ゴリラの惑星とゴリラピクニック/私小説⑥-7帰還(完結)/ストレスジャンププール
おれとゴリラは、ひとけのない場所に辿り着いて、倒れ込んだ…
拡大防止対策車から、逃げ切れた安堵と、息が切れて苦しく、何も話せない…
しばらくすると、ゴリラが笑い出して、、、
泣きだした…
「やっと、、、
一矢を報いることが、できた…
10年間、理不尽と不条理に耐え続けた…
長丁場と長期戦は、覚悟したがな…
失った時間と、人生の機会の喪失が、大き過ぎる…」
おれは、何も言うことも、、、
かける言葉さえ見つからない…
10年間も、こんな生活や人生を耐えてきた人に…
……
「なあ、あの爆音と光はなんだったんだ?
それに、髪の色が急にピンクに変わっていたのは?」
「ああ、順を追って話そうか。
始まりは、ネットで話題になった動画だよ。
ピンクゴリラなんて、居やしないのに、自由や人権が制限され続けてな…
ある日、頭髪をピンクに変えたゴリラと、政治家や自称専門家に扮したゴリラを濃厚接触させて、不条理をやり返す動画が、共感や賛同を得て、1億再生を超えた(笑)」
おれは目を見開いて、驚く!
「ああ、オレ達が、さっき、やったことだよ。
"現代の、木枯らし紋次郎"
と言われ、悪党が退治される芝居を見るだけでも、胸がすいたよ。
しかし、一連の騒動で精神を病み、潔癖症と強迫性障害を患っている者と、優等生思考が強い者達から、、、
"怖い!"
"けしからん!"
と、猛反発が起き、動画も投稿者も、ネット世界から削除された…
ピンクの頭髪に染めることも、染める商品の製造・販売も、禁止された…
例のごとく…
"予防のため"
"拡大防止のため"
という、お決まりの口実でな…
これを機に、ピンクゴリラに濃厚接触をされた者は、ゴリラ収容所に、強制収容する法律も作られた…」
「そんなことが、、、
じゃあ、一体どうやって、、、
髪をピンクに、染めたのは…」
「10年間、桜の花びらを集めた。
ゴリラは、花見が禁止されてな…
人間は、魔酢苦もせずに、会話したり、バナナや酒も飲食できる自由が、あるのにな…
実際に作れたのは、派遣先で、元染物職人と仲良くなり、教えて貰ったのさ。
光と爆音は、元花火職人とも仲良くなり、趣味で作っている物を、分けて貰った。
花火はゴリラが、当たり前に楽しめるものでは、なくなってな…
作り手も、夏祭りの相次ぐ中止と自粛で、経営困難に陥ち入った…
今、残っているのは、統治者や人間相手に、商売できる者だけだ…
昔は、夏の風物詩と言われたがな…
今や、僅かに動画で残された映像を、見るだけになった…
統治者から、十分な補償を受けられなかったり、補償すら無い業種もある…
悪政と毎日の害悪放送で、売上と商売を妨害され、、、
"ゴリラが収まったら"
"ゴリラが終わったら"
と、自らの自由と行動に制限をかけ、自粛してしまうことで、地場産業や地域経済の支え手を、大量に喪失させられた…
その先は、赤字増大で、従業員の解雇と、廃業や倒産しか、道が残っていない…
"ご時世だの"
"ゴリラ禍だから"
でなく、構図が分かれば、人災によって、経済も文化も蹂躙され、破壊され続けたんだ…」
ああ…
なんて胸が詰まり、苦しくなる話しなんだ…
こういうことは、よく知っているし、いつも薄々、感じていることだ…
まるで、おれのいる世界の現在や未来のようだ…
「なあ、なんで皆、気付いたり、考えたりしないんだ?
本当の緊急事態や、異変や異常が、起きているのにさ…」
「心を守り、自分を保つためじゃないかな…
自分が不当な扱いや、ぞんざいに粗末に扱われても、、、
まず、相手の加害性を認められないと、客観的に認識できないし、したくないのさ…」
「どういうことだ…」
「バナナ食堂で、話したことの続きになるがな…
事実や現実を、正確に認識しない方が、マシだったり幸せだろう?
