすると、思ったけど…

こんな顔もするんだなあ

付き合い始める前、あたしが関わっていない仕事で、ミスをしたと濡れ衣を着せられた時、あたしの事を庇ってくれたんだよね

あの時も、同じ顔をしていたのかな?

弱いくせに、ちっぽけな正義感と、困っている人に、小さな手助けができる人

そんな所が、当時も好きになったんだよね

ようやく席に案内されると、視線からも解放された

奥まった席は、周囲の視線が遮られる場所で、ホッとする

注文した料理が、暖かい湯気を出しながら、配膳された

~~~~~~~

元彼女に、食べる気力が残っている様子に、ほっとした

公園で、痩せ細った腕を掴んだ時、、、

ここまで我慢していたのか?

何で言わないんだ?

元彼女の周りで、気付いたり、助けてくれる人はいなかったのか?

一体誰を責めているのか、自分を責めているのか、分からなくなり、苦しさで胸が一杯になった…

席を案内されるまで、元彼女に向けられた、不躾ぶしつけな視線と好奇心に、怒りがこみ上げた

と同時に、日々、こんな仕打ちの中で、ただ黙って耐えていたのかと思うと…

とにかく、事情や状況がよく分からない

緊急事態宣言や蔓延防止措置が、ようやく解除されて、20時閉店だったのが、21閉店と1時間だけ延びたので、少しはゆっくりできるだろう

元彼女の過去を、必要以上に詮索する気はない

オレ自身、別れた後、荒れて生活も乱れ、自暴自棄になりかけた

そんなオレを見捨てずに、厳しい事を言ってくれたり、見守ってくれた友人たちの、おかげさまで、なんとか立ち直れたし、今彼女イマカノと出会う事も出来た

聞くのは、今後の元彼女の為に必要なこと

元彼女が話したくないことは、無理に聞き出そうとしない

この2つを念頭に、根気強く、ゆっくりと話しを聞いた

~~~~~~~~~~

オレと別れた後、元彼女も荒れたらしい…

悪政禍の影響で、派遣契約を急遽短縮され、契約を途中で打ち切られた…

十分な準備期間がない中で、失業…

また昨年、旅行促進政策のゴタゴタ時期から、不自由な生活に対する不平不満が高まり、新しい職場での対人関係も、困難を窮めたと…

仕事が安定せずに、電気・ガス・水道・携帯の料金を滞納してしまい、家賃まで払えなくなると、不動産会社から退去勧告が出された…

住所が無くなると、働ける場所は限られる…

身元をうるさく詮索しない日雇い派遣で、なんとか日当を稼ぐが…

他人の気配と閉鎖空間で、心身が休まらないマンガ喫茶で、有料のシャワーを借り、よく眠れぬ日々を過ごす…

悪政禍の蔓延で、仕事自体が無くなり、マンガ喫茶に泊まる、お金すら工面が難しくなったと…

夜間空いているお店で、安心で安全な場所は、コンビニ位…

1つの店には長居せずに、朝になるまで、転々とコンビニを渡り歩いたそうだ…

昼間は、商業施設の休憩場所で横になるが、注意放送が頻繁に流れるから、気が休まらず、仕方なく、お酒を飲んで寝ていたと…

今後にも関わるので、お金の話しは避けられないので、慎重に話しを聞いた

光熱費や家賃を滞納して、支払うことが出来なくなっても、借金はしなかったと聞いて、ほっとした

"返す当て・返す見込みが無いのに、借りたら返済出来なくなるし、利息を払うだけで精一杯になり、元金当初借りた金額は一向に減らなくなるから"

小説や漫画も好きだった元彼女は、借金の怖さを知っていたから、借りることができなかったと…

身体を売ったら、即金が手に入るとも考えたが、借金と同じで、一度泥沼に入ると、絡めとられて、抜け出せなくなるだろう…

進んでやりたくもないし、怖かったからと…

お金が無いと、お店の商品や人さまの物に手を付けようと、よこしまな思いも出てくる…

けど、それをしたら、自分が自分でなくなりそうで、出来なかったと…

冷静に客観的に、元彼女の話しを聞こうと努めたが、聞いているだけで、苦しく辛くなってきた

ギリギリの所で、辛うじて理性が働き、なんとか踏ん張っていたのかと思うと、、、

"役所に行っても、嫌な思いをしただけ…"

と聞いて、ようやく公助が、出てきたと思った

あって、ないような公助が…

アパートを追い出される前に、元彼女1人で役所に助けを求めに行ったが…

生活保護の申請を諦め、絶望したと…

直接的な言い方は、されなくても、、、

"あなたよりも、もっと大変な人はいる"

"働けるなら働いて"

"役所に頼る前に、身内や親戚に頼るのが先だと"

遠回しな言い方や、言葉の中に、そういった意味合いを感じたそうだ…

真面目に働いて、所得税も住民税も消費税も払ってきたのに、生活に困り支援を求めても、、、

"自助努力をしなさい"

という精神論で、切り捨て見捨てるのか?

