ゲームプレイレポート②ピクミンシリーズは何を目的としているのか
※この記事はただの自主研究のためのレポートでありnoteが使いやすいのでついでに投稿しているだけです。あくまで個人の意見ですので鵜吞みにしないでください。
※当然ながらネタバレあり。
どういうゲーム?
「ピクミン1HD」(移植版)
(以下初代)
発売日:2001年10月26日
対応プラットフォーム:NintendoSwitch(無印はゲームキューブ)
ジャンル:AIアクション
私の総プレイ時間:約7時間
「ピクミン2HD」(移植版)
(以下2)
発売日:2004年4月29日
対応プラットフォーム:NintendoSwitch(無印はゲームキューブ)
ジャンル:AIアクション
私の総プレイ時間:約12時間
(虫の王回収済みだがオタカラ回収は終わっていないため未クリア。)
「ピクミン3 デラックス」(ピクミン3に追加コンテンツを入れた移植版)
(以下3)
発売日:2020年10月30日(無印は2013年7月13日発売)
対応プラットフォーム:NintendoSwitch(無印はWiiU)
ジャンル:AIアクション
私の総プレイ時間:約10時間
「ピクミン4」
(以下4)
発売日:2023年7月21日
対応プラットフォーム:NintendoSwitch
ジャンル:AIアクション
私の総プレイ時間:約40時間(現在2週目、クリアまでは約30時間)
ピクミンシリーズとは第一作目がゲームキューブで発売され2023年に最新作であるピクミン4が発売されている任天堂のAIアクションゲームである。
ピクミンという謎の生命体を投げたり指示して様々なものをこなす。ピクミンはジャンルの通りAIで搭載された行動を行うので、いくら特定の場所に向かって投げる、といった敵と戦う場面があってもFPSなどとはわけが違うのだ。
というか正直AIアクションゲームって何?という話である。
おそらくピクミン以外でこのジャンルを聞くことはないだろう。私は聞いたことがないし、ネットで検索してもピクミンしか出てこない。
説明してくれと言われるとかなり難しいうえに正解がわからないが、特定の行動ができるAIに指示をし、バトルやフィールド探索などのアクションを行うのでAIアクションなのではないだろうか?これについては本当に正解がわからないし、今回の研究内容はそこではないのでゲームジャンルについては省略する。とにかく笛を吹いたり投げるとピクミンが色々してくれるのだ。
楽しいところ
ピクミン
初代は時間制限内に「ダンドリ」よく指示をしクリアすることが楽しい。より短時間でのクリアや無犠牲クリアを目指したりと個々で目標を設けて何度も遊べる楽しさがある。時間制限の必要性は「ダンドリ」を促すためにある。また、時間内にクリアできると気持ちがいい。
個人的な意見ではあるがピクミンが過去一いうことを聞かない上に何かをするたびに騒いでいてかわいい。いうことを聞かないのはデメリットではあるが。
ピクミン2
2は2人のキャラクターを操作できるため、分担作業ができる楽しさがある。2人であることを利用した敵ギミックもあり、しっかりと二人いることを活かせている。また、本作の目的であるオタカラ集めもかなりのボリュームがあり、200を超えるオタカラを集めるのがクリア条件。集めたオタカラに対する図鑑の文章もかなり面白く、コレクションするのが好きな人はかなり楽しい要素になっている。日本人はこういったものが好きな人が多いだろう。
前述したとおり、2は初代からの難易度を大幅に下げるためか紫ピクミンやゲキカラ・ゲキニガスプレーといった戦闘で役に立つアイテムが追加されている。それらをつかって敵を完封できると気持ちがいい。
地下洞窟も特徴的で楽しい要素の一つだ。マップがランダム生成なことにより、たとえ同じ洞窟に再度入ったとしても毎回違ったマップを楽しめる。他の人はどうだったのかというのが気になって話の話題になるし、配信映えもする。今の時代でも十分通用する面白さがあるだろう。