変えられない、抗えないと思っている現実に対して…
相手の加害性を、ようやく認められても、次は自分自身と向き合う必要になる…
これが、とても苦しくて、大変なことなんだ…」
おれは、話しの続きを、静かに待つ…
「加害を受けている相手や、事象が何であれ、自分を責めてしまい、非常に苦しくなるのさ…
信じた自分が、馬鹿で愚かだった…
・望んで付き合った相手(友人・恋人等)が、ヒドイ奴や最低な奴だった…
・いい会社だと信じて入ったが、ブラック企業だった…
・契約の嘘や不誠実さを見抜けず、金銭や所有物を奪われた…
・その時は、最善だと思い選んだ選択が、まさか間違いだったとは…
逆に、「***だから…」と、相手に甘え過ぎたり、軽く扱うことで、他人を傷つけたり、大切にしない側になることも、あるがな…
自分自身の弱さと無力さを、認めなきゃならん…
当事者になるとな…
容易でないし、並大抵のことじゃなくなるのさ…
時間もかかるし、認める認めないも、本人が選択することさ…
認めることができれば、自他共に、人間の弱さを認められ、寛容になれ、人としての器も大きくなれるがな…
オレは、できなくてもいい、認めることができなくてもいいと思うのさ…
そうしないと、心が壊れ、生きているのが辛く苦しいことも、経験してきたからな…」
そうなのか…
今のおれに、理解できる部分もあるが、よく分からない部分もある…
「後は、怒りや憎しみ、許せないことを、頭では手放せたらいいと理解はしても、心の底での納得や消化するのは、容易ではない…
まあ、政治や社会問題に、限らないけどな…
・家族・友人・恋人とケンカして、しまった時…
・仕事や対人関係で嫌なことが、あった時…
・なにか上手くいかない、いつも通りに進まないことが、あった時…
心がざわざわしたり、ムシャクシャしたり、いつもの平穏な自分では、いられないし、中々、元に戻れないだろう?
そんな時は、一息ついたり、一休みしたりして、自分を落ち着せるだろ?
人間だから、感情を強く揺さぶられる、出来事があると…
様々な、思いや感情や考えが出てくる…
そういう反応が起きる時に、オレは日常に戻れる様に、家事を、適度にすることがある。
部屋がきれいになったり、片付いたり、心地よくなる、おまけが付くしな。
それでも、反応は止められないし、色々と考えてしまうけどな…
後は、好きな映画を見たり、音楽を聞いたりして、幸せに楽しく過ごせる、選択をする。
突き詰めて考えても、答えが見つからなくて、気持ちの整理や解消が出来ない時は、気分転換できる行動が、できるといいかもな。
まあ、あまりに気持ちや心が乱れたり、荒れていると、ヤケ食いやヤケ酒を飲んでしまう、時もあるがな…
まあ人間だから、そういう時や、そういう日もあるさ。」
いい話を聞けて、よかったと思ったが、、、
ゴリラが人間と、自分のことを言っているのに、違和感を感じた…
「なあ、人間って…」
と、おれは言いかけ…
「よし!じゃあ乾杯しよう!
バナナ食堂を出る時に、店長の厚意で、持ち帰りできる様に、こっそり渡してもらったんだ。」
あれ?
なにを言っているんだ?
乾杯?
と、バナナを差し出され、乾杯!と言い、口にすると酒の味がした!
どういうことだ?
バナナだと思っていたのは、酒だったのか?
瞼が重くなる中で、ずっとゴリラに見えていたはずが、人間の姿に見えてきた…
足元がプールの水面に変わっていく…
しまった!
色々あり過ぎて、元の世界に戻れることを、失念していた!
ちゃんと、お礼も言っていなし、まだ話したいのに…
自由の効かなくなる身体で、 なんとか、、、
「ありがとう」と、口を動かそうとする…
すると、涙が止まらなくなり、溢れ出した…
ぼんやりする視界に映ったのは、笑顔で手を振ってくれる、人間が見えた…
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気が付いて目を覚ますと、おれは、駅のホームのベンチに座っていた
すぐに、バナナの自販機に、駆け寄るが、、、
"廃業のお知らせ"
が張り出されていて、取り出し口にあった、残りのバナナも無くなっていた…
もう、あちらの世界には行けないのか…
片道切符だったのか?
それにしても、すごい経験をして、いい話を、たくさん聞けたと思う
目を閉じて、自分に起きたことを噛みしめるように、思い返す…
それにしても、色々なことがあって、ひどく心身が疲れたな…
布団に入って寝たい…
あっ、その前に彼女に電話をしよう
今度、会う約束をしておきたい
信じて貰えるかは、分からないけど、聞いてほしい土産話が、あるからな
おれは、スマホの通話操作を始めた…
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完結です。
今作のみでも、他の話しや、全作、お読み頂いて、ありがとうございました☺︎
ようやく、話を完結できることができ、書き上げることができて、ホッとしています。
実は 、次の話と主人公の構想が浮かんでいて、終わらせたかったんです。
けど、完成させることを目的に急ぐと、小説を考えるのも、書くのも楽しくなくなる💦
本当の言葉を使うと、規制(検索や表示制限)がかるので、言葉や表現を変えました。
"ゴリラ"
は、都合よく使い回して、言葉に複数の意味合いを、持たせました。
設定や展開に、拙く荒い部分も有りますが、こだわると、作品を終わらすことが、難しくなると思い…
よかったら、ご感想などを寄せて頂けたら、幸いです。
今日も、いい日でありますように❇️