何の為の、税金や社会保障だ?

誰が為の、政治だ?

五輪開催で選手や関係者を招待して、接待するぜいきんは、有り余っているくせに…

生活や暮らしに困っている人には、手を引っ込めるのか?

疫病対策しか眼中にない体を装うが、しれっとデジタル化の予算執行と法整備は進める矛盾…

日頃、感じていた怒りが、言語化されてくる

大義名分と口実さえあれば、それが正義や正しいことと、されやすいし、思わせやすい…

1990年代のバブル崩壊期に、"不良債権処理"を声高に叫ばれ、悪徳弁護士を筆頭に、銀行・官庁・政治家がグルになって、企業・個人の土地や資産を奪い獲り、不幸に陥れた…

今は、元彼女のことに集中しようと、気を戻そう…

なんとなく口にするのを避けていた事だが、正面切って言わなきゃならない事がある

それは、お互いの関係を明確にして、尊重するためにも…

必要な話しを聞き終えて、オレは勇気を出して、切り出す…

「辛いことや苦しかったこと、話してくれて、ありがとう。

本当に、大変だったな。

オレは、何も知らなかったし、何も力になってあげられなかったな…

けど、こうして元彼女に会うことができて、よかったと思う。

なあ…

その、今後のことについて話をする上で、元彼女のこと、、、

今彼女イマカノに電話してきても、いいか?」

ようやく、今彼女の事を口に出来て、ほっとすると同時に、元彼女の反応を見る…

「…いいよ。」

言葉とは裏腹に、驚きと暗い影が顔を覆っている…

ケンカが多かったから、お互いに、穏やかに話したり聞いているのは、珍しいことだった…

元彼女が、オレの事をどう思っているのか、気持ちは分からないけど、

"縒りを戻す"とか、期待させてしまっても申し訳ない…

「よかった。わるいけど、少し席を外させて貰うよ。追加で頼みたいものは、あるか?」

「…うんうん。大丈夫…」

「じゃあ、ちょっと待っててな。」

そう言うと、オレは席を立ち、店の外に出た

今彼女のスマホに電話して、元彼女の状況を、掻い摘んで説明した

オレの想いとして、元彼女の力になってあげたいと思うこと

家に泊めるのは、自分が逆の立場なら受け入れ難いから、ビジネスホテルに泊まって貰うと考えていると伝えると…

「ここでまでの話は、いいけど…

私達に、元彼女さんを支援する余裕は、あるの?」

当然だ

2人で派遣やパートで働いて、やっと生活をしている

昇給なんて死語だろし、賞与も少額でも出るだけでも、有難い

厳しい競争と重責を負わされ、心身を壊す位、働かされる正社員になるよりも…

贅沢は出来なくても、今の収入と生活にお互い満足している

「当座は、VS5を買う金があるから、それで賄えると思う…」

「それで、本当にいいの?

今日まで、楽しみにして、お金を貯めていたじゃない?」

「…元彼女の事を知って、今、最新のゲーム機を買っても楽しくないだろうし…

また、お金を貯めたらいいさ…」

「今彼が、そう思うならいいけど…」

「よかった。

それで、今彼女に1つ、お願い、頼みがあるんだけど…」

「…なあに?」

「元彼女が、安心して泊まれそうな、ビジネスホテルを探して貰えないか?