先述したとおり洞窟内は時間の流れが一切進まず、何時間かけても良い。時間を気にせずゆっくりやれるのはゲームに集中できるいい施工だろう。
ピクミン3
3は初代のような時間制限が復活する。しかし本編をきちんと進めていけば実質無制限であり、初代ほど重くは感じない初心者にはほど良い障害だと感じている。個人的にはもう少し切羽詰まる時間制限でもよかったのではないかと思うが、新規プレイヤーを増やすという目標があったと思われる3では妥当な制限なのだろうとは思う。3の楽しいところといえば岩ピクミンで無双することだろうか。ただ投げるだけで敵のHPが減っていくのが気持ちがいいが、属性に耐性はないのでタイミングを見て笛で呼び戻さなくてはならない。初心者でもコツをつかめば楽しい戦闘ができる要素だとは思う。
正直3はボリュームも少なくこれといって楽しい要素がない。これについては後述する。
ピクミン4
新キャラクターオッチンの登場により難易度がぐっと下がっている。ゲーム全体の難易度は簡単というわけではないのだが、オッチンのおかげでストレスなくクリアすることできる。
オッチンで突撃するのがかなり楽しい。まるで轢き逃げのごとくトッシンで雑魚敵を倒していくのはかなり気持ちが良かった。オッチンは遭難者の救助で強化できるため、遭難者救助をうまく促せていることも良い。
夜の探索が新しく追加され、これがかなり面白い。拠点に向かって襲ってくる敵から時間内に拠点を守り切る、という一種のタワーディフェンスのようなものが楽しめる新モードであり、難しいものも用意してあるためっかなりやりごたえがある。クリアできなくてもスキップできるのでそこもストレスなくできるのが良い点だ。
楽しくないところ
ピクミン
初代はとにかく難易度が高い。時間制限もそうだが、肝心のピクミンがなかなかいうことを聞いてくれない。笛を何度も吹かないと戻ってこなかったり、上手くついてこれなかったり歩いていると勝手に草むしりを始めるし、他のピクミンが運んでいるパーツなどとすれ違うと勝手に加勢したりする。そして敵が強い。しかも理不尽な行動・攻撃をしてくる敵が多いうえにHPが高く、いちいち敵を倒していると時間が迫ってくる。やりごたえのあるゲームではあるが、テンポのいいゲームとはとても言えない。若干の謎解きのようなギミックもあるが、初代ということもありカーソルなどの操作性が悪いことも幸いして細かい作業が苦手な人は楽しくプレイできないだろう。
ピクミン2
2の楽しくないところは相変わらず理不尽な敵が多いことだ。敵のHPなどは改善されたように思えるが、代わりに殺意が増幅された。とにかく火力の強い敵が多すぎる。それに加えて地下洞窟ランダム生成マップもあわさることで配置によっては地獄が誕生する。階層ごとにセーブされるのでリセマラすれば配置はシャッフルされるが、個人的にはこれのせいで初代よりも2のほうが難易度が高いのではないかと思っている。あとアメボウズは言わなくてもわかるよね。
また本作は地下洞窟がメインなせいか、地上フィールドの探索が少ない。できるだけ洞窟に行くのを促すための仕様ではあると思うが、前述のせいで洞窟が嫌いになってしまうと楽しむ要素がかなり少ない。
これは言い過ぎだとは思うが、オタカラを集めるという目的が作業ゲーになっていると感じる。最初のうちは借金返済という目に見えたものがあるが、借金返済を完了してのぞみの大地に入ってしまうとそれがなくなる。もはやただ難しいダンジョンを攻略して図鑑を埋めるだけである。難しいものを攻略するのが好きな人にとっては実にやりがいのあるステージではあるが、ピクミンを上手く操作できない人は普通に頓挫してクリアできないだろう。実際私はそういった理由でオタカラ全回収が済んでおらずクリアはできていない。
ピクミン3
3はつまらないわけではないが、これと言って楽しいところがない。
