憧れの異世界転生?!シンデレラを救うには…小説⑫-1/ストレスジャンププール
はぁ〜
駅のホームのベンチでため息を吐いた
役所での続きを無事に終えて、どっと疲れた
手続き上、自分が家族から、どんな扱いを受けてきたかを、要約して話す必要があるからだ…
あたしの身の上を、どう思うかは相手の自由だけどさ…
家族から、、、
家族の中で、、、
あたしだけが、、、
大切にされない存在で、粗末に扱われてきた事を、自分の口で語る時、苦しさや悲しさや辛さが込み上げてくる…
けど、これでようやく、再出発ができるんだ
少しだけ安心して、手に握っていた封筒を落とした
中には、役所で手続きした書類が入っている
立ち上がって、拾おうとすると反対側のホームで通過電車が走り去っていく
強風で、封筒が舞い上がった!
やばっ💧
反射的に追いかけると、封筒がホームの下に今にも落ちそうだった!
けど、怪我でもして働けなくなったら困るし、駅員さんに頼めば大丈夫だ
足を止めようとした時、足元の違和感を感じ見ると、、、
チーズ🧀!?
な、な、な、なんで駅のホームに落ちてるの?
身体がホームに飛び込んで行くのを止められず、怖くなって目をぎゅっと閉じた
ざぶ〜んという水音が聞こえ、意識が遠のいていく、、、
~~~~~~~~~~
離れた所で、人の話し声が聞こえる…
目をゆっくり開けると、なんだか視界が変だな…
とても大きい広い空間にいるようだ
ここは、夢の中なの?
少し先に、水溜りが広がっていて近づくと、、、
えっ!?
…………
ネズミが映ってる、、、
顔や手足を動かすと、それに合わせて動いている、、、
あ、あ、あたし、ネズミ🐭になってしまったの!?
「だ、だ、誰かいるんですか!?」
不意に女の子の声がして、身体がビクッと固まる
部屋の奥のドアが開いて、ホウキを持った10代位の女の子が入ってきた
あたしに少しずつ近づきながら、ホウを振り上げて、、、
「や、や、やめてー!」
あたしは叫びながら、部屋の中を走り逃げ回った
「あっ、あのう、もしかして魔女さんですか?」
「えっ、魔女!?」
「…だってネズミなのに、人の言葉を話しているから、、、」
魔女って事にした方が、都合がいいのか?
「そ、そ、そうなのよ。なんか呪い?
呪い返し?にあってしまってね…」
「それは大変でしたね。
もう2年以上経ちますが、魔女狩りが各地で行われ続けていて…
魔女でないと訴えても、魔女検査と異端審問官に魔女と認定されると、、、」
「その魔女検査と異端審問官っていうのは?
そ、その、呪い返しで、ちょっと記憶がね、、、」
「魔女検査は、魔女検査用の薬液に髪の毛を入れて、陽性か陰性かを判定するそうです。
陽性反応が出ると、異端審問官によって二日以内の行動を問い質されるそうです。
どこに行ったのか、誰といたのか、どれ位一緒にいたのか…
質問に答えないと、罰金の支払命令か留置所に拘留されるそうです…
魔女疑いが強いと、魔女専用病院に強制入院させられます。
入院の必要がないと判断された場合や魔女と15分以上一緒に居た人は、自宅の自室や魔女ホテルに10日間籠り、一切の外出を禁じられます…」
えっ!?
それって、あたしの世界で起きている事と、すごく似ている様な…
「そ、そ、そうそう。
それよ、それよ。
あたし魔女じゃないのにさ、、、
馬鹿らしいし嫌になってうんざりしたから脱走したらさ、新聞とかで叩かれたり、指名手配されてね…
役人共から逃げる際に、魔法を使ったら、、、」
よく嘘が次から次へと出るものだと自分でもあきれる位だ…
けど、予防対策ごっこに辟易し続けた思いなんだよな…
「シンディー!まだ掃除終わっていないの💢」
突然の怒声に、空気が凍りつく…
シンディーと呼ばれた女の子が急に口を閉ざして、身を縮め震えだした…
あたしを、エプロンのポケットにそっとしまい込んだ
ドカドカと足音を鳴らしながら、部屋に複数の女達が入ってきた
「まったく、あんたって本当に役立たずのグズだね。
見た目も不細工で学もないし、タダ飯位の穀潰しなんだから、家族の為に身を粉にして、尽くして働きなさいよ!」
いきなり、いきなり…
何なんだ、こいつらは!
雇用主ではなく、親きょうだい=家族なのか?
家族なら、こんな酷い言葉を言っていいはずがない…
シンディーは俯きながら、すいませんと何度も頭を下げている
それでも女共から、罵詈雑言を浴びられ続けた…
一際意地の悪そうな女が、シンディーの髪を引っ張ったり、頭を叩き始めるのを見て、あたしの中で何かが爆発した!
「この、クズ共が!!!」
暴力を振るっている女に飛び掛り、足首に噛み付いた
「ギャー!!!」
という悲鳴が響き渡り、あたしの姿を見つけた女達が、、、
「「「魔女だ!!!」」」
と叫び出した
魔女?
