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河童とお煎餅/私小説⑦-③歌(完結)/ストレスジャンププール

河童ちゃんに、、、

"人間界を捨てることに、後悔はない?"

と問われて、あたしは言葉に詰まった…

何もかも捨てて、投げ出して、逃げ出したい気持ちもあるけど…

自由と人権が制限された窮屈で息苦しい社会でも、、、


"楽しいこと・大切な人達・これからやりたいこと・会ってみたい人もいる…"

相反する、正反対の気持ちが膨らみ続けて、頭が痛い…

あたし、どうしたらいいのかな…

「ねえ、河童ちゃん、少し横になって休ませて貰ってもいい?

頭で考えても、どうしたらいいか、わからなくなってしまったの…」

「うん。いいよ。」

と、河童ちゃんは快く返事をしてくれた

河童ちゃんの布団で、再び横になった

どうしたらいいのかなと考えてたら、眠くなってきて…

~~~~~~~~~~

ふう~と、おいらは息を吐いた

人間は、おいらのフカフカ雲布団で寝始めた

けど、この世界から居なくなる気配はない…

一縷の望みと期待したけど、やっぱり…

だめだったか

人間界に帰りたくない気持ちが、強いんだろうな…

…よし

なんとかしようとするのは、あきらめよう

これまで出会った人間達は、自然に条件が揃って、帰ることが出来たけど、今回は難しいみたい

いつもや普段と違う状況だけど、いつもの生活や日常を過ごそうと決めた

お家の中を片付けたり、お掃除をしたり、お花を飾ったり…

寝ている人間を、起こさないように静かにね

いつもの、おいらに戻れて、気が付くと鼻歌を唄っていた

歌詞も歌手も知らないけど、なぜだかリズムは知っているんだ

~~~~~~~~~~

どこからか、聞こえてくる音楽

意識が戻り始めてきた

あたし、また寝ていたのか

目を開けると、河童ちゃんが、お花に水を上げながら、鼻歌を歌っていた

あれ?この曲って、もしかして…

リズムに歌詞を当て嵌めると、やっぱり!

ファンクラブにも入っていた、大好きな歌手の曲だ

有名曲や人気曲ではないけど、アルバムに収録されている曲で、ファンの間では人気がある曲だ

どうして、河童ちゃんは、この曲を知っているの?と、疑問が頭に過ぎった時…

河童ちゃんの、お布団が水に変わっていく!

「河童ちゃん!」

と助けを呼ぶと、お花に水を上げていた河童ちゃんは、水差しを落とし、目を大きく見開いている

~~~~~~~~~~

お花に水を上げていたら、人間に突然声をかけられ、とても驚いた💦

「あっ、起きたんだね。よく眠れたのかな?…」

と、声をかけると、プールが現れたことに、おいらは驚きを隠せなかった

条件をいつの間にか満たしことに…

「ねえ、河童ちゃん、お布団が水に変わって…

それに、河童ちゃん、なんで、その曲知っているの?」

「何でかは分からないけど、知ってるの。」

前半の質問は掟に関わるから、答えられないけど、歌のことなら話しても大丈夫

「人間の中でも、知っている人は限られているのに、どうして?

河童ちゃんって、本当は妖怪でなくて、人間なんじゃないの?」

「おいらは妖怪だよ。」

と答えつつ、際どい質問に冷や汗をかいた💦

「でも…

そう!

お布団が水に変わってしまって、どうしたらいいの?」

「大丈夫だよ。怖かったら、目を閉じていればいいから。」

「ねえ、どういうことなの?」

う〜ん困ったな…

いつもみたいにプールが広がらない💦

…ふう、仕方ないか

「元の世界に帰れるから、安心してね。」

「えっ!?だって、どうするかは、まだ決めてないよ…」

「突然のことで、おいらも驚くことばかりだったけど、一緒に過ごせて、とっても楽しかったよ。

ありがとう。

達者でね。」

と言い、河童ちゃんが笑顔で手を振っている

「えっ、ちょっと…

まっ…」

足元一面がプールの様に水で広がっていった!

あたしは怖くなって、思わず目を閉じた…

ざぶ〜んと水音がして、意識が遠退いていく…

~~~~~~~~~~

目が覚めると、あたしは駅のホームのベンチに座っていた

あれ!?

元の世界に戻ってきてしまったの?

せっかく、河童ちゃんと仲良くなれたのに…

はぁ…

と、ため息を付く

もう、河童ちゃんとは会えないのかと思うと、寂しくて涙が浮かぶ…

あの曲、なんで河童ちゃんが知っていたのか、教えて貰えなかったな…

そういえば、大好きだった歌手さんは、今は、どうしているかな?とHPを久しぶりに覗いてみた

転職や私生活での混乱で、ファンクラブの会員継続を出来ずに失効したままだった

去年は、Liveが中止に追い込まれ、今年こそは、なんとか開催されるみたいか…

けど、関所での検温・手のアルコール消毒・魔酢苦は常時着用だよね…

Live中は、声を出すのもだめなのかな…

学校と同じで、心の中で歌って、かもな…

2019年以前なら、Liveに行くだけで、元気や勇気を貰えていたけど…

今すぐには、決められないな…

だって一年中、自粛しろと強要され、不要不急の外出をするなと、防災放送で毎日繰り返し聞かされている…

五輪は、なぜか特別で…

県境すら跨ぐなと、私達には強要しても、海外からの入国を認めるんだよね…

飲食店さんに続き、今度はカラオケ屋さんが、休業に追い込まれている…

自由に歌を歌うことも、聞くことさえも叶ないか…

自由が、無いか…

あたしは、ふと河童ちゃんが鼻歌を歌っていたことを思い出した…

自由に歌えたり、過ごせる場所は限られているけど、全部が無くなったわけでは、無いんだよね

嫌なことや、苦しいことは多いけど、楽しいことが、完全に無くなったわけではない

今までにあった、楽しいことが無くなっても、あたしが楽しいことを作ることは、出来るのかな?

河童ちゃんみたいに…

ふう〜と息を吐き、立ち上がった

ひさしぶりに、あの曲を口ずさむ

歌詞は朧げだけど、ちゃんと覚えていた

また、聞いてみようかなと思う

あっ、部屋を片付けたり、お花を、ひさしぶりに買って帰ろうかな、、、

終わり
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お読み頂いて、ありがとうございます。

一旦、話しを終えることが出来ました。

未完のままで、終わってしまうかと思いしたが、読んで下さる方や、様々な助けを頂いて、おかげさまで形にすることが出来ました。

ありがとうございます。

完成に、強く影響を受けた動画についての記事です。

金木犀の香りがする日々ですが、今日もいい日でありますように

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