許し・時間と距離・人生経験/私小説⑧-2(完結)/ストレスジャンププール
河童が、お代わりのお茶を淹れてくれた🍵
話しながら、お煎餅も頂いて、美味しかったなあと思う🍘
あたしの話しに、口を挟まず、ただ静かに話しを聞いてくれた河童は、奇特だなと思う
「うん。そうだったんだね。
じゃあ、その人間とは、もう友人でいたくないの?」
「…もう、無理かな。
あんな風に変わってしまって、もう会いたいとも思えないよ…
楽しかったことや、いい思い出もあるんだけどね…」
目に涙が浮かんでくる
あたし、悲しかったのかな…
こんな形で友人でいられなくなり、友人を失う事が寂しいなのかな…
「そっか。そうなんだね。
おいらがね、色んな人間の話しを聞いてきたなかでの話だけどね。
今は相手の事を許せなくても、時が経つ事で相手への見方が変わったり気付く事があったり、相手自身の変化で、仲直りや和解する事もあるみたいだよ。
今は、もう二度会いたくないとか、仲直りしたくないとか、相手が謝ったりしない限り許せないとか、そう思っているなら、それでいいと思うの。」
「それって、今は難しくても、いつかはかって話しだよね…
今のあたしには、心底そんな風に考えられないし、到底できるとも思えないな…」
「うん。今、そう思うなら、それでいいんじゃないかな。
なんかね、どうして相手への気持ちが変わったり、許せたのって聞いても、説明出来ないみたい。
時間や距離を置く事だったり、人生経験を積み重ねる事で、なんか上手く言えないけど、そうなったらしいよ。」
「へぇ…
そうなんだ…」
心底嫌になってしまい、毛嫌いして憎んでいる相手を、許せる日なんてくるのかな?
小さい子ども達を見ていると、ケンカをしても「ごめんなさい」をしたら相手を許して、再び遊んだりしている
けど、年を重ねるほど、許せない事や許せない人が増えていくばかりだ…
あぁ、なんか疲れが出てきたのか、眠くなってきたな…
座っている姿勢も、ままならくなり食堂のテーブルに突っ伏した
河童が毛布でなく、半纏をあたしの背中に掛けてくれた
優しいなあと思いながら、意識が遠退いていく中、足元に水面が広がっていった
~~~~~~~~~~
指先や足先が冷たいと感じ、目を覚ますと、駅のホームのベンチに座っていた
足元には、あたしのスマホが落ちていた
拾い上げると送信を選択するか画面のままだった
あれ?!
さっきまで不思議な河童と、食堂に居たはずが…
夢だったのかな?
けど、肩や背中は半纏の温もりが、僅かに残っている気もする…
一体なんだったのだろうか?
ふう〜
スマホの文面を、読み返してみる
"もう、会うのやめよう
今まで、ありがとう
さようなら…"
これを送れば、あたしから絶交や絶縁を伝える事だ…
…う〜ん
あの不思議な夢を見ていなかったら、送信を押していただろうけど…
とりあえず、今は送信するのを止めた
過去に似たような、近い事があったから、あたしは絶縁するのがいいと思ったのだろうか…
まあ、お互いに連絡を取らなければ関係は、自然消滅するだけだしね
友だ…
あの人が、あたしの反応や行動を見て、なにか思ったり心境の変化が起きるかもしれないし、起きないのかもしれないけど…
とりあえず今日は、この事を考えるのは、もう止めにしょう
メールを下書き保存した
電車の到着を知らせる放送が聞こえて、腰を上げた
ふう〜
帰ったら、美味しい料理を作ろうかな、、、
大好きな曲を聞いたり、元気が出たり笑える動画でも見ようかな、、、
おわり
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最後まで、お読み頂いて、ありがとうございます
昨年から続きを書けなかった小説が、ようやく完結できました
当初考えた結末は、メールの内容に「もう会わないけど元気でね」とか、相手の幸せを願う内容を付け加える事でした
それでも、なんだかなという感じで、もやもやして続きが書けなかったです…
前半の①では、「食と命」の私見を主題にして、後半の②では、変わってしまった相手と許しが主題でした
①の主題を私達が直面している事にしようかと考えましたが、全ての人が当事者になっている事象で、今は扱うのが重く難しく、丁寧に時間が要するので避けました
2020年からの悪政禍から、価値観の違い・信じたり正しいと思う事の違いが、より明確になったと思います
私自身、たくさんの間違いや失敗を重ねた中で思うのは、自分にとっても相手にとっても今、とても大切だったり・信じていたり・正しいと思う事を、相互に尊重する事だと痛感しました…
内心、肯定や共感できなくても、相手を否定したり・馬鹿にせずに「あなたは、今そう思うのね、そう考えているのね」と受け取る事です
相手の為になるからと思い、相手を変えようとかせずに、今はそれでいいんだと、、、
お薦めのつもりでも、嫌がっているのにしつこくすれば、強要や圧力になりますよね?
今日も、いい一日でありますように