操作キャラクターを投げることができるシステムは新しいギミックの開拓になり面白かったが、逆にそれが戦闘中邪魔になることが多かった。ピクミンを投げたいのに操作キャラクターを投げてしまうことが多く、ボス戦は操作キャラをよそに投げて1人でやっていた。加えて操作キャラ3人になったことも操作をややこしくさせたように思える。
本作は状況に応じてそれぞれのキャラクターがしゃべる。例えば果実を見つけた時だとか、ボスの攻撃が来そうな時だとか、操作をしていないキャラクターが攻撃を受けた時など様々なシーンでの反応が用意されている。おそらく初心者でもプレイしやすいようにヒント的な立ち位置で用意されているのだと思う。しかしこれがまあうるさい。3人いるとはいえ、それぞれでとくにレパートリーがあるわけでもないので、ボスの攻撃が来るたびに同じセリフを聞く羽目になる。人にもよるだろうがこれは正直イライラした。オンオフ機能があればよかったのでは、と思う。この機能が続編の4にも引き継がれていたのは驚いた。4でもうるさいのは変わらなかった
ピクミン4
とにかく簡単すぎるように思う。オッチンであっさりクリアできてしまうのは良い点ではあるが悪い点でもある。やりごたえがなくなり、ラストダンジョンですらほぼすべてただオッチンで突撃して倒すという作業ゲーになってしまっている感じがあった。もちろん使わなければいい話なので難易度の高いものを求める人は個々で縛りを設定するなどすればいいが、自分で難易度を上げなければ作業ゲーになってしまうのは良い点とは言えないだろう。
それと、3と同じくキャラクターがうるさい。ピクミンが死ぬたびにいちいち感嘆詩を述べてくるうえに攻撃が来るたびにセリフが入る。そんなの言われなくてもわかってるんだよ、という気持ちが湧いてしまいイライラするのでこれもオンオフ機能があればよかったのではないかと思う。ボスの攻撃予兆ぐらいはオンオフあってもいいのでは…?自分で倒し方の解法を見つけるのもピクミンの面白さであると思うので、セリフで攻撃や撃破方法を匂わせてくるのはどうもモヤモヤする。私だって言われなくてもわかるのに、と思ってしまう。
ゲームの目的を変えること
変わっていくゲームの目的
当シリーズは初代とそれ以降目的とするものが大きく変わっているように思える。シリーズ通して段取り立てて行う、つまり「ダンドリ」というものを指針にしているのは変わらないが、その「ダンドリ」が及ぶ範囲が違うのである。
初代は30日以内に15個以上の宇宙船パーツを集め未知の惑星から脱出する、という時間制限のあるものに対して、2では何日以内などといった時間制限はなくなり、とにかくオタカラを集めて売って合計金額10000にしようというのが目的である。2は10000という目標があるものの、結局はオタカラをすべて集めるのが目的であり、時間制限もないため「ダンドリ」を感じる部分は少ない。ただ日数を進めて行うゲームシステム上一日にできる行動は限られるため、一日のうちにピクミンをはぐれさせず自分がやりたいことを終わらすという点は「ダンドリ」よく行うのが重要だ。しかしながら日数制限がないため一日に一個もオタカラを見つけることができなかろうと特に構わないのである。しかも実質的なダンジョンである地下洞窟は時間が進まない。
この代のシステムから、ピクミンというゲームの目的は変わっていったように思える。
初代ははっきり言ってかなり難しい。歴代でもトップレベルの敵の強さであり、切り札になるような強いピクミンもおらず、30日以内という時間制限がある。この30日以内という時間制限はプレイヤーに「ダンドリ」を促し最短クリアを目指してもらうための障害となっているが人によってはただの高難易度要素でしかないのである。
