ゴリラの惑星とゴリラピクニック/私小説⑥-6公僕/ストレスジャンププール
バナナ食堂の外、喫煙場所で、ゴリラから火の付いた煙草を、差し出された
「おれは、煙草は…」
「いいから、受け取れ。
時間がないから、手短に言う。
見廻り隊の悪党を相手に、よく渡り合っていた。
おまえさんは、すごい人間だな。
あの悪党はな、些細な落ち度や不備を見つけては、法令の拡大解釈をして、皆を苦しめ追い詰める、最低のクズだ…
これから起こることに、なんとか、対応してほしい。
打ち合わせをする暇もないが、人間のおまえさんでないと、ダメなんだ。
おまえさんなら、できると信じている。
頼むぞ!」
そう言うと、ゴリラは、おれに背を向けて、ゴソゴソと動き出した…
すると、、、
爆音と眩しい光が辺りを包み、目が眩んだ…
ようやく目が開けられると、ゴリラの頭髪がピンク色に変わり、奇妙な覆面を被っていた!
悪党を背後から、羽交い締めにしている
「なんだ、クッソ、離れろ!
ゴリラが、人間様に何をしている!」
悪党が、もがきながら、ゴリラに怒声を、飛ばしている!
「女性の役人さん、頼む!
音声無しで、動画を配信してくれないか?
オレは、この人間を助けたいし、この悪党を退治するには、あなたの力が必要だ!」
ゴリラが必死に叫び、女の役人は、少し考え込んだが…
「…わかりました…」
と言い、スマホを取り出して、操作を始めた…
「オイ!
ゴリラの言うことなんか、聞く馬鹿がいるか!
俺様を、今すぐ助けろ!」
「ふふふ、悪党を退治できる日が来るとは、この10年間、思わなかったぞ。
ピンクゴリラに、1.5メートル以内で、密着・密接されたら、濃厚接触の確定だな(笑)
人間は、魔酢苦をしなくていいが、オレ達ゴリラには…
"魔酢苦をしないでの会話は、5分で咳1回と同じ"
なんて、、、
意味不明の理屈を、よくも押し付けたな!
会話をするのと、咳をするのが、一緒なわけないだろうが!
アホか!
常に、魔酢苦を着用しろと、よくも強要し続けたな!
皆が、暑さと息苦しさに、どれほど、苦しめられたか!
多くの人が健康を害し、どれだけの人が、熱中症で倒れたか!
貴様らが、毎日毎日、強要してきたことは、ただの拷問と虐待だ!」
すごい怨嗟を感じた…
10年間も、こんな自由も人権もない、生きずらい世界で…
差別を受けながら、耐えてきたのか…
「ふん、俺が決めたことじゃないし、上が腐っているから、業務命令に従っただけだ。
すぐに、拡大防止対策車が到着する。
ゴリラピクニック専用レーンを通ってな(笑)
人間様に、こんなことをして、お前も収容所行き決定だ(笑)」
このままだと、マズイんじゃないのか?
それに、おれだけが助かっても、ダメだ…
危ない橋を渡ってくれている2人を、なんとか助けられないのか…
濃厚接触の事実…
具体的症状…
音声無しで、動画を配信中…
…閃いた!
おれは駆け出して、叫ぶ!
「ゴリラ!倒れる振りをしてくれ!」
おれは、役人を助ける振りをして、ゴリラを蹴り飛ばす様に動いた
実際には、役人の急所を、思い切り蹴り上げた!
激痛で、悪党は地面を、のたうち回っている
よし、これで濃厚接触の症状が作れた(笑)
「お前が長年、たくさんのゴリラを苦しめた、恨みと悲しみだ。」
女の役人に向かって、おれは声をかける
「役人さん、おれは、この後、ゴリラを追いかけて消える。
この先は、あなたに全てを任せることに、なってしまうが大丈夫か?」
「ええ、動画の事実と症状が揃ったので、法令の要件を満たして貰えました。
拡大防止対策車に連行されるのは、このクソ上司です。
日常的なパワハラやセクハラに、不正の協力をさせられて、ずっと嫌だったんです…
人事異動の際も、悪い噂は聞いていて、転属は断っていたのですが、人手不足を理由に…
休職に追い込まれた子や、今だに復職ができずにいる子、連絡が取れなくなった子もいます…
内部告発も試みしたが、圧力で揉み消されてしまい…
信頼できる社労士さんの助言で、証拠を集め残して、、、
告発する機会を…
…ずっと、待っていたんです(涙)
飲食店さんに、金品の要求をしたり、応じない店には、放送局と同じ様に、都合のいい部分を切り抜いたり、加工して動画を上げていました。
飲食店さんを、一方的に悪者に仕立て、誹謗中傷をして、お店の場所を晒し上げて、広告収入を懐に納めていました…」
ここまでの、悪党やクズがいるのか…
すると、地獄の底からの呻き声がする…
「ぐ ぐ ぐ… お お おれに こ こ ん な こ と を… た た で は す まさ…」
「収容所行には、お前が行くことになったな(笑)
実在しない、ピンクゴリラに濃厚接触されて、症状が出た。
これから、不要不急の検査と治療が待っているぞ。
一つだけ助かる道が、あるが…」
「ぐ ぐ ぐ そ… な な に …」
「この国の統治者が、最低最悪なのは、皆わかっているさ。
役人の中でも、精一杯の抵抗をしたり、法令が厳格に運用されないように、本当の公僕として、抗っている人もいる。
だが、あんたは統治者と同じか、それ以上の悪行を働いたよな?
あんたに、追い詰められて、苦渋の決断で従業員を解雇したり、廃業に追い込まれ、住居を失ったり、家族と離散したり、絶望で命を絶った人もいる…
あんたが、働いた悪事を認め謝罪し、統治者の悪事を内部告発することが、唯一の助かる道だ。
どうするかは、拡大防止対策車の中で、考えるんだな。」
悪党は、沈黙している…
「あ、拡大防止対策車が見えました!」
と役人の女が、叫んだ
「全て任せて悪いが、後は頼んだ。」
と、おれは言い残して、逃走するゴリラを、追い掛ける振りをして、この場から離れた…
2人で、どれくらい走っただろうか?
ようやく、ひとけの無い場所に着いた
次回、最終回?
---------
お読み頂いて、ありがとうございます。
肩書きや権威で、他人を判断したり、勝手な期待をしてませんか?
昨年は、給付金10万円の支給対応…
今年は、予防薬を巡る対応で、上から目線で、役所や公務員を叩く輩がいますが、冷静に考えてみてください
通常業務がある中で、計画や準備期間がなく、緊急で決定された事に対応するのは、、、
会社員の方なら、想像に難くないでしょう…
対応が後手後手に回ったり、不備や不足が起きるのは当然で、仕方のないことです
「***だから」やって当然、出来て当たり前というのは、想像力が欠けていると私は思います
役職や立場があっても、同じ人間だし、非難されているのが、大切な家族や友人だったら、どう思いますか?
私達は、他者への思いやりを、失っているのでしょうか?
それは、毎日、閉ざされた情報と、特定の偏った考えを繰り返し、見聞きさせられ続けているからでは、ないでしょうか?
考え方や視野が狭められ、権力や権威に従順に従うのが、模範的で正しく善良な人間…
異を唱える人や、安心・安全に物が言える人には、急に態度が大きくなり、情け容赦のない、誹謗中傷や攻撃をする…