あたしは、ただのネズミで、、、
半狂乱になった女達に追い回されながら、どうにか身を隠した…
はぁ、はぁ、ヤバかった💦
こんな小さな身体で、一撃でも食らったらお陀仏だ…
あたしを見失った女達が、部屋から出て行き、静かになった部屋でシンディーがすすり泣いていた…
「…ねえ、大丈夫?
あなた、シンディーっていうの?」
「ま、ま、魔女さん!
無事だったんですね!」
あたしを両手でギュッと包んだ
「…ちょ、ちょ、痛い痛い!
あたし今、ネズミだから!」
「あっ、ごめんなさい。」
力が緩んで、一息をつく
ふう〜
「ねえ、それよりさ、、、
さっきの女達って…」
あたしはシンディーから身の上を聞いた
やはり、、、
あの女達が、きょうだいや親、、、
シンディーの家族だった…
彼女の境遇は、童話のシンデレラにとても似ているし、名前もね
これが夢でないなら、あたしは憧れの異世界転生をしたのだろうか?
クソみたいな現実や、変えられない権力や支配の中で、、、
常人離れした能力を使い、悪政や悪党を倒して世直しをしたり、1人或いは複数の異性から、好意を寄せられ愛されるのが異世界転生の定番でしょ?
なのにネズミって…
まあ、ネズミも定番では、あるよね
主人公でなく、サブキャラやサポートキャラとしてベタな存在で、ベタな役割がある
あたしと話しができるのはシンディーだけでみたいで、あの女共にはネズミの鳴き声にしか聞こえていない様子だった、、、
シンディーの話しを聞き終えて、あたしは、引っ掛っていたことを訊いた
「ねえ、シンディー…
あの女共は、実の親きょうだいなんだよね?
言いづらい事だと思うけど…
どうして、あなただけが、酷い事を言われたり、酷い扱いを受けているの?」
「…それは、私が両親に似ていない顔立ちをしているから、、、
実の子では、ないと…」
遺伝的な事か、その通りなのかは分からないけど、、、
「…そう、だったのね。
これは、あたしが思う事なんだけどね。
本当の事がどっちだとしても、家族や親きょうだいって、血の繋がりが全てだとは、あたしは思わないの。
養子で育っても、出産時の取り違えで実の親に育てられなくても、愛情を注いで貰い、お互いに大切に尊重される関係を築けたら、家族や親きょうだいだと、あたしは思うの。
だから、あんな事をする人達に、、、」
「…どこにも、どこにも居場所も、行く所もないんですよ!
私なんかが、私なんかが…
生きているだけで、迷惑な存在なんです!」
突然、感情が爆発した事に驚いた
存在と自信を毎日毎日、否定され馬鹿にされ続けてきた事は、先程のやりとりから想像できる…
幸せそうな、よその家族や家庭を見る度に、羨ましく妬ましくなる…
貧富の差の比較でなく、どうして自分だけは、自分だけが、大切に尊重されないんだろうという、悲しさや寂しさや絶望感…
実の親きょうだいから被害を受けてるからこそ、他人に言えないし、言ってはいけない気がする…
恥ずかしいし、知られたくない…
自分が、自分だけが、家族の中で大切にされない存在と認める事が、とても怖いからだ…
「…あたしは、あたしは、シンディーと会ったばかりだけど、シンディーは優しくて、可愛いし、友だちになりたいと思うよ。
迷惑な存在だなんて、あたしは思わないよ。」
「…魔女さんは、優しいですね。
この家を出ようと考えた事も、ありました…
でも、孤児院に行っても、女の子は娼館に売られるという怖い噂も聞くし…
孤児として生きるのも、人様の物を盗み、大人や警察から隠れ怯えながら野宿しないといけない…
だから、だから、、、
私なんかが、居られる場所があるだけでも…」
かなり厳しい状況だな…
心も病んで折られている…
「でも、やっと幸せを掴める事が出来るんです!」
急に明るく笑顔になったシンディーに、あたしは面食らった
「えっ!?」
「今、国の王子様が一目惚れして見初めた、女の子を探しているんです。
その女の子が髪留めを落としたらしく、持ち主を探す為に、面接会場で王子様に面接をして貰えるそうなんです。
それが、それが、私だったら、、、
今夜、家をこっそり抜け出して、面接を受けに行こうと思っていたんです!」
ガラスの靴ではなくて、髪留めか、、、
童話なら、面接会場に行って王子に気付いて貰い、幸せになり、めでたしで終わりだけど…
王子と結婚出来たとしても、幸せにはなれない…
何十年も生きてきて、あたしはシンデレラの物語が欺瞞に満ちている事に、最近気付いてしまった…
むしろ酷い事や辛い目に遭う可能性が高い…
楽しそうに櫛で髪を梳かしているシンディーを横目に見ながら、、、
あたしは、どうやって面接会場に行くのを止める事が出来るか、必死に考え始めた…
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お読み頂いて、ありがとうございます。
不意に思い付いて考えた物語です。
続きも、早く書けそうかもです。
GWの暖かい日ですが、今日も、いい1日で、ありますように
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