蒸気自動車 リメイク 記録 その2
やたら長くなってきたので日誌部分をこっちに移しますね。
20190521
見切り発車で第2作と同じ紙を作り、いきなり本折りを始める
20190529
車輪に型紙を入れたり補強したりは終わり。さあ、座席部分だ、というところで方策をなくして詰む。雑な糊付けでお茶を濁しているうちに糊の水気で作品の正中線にあたる部分の紙が破れる。モチベが一気に崩壊。
20200404
Twitterのアンケートやマシュマロを通して、しつこくリメイクの再始動を求める声が飛んでくる
20200406
部分試作 本作の最も重要な「ホイール」をもう一度折ってみる。仕上げの基準点、「厚み」の調節、余分な領域をどこに自然に隠せるか、何通りかの実験をした
20200407
部分試作 「蒸気機関」部分について、従前は「22.5度設計」であったものを「蛇腹」構造に自然に変換する方法を模索する。幸い、目標とする「四角い」蒸気機関は蛇腹では表現しやすく、いわゆる「神谷パターン」や「幅変換」といった蛇腹特有の技法を持ち出しさえすれば、むしろ前作よりも表現の自由が利きそうである。しかしながら、あんなに嫌気していた蛇腹の技術をふんだんに仕込んでいる自分を傍観してみると吐き気を催す。
20200408
部分試作 といっても全体の1/4を折り始めている。前作の展開図を見たことがある読者なら何を言っているかわかるかと思う。焦点は「ホイール」の上にかぶさるように伸びる「泥除け」、そして「前部座席」である。前作の泥除けは「22.5度まるだし」の見た目をしていたが、今回は「蛇腹丸出し」の見た目になりそうだ。「前部座席」についてはもう少し時間をかけて仕上げを考えた方がよさそうだ。構造を見直したことにより、蛇腹グリッドを取り扱うだけで仕上げを決めることができるようになったという意味で、デザインがしやすくなった一方、もともと過剰気味だった領域が自由度を持ち始めたことで、デザインの収集がつかないことになり始めている。「後部座席」のデザインも別に用意する必要がある。先はまだまだ長い。
20200409
今日は少し疲れたので紙はさわらない。思考実験をする。「前座席」かま効率的に造れそうなので、「後座席」に用意していた領域(形、大きさ共に前部と全く同じ)がかなり余ってしまう気がする。なにか新しい造形を埋め込もうかとひとつ思い立ったのが、「縦列駐車用の補助輪」(なんか後ろに一個ついてるやつ)。いけるかな
20200413
「車輪の厚さ(内側と外側)」、「車軸の長さ」、「車の幅」に制約条件があるようだ。変数は4つ。ちょうどいいバランスを探す必要があることが分かった。eは3以上は欲しいところ。c+dは1くらいで、二つは同じくらいがいいな。aは0でも形にはなるけど批判される気がする!
20200414
c = d, e = 3+αくらいで落ち着けた。めちゃくちゃ変な基準点になっちゃった。1/4部分試作にこれを適用、鏡にくっつけて大体どんなプロポーションになるか確認する。すげえホイールベースが短い!ホイール領域の使用効率が上がったことで車体に対して車輪がずどんとでかくなっちゃった。この際なのでちょうどいいからグリッドを64等分に増やして4をホイールベースにくれてやることにする。蛇腹増えちまったよ…やだよぅ…
20200416
いや4は長すぎた。前輪か後輪の構造を紙の中央に少しだけ寄せれば解決するはずで、たぶん後輪を動かして、その分、「後部座席」に領域をまわせる。でも構造の対称性が崩れるのがなんとなくいや。
20200418
「第2作」のチャームポイントのひとつでもあった「ヘッドライト」の構造が少し変わってしまったので、ちゃんと同じような仕上げができるかどうかを調べ上げる。試作用のホイル紙は何度も破れ、破れたところはSCOTCHの「超透明テープ」で補強している。ホイル紙を折っているはずなのにすごく分厚いし、張力がすごくて、折っても折ってもびょーんてひろがっちゃう。結果的に前作よりも少し大仰な領域の使い方になったような気がする。
金曜日だからすこしずるして夜中までZOOM飲みしながらもう少し進めちゃう。「前座席」部分は(前作もそうだったけど)なんか知らんが自然に「腰かけの段差」が出来上がって、「ホイールの面から少しオフセット(浮き上がった)」した造形が出来上がる。いい感じじゃん。「前作」であとやっていたのは「ハンドル」と「サイドブレーキ」だけど、これはやる意味あるかなあ…領域はやっぱり余ってるからそれっぽいの作るんだろうけど…
