ゴリラの惑星とゴリラピクニック/私小説⑥-4生き方/ストレスジャンププール
バナナ食堂で、ゴリラから差し出されたバナナを、食べるか迷っている…
この世界のことも、ゴリラと話したことも忘れる…
彼女のことも、忘れ…
そう思うと、胸が苦しくなり、悲しみが込み上げた
多くの人からは異質でも、人としても、異性としても、彼女程、ステキな人に会ったことはない
クッソ!
日和ってしまった…
予防薬の話を聞きたくて、ここまで来たんだろう
肝心の話も聞かない内に、彼女と別れるなんて考えて、どうする?
「なあ、予防薬の話しを聞いたら、おれはどう変わってしまうのか、教えては貰えないか?」
「教えても構わんが、いいのか?本題に近づくぞ?」
おれの本心を確かめる様な目で、ゴリラが見る
「聞かせてほしい…」
「人や物事の本質や全体が、見えやすくなる。
つまり、人や社会の、キレイなものと汚いものが、よく見えてしまうんじゃ…
前者が溢れる世界ならいいが、後者の多さに、心身共に参ってしまう…
生まれた時は、無垢な赤ん坊でも、育った環境や本人の選択で、人を苦しめ不幸に陥れる、詐欺師やクズの多さにな…」
人を見る目がある人や、本質見抜くことができる人は、うらやましいと思っていたけど、、、
いいこと、ばかりじゃないのか…
「花のツボミや、虫のサナギの話しをしたが、オレの場合は、必要以上に情報が入って来ない様に、気を付けている。
知ると、色々と考えたり、感じてしまうからな…
心の落とし穴もあって、無力さの折り合いを付けられないと、他人を変えようとしたり、見下したり、馬鹿にしてな…
"目覚めている人・覚醒者"と自称して、心の安定を保とうとする…
分断や対立を煽る立場に変わり果て、愚かだと、オレは思う…」
そんなことが、起こるのか…
簡単に人に、勧めていい話しではないんだな…
「その中でも、無力さと折り合いを付け、日常や生活を大切に過ごし、人の心を失わずにいるのが、良心や良識がある人達だと、オレは思う。
人や社会を、批判や否定をするのは簡単だが、どんな人でどんな想いがあって言っているかで、中身も違ってくるだろう?」
確かにそうだ
彼女が役人と電話しているのを聞いた時 、とても丁寧で、公務員の立場を考えたり、人として尊重している、様子を感じた
相手の立場や力関係から「公務員だから」「店員だから」と、威張ったり、何を言ってもいいと、勘違いしている輩がいる…
どんな立場や責任のある人でも、人としては対等で有り、尊重や尊敬する相手であるのに…
「良心や良識を失わずにいるのは、生き方や信念の話になる。
自分が、どんな人間でいたいかのか?
ありたいのか?
自分を貫くことで、周囲と話が合わなくなったり、浮いてしまい、自分だけが異質だと、孤独感を感じる。
人や物事を見る、根本が違い過ぎて、理解して貰ったり、分かち合える人が少ない…
日々、周囲の人とのズレや孤独感、無力さに悩み、苦悩している…」
ああ、そういうことだったのか
ゴリラのことも、彼女のことも理解が、ようやくできた
彼女は、どこか人を寄せ付けない所や、1人で苦しみを抱えているように見えた
おれは、立ち入れなかったし、彼女自身が立ち入れさせないように、していたのか…
彼女のことを、全然分かっていなかったし、理解もしていなかったのか…
「人それぞれ、重い荷物を背負っているが、どうする?
生きずらさや困難が増えることを、背負うことになる…」
おれは、これまでのことを、振り返った
もう記憶が戻ろうと、戻るまいと
おれがおれの生き方を決める
分かれ道にいる
選びたい答えは、決まっていた
だが、おれが彼女やゴリラの様に、なれるのか?
できるのか?
不安や怖れがあった…
困難に耐え、諦めず折れないで、踏ん張っている姿は、凛として輝いている
おれには、無理なんじゃないかと…
ここまできて、怖じ気づいて、どうする…
勇気をだせ…
ちいさな、ちいさな勇気を…
「お、お、おれにも、できるかな?…
あんたや、彼女みたくには、なれないかも、しれないけど…」
「なあに、焦ることも、無理することも、急ぐこともないさ。
生活や日常を大切に
自分や大切な人との時間を、大切に過ごす
生活や人生に、しっかりと根を張ることを最優先に、生きる
これを守っていれば、心を失わずに済む
本心や本音を言えば、見過ごせない現実に対して、仕方なしに重い腰を上げて、動いてるだけだ。」
「あっ、これは彼女の口グセでさ、、、
"本当は、自分のためにもっと時間を使いたい"
と、よくグチを溢していたよ。
そういう、ことだったのか。」
「ふふふ、オレと気が合いそうだな。」
なあんだ
特別に思えたゴリラも彼女も、おれらと変わらない、1人の弱い人間だった
「よし、覚悟が決まったよ。予防薬の話しを、聞かせて貰えないか?」
ゴリラが頷いてくれた
ようやくだ
ようやく、知ることができる
おれは、真逆のことを言っていたらしい…
一体、何を知っていたのか?
何が、起きているのか?
つづく
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お読み頂いて、ありがとうございます。
ようやく、書きたい本題に辿り付けました
すぐに、話しを持っていくことも、できましたが…
私が日頃、抱えている、悩みや葛藤を、反映させて頂きました。
結果的に辿り着いてしまい、選んでしまった生き方を、私はなかったことにして、後戻りもできなくて…