初代が発売された当時、ピクミンはTVCMで流した愛のうたが社会人が共感できると注目を集め、CDは爆発的な人気になったという。ではゲームも一緒に売れたのかというとそうでもなかった。近年に同じプロデューサーが関わって発売された「ゼルダの伝説風のタクト」とは20万本以上の差が出たまま売上が伸びることはなかったという。もちろんゼルダシリーズとはゲーム性が全く異なるものであるため比べるのは野暮ではあるが、曲が話題になったにも関わらず売り上げが伸びなかったのは初代の難しさにあったのだろう(あとなんだかよくわからないゲームだというのもあるとは思う)。
そこでおそらく製作者は難易度を下げもっといろんな人に触れてもらおうと2では時間制限のないシステムにしたのだと思われる。
これによって初心者は格段にプレイしやすくなり、実際私も初めてのピクミンは2であり特に時間制限を気にすることはなく緩くプレイ出来た。初代の少し不気味な雰囲気は多少抜けており、登場人物も増えたことで少し明るいゲームに近づいていく。
しかし、2も売り上げは伸びずそのまま3まで時間が空くことになる。
9年の時を経て3が発売されたものの、こちらも売り上げが伸び悩むことになる(2も3も発売ハードが低迷していた時期だというのも関連していると思われるが)。
前置きが長くなったが、2も3も上記の理由で賛否両論の作品であることは確かで、それは確実にゲームの目的が変わっているからだろう。
ゲームの操作性を変えること
実は、というか、ピクミンシリーズは3以前、3以降で操作性がかなり変わっている。初代、2はタイレツ笛というものをコントローラー操作で駆使しピクミンたちの隊列をパフォーマンスの集団行動のごとく動かして敵やオタカラに突撃させることができた。投げることよりもこの操作が重要で、これをいかにうまく使いこなすかでも難易度が変わっていたと思う。例えば、有名な水中の城のアメボウズは、場所によってはタイレツ操作でピクミンたちを一列に壁にピタッと貼り付けることで回避できたりするのがいい例だ。
対して3からはトツゲキという機能が実装され、ボタン一つで単色のピクミン全員を対象に突撃させることができ、タイレツ笛は廃止された(4であるにはあるがお遊び要素でしかない)。この機能はタイレツ笛に代わるものではあるが、あのコントローラーを操作して隊を動かすテクニックが失われてしまったのはなんとも残念だと思う。今はもはやXボタンを押すだけの作業ゲーに近づいているのではなかろうか。初心者に優しくした結果作業ゲーになってしまうのはよくないはずだ。せめてタイレツ笛は廃止ではなく選択制にしてほしかった。
このシリーズ作品から学べること
初代は時間内にパーツを集めること。2以降は時間制限なくゆったりとオタカラを集めて図鑑を埋めて楽しむ。ゲームの目的を変えて難易度を下げ、初心者も安心して楽しめる要素を追加する。4ではかなりダンドリを~とゲーム内で言われるが、時間制限なども特にないため言われてるだけで初代のように促すことはあまりうまくいかないのではと思う。果たしてこれはプロデューサーが目指したものなのだろうかとふと思ってしまう。
近年はいかにゲーム人口を増やすかが重点となっており、IP拡大に成功したピクミンでゲーム人口を増やすためには4が最適解だったのかもしれない。しかしそれは本来ピクミンシリーズがやりたかったものなのだろうか。結果としてピクミン4は過去作とは比べ物にならないほどの大ヒットを記録したが、初代のような雰囲気を求めるものにとって4ほど嫌悪する作品はないだろう(もちろん個々で縛りプレイをすればいいだけではあるが)。
ゲーム人口・プレイヤー人口の拡大をとるか、ファンからの賛否を案じた作品を作るか、これはかなり重要視すべき要点であり慎重な判断が必要な点だろう。しっかりと頭の隅においておきたい。
余談
ピクミン4は過去作のオマージュが満載でボリュームもあり、モデルも綺麗で私はかなり気に入っている。しかし初代のようなダンドリを求めるゲーム性のほうが好みであるため、次回作は4のUIやらをそのままに時間制限のある作品を期待している。