オレが探すと、オレ好みのホテル選んでしまうし…

同じ女性として、今彼女に選んで貰った方がいいかなと…

1つだけ条件を付けさせて貰うと…

無宿生活で、よく眠れていないみたいで、なるべく静かな部屋だと助かる…」

「…わかったわ。探してみるね。」

「ありがとう。帰ったら、詳しく話すから。今彼女の話しも聞くから。」

「…うん。」

今彼女との通話を終えて、ほっと胸を撫で下ろす

よかった…

帰ったら時間を作って、ちゃんと話さないと…

席に戻ると、元彼女は横になって眠っていた

ずっと気を張った生活で、疲れていたのだろう…

起きるまで、そっと待つことにした
~~~~~~~~~~
元彼女が目覚めると、店を出た

スーパーに寄り、食料や生活用品を買い、今彼女が調べて予約してくれた 、ビジネスホテルへ向かう

ホテルに着くと、流石だなと思った

女性が安心して泊まれる立地や環境で、料金も高くない

自分に出来ないことを頼んでよかったし、期待や信頼に応えてくれた、今彼女に感謝しかない

フロントで数日分の料金を払い、部屋まで一緒に向かう

「じゃあ、今日はここで。

あと、テレホンカードと、これは当座のお金で…」

虎の子の1枚、オレにとって大金でも有るけど、一万円を渡そうとした…

「…ダメだよ。

ご飯も、食料や生活用品も、ホテル代まで払って貰って…

あたしに貸しても、返せないと思うよ…」

「…別に返さなくても、いいよ。

宝くじで当たった、お金だし。

オレが、元彼女にそうしたいたから…」

俯いて考え出す、元彼女

「…わかった。ありがとう」

と言い、受け取ってくれた

「じゃあ、今日はここで、さよならだな。

何かあったら電話してな。」

「…うん。

本当に、ありがとう。

じゃあ、おやすみなさい。」

「ああ、おやすみ。

ゆっくり休んでな。

……

なあ、こんな時に言うことでは、ないけどさ…

元彼女に言わなきゃって、思ってたことが、あるんだ…」

「………」

「今更だけどさ…

付き合っていた頃、オレ自分勝手だったり、一方通行だったろう…

些細な事で怒ってしまったり、話しもちゃんと聞いて、あげられなかったし…

元彼女の事、大切にしたり、尊重出来ていなかった…

ごめんな

バカでダメな男だった…」

しばらく沈黙が訪れる…

下を俯いたままの、元彼女が、、、

「…うん。

もう、いいよ。

あたしも…」

その先は、言葉にならなかった…

~~~~~~~~~~

軽く優しく、あたしにハグをして、元彼は去って行った

ギュッと、付き合っていた頃の様に、ハグをして欲しいけど、、、

今彼女がいて、浮気をする様な人じゃないのは、よく知っている

元彼だからこその、安心や信頼を感じると共に、寂しさや喪失も感じた…

今日は、一日色々なことが起きたと思う…

この世を去ろうとしたら、不思議な河童の夢を見て、元彼と再会が出来て…

鍵の付いた、静かで、安全な場所で眠れるのは、いつ以来だろうか?

ひさしぶりにシャワーでを浴びれ、身体の汚れも、嫌なものを洗い流せだろうか?

清潔で快適なベットに入ると、これから先や元彼の事を考えてしまうが、意識が遠退いていった…

~~~~~~~~~~

アパートにようやく着くと、まだ電気が点いていた

「ただいま」

と声を掛けると

「おかえり」

と、今彼女が出迎えてくれる

「起きてたの?」

「うん。なんか気になっちゃて…」

オレは、今彼女をギュッと抱きしめる

「ホテル調べて予約してくれて、ありがとう。

とっても助かった。

それに、元彼女と会うのに、オレの事、信じてくれて…」

「信じてはいるけど、不安もあったの…

あなたら、ウチに泊めたいとか、言いそうかな、とも思ったけど…

ホテル探してって頼まれた時、あたしの事を、ちゃんと考えてくれているし、1人で抱えこまないで頼ってくれて、安心したの。」

「うん。

あと、今彼女のおかげで、元彼女に付き合っていた時のこと、謝ることができたよ。」

「うん。言えたのね。よかったね。勇気出せたね。」

その後、元彼女の事で共有しておきたいことを話し、今彼女に聞かれたことに答えた

「ねぇ、少し何か食べる?」

と、今彼女に聞かれ、

「うん。

夜遅いのに、ありがとう…」

料理が運ばれる前に、横になると、オレは眠ってしまった…

続きます
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お読み頂いて、ありがとうございます。

ようやく続きが、書けました。

区切りを決めていたので、ここで一旦、話しを終わせたかったです

今日、見かけたつぶやきで、フリーWi-Fiで電話できる?方法があるようです

また、無宿者になる前に受けられる、生活保護以外の公助も有りますし、塩対応ばかりする公務員ばかりでないのも…

私の知見の浅さや、商業小説ではないので、取材等による裏付けも十分ではないです

けど、多くの自死されている方がいる悲しい現状に、当たらずともいえども遠からず、なのではないでしょうか?

今日も、いい1日で、ありますように

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