朝ちゃんと起きたので一旦「前輪」部分の試作はここまでにして、もう1/4である、「後輪」部分の試作を始めるのでもう一回32等分。また車輪を折らなきゃだけど、綺麗に作るためのコツが欲しい(試作とはいえ、なかなか綺麗に折れない)。何か考えないと。
16日の実験結果によって少し「後部座席」の領域があまったので、「縦列駐車用の補助輪」を作ってみる。想像以上に領域が足りないのでこれはやめておこうね。
20200422
前輪、後輪、「座席」以外が煮詰まってきた&試作ホイル紙が穴だらけになってきたので一旦展開図に起こす。展開図を描くには「ORIPA」を愛用している。
と、突然ORIPAが「折り畳み可能判定」をしなくなる。山折り線の数と谷折り線の数、それらの交差する角度が、「(局所)平坦折り」を満たすかどうかを自動判定してくれる素晴らしい機能なのだが。実はこれは、これまでも何度となく出会ってきた事象である。しかし今回ばかりはこのままでは見過ごせない。アプリだけを使っていると何が原因で発生しているのか分らんので、前職で身に着けたプログラミング(デバッグ)の力を持ち出すことにする。ORIPAの「ソースコード」は「github」というサイトで公開されている。
これをダウンロードし、「Eclipse」というJavaの開発用ソフトウェアの中で展開することで、「デバッグ」(コンピュータの計算過程を一つ一つ追いかけること)ができる。なるほど、こっちだとコンソール(コンピュータからのメッセージ)にただ「ERROR」と出力されているだけだ。ソースコードはすべてテキストデータなので、「ERROR」と直に書いている(エンジニア的にはこういうことやっちゃいけないんだけどね)部分を検索し、問題が起こっているファイルとその行数まで特定できた。
あとはそこで待ち構えて、描いた展開図を読み込ませる。やはりここで問題が起こっている。ある頂点から線分を反時計回りに周回し、もとの頂点に戻ってくるまで処理を無限に続ける、という部分だ。無限に「続きそうになった」時にERRORと書き出すようになっているようだ。
となればERRORと吐いた時のその頂点のx-y座標が気になる。デバッグではこういった情報も手に入れることができる。ORIPAの上では、一見、何の問題もない頂点に見えた。しかし、この頂点に接続する線分を試しに消してみたらどうだろう。「何の線分にも接続していない頂点」だけが残った。こいつは「Delete Vertex」や「Delete Line」といったORIPAの機能で消すことはできないようだ。そうなれば最終手段、.opx(展開図のファイル、やはりテキストデータ)を直接修正しちゃおう。
.opxファイルをテキストエディタで開き、先ほど取得した座標の文字列を検索する。と、やはりいた。「始点も終点も同じ座標を示す線分」が。
steam_automobile.opxの中身。
......
<void index="1728">
<object class="oripa.OriLineProxy">
<void property="type">
<int>3</int>
</void>
<void property="x0">
<double>62.5</double>
</void>
<void property="x1">
<double>62.5</double>
</void>
<void property="y0">
<double>-181.25</double>
</void>
<void property="y1">
<double>-181.25</double>
</void>
</object>
</void>
.......
// 線分1728君の始点と終点は、(x0, y0) = (x1, y1) となってしまっている
さて、これをここで消してしまうか。いや、これは危険だ。各線分には「通し番号」がついており、いきなり欠番を出したら何が起こるかわからない。採番のし直しも手間がかかる。したがって最善の手はこれ。
実際、私の手元での事象はこれで解決した。
さて、おおよそ正方形の四隅にあたる部分がTODOの状態になっている。その周りの構造はほとんど固まったので、明日からは「車輪の更に外側の領域」だけをピックアップした部分試作を「前部」と「後部」に分けて行おうと思う。
20200429
紙の四隅、8 x 16 マスの領域まで詰まった。前半分は「座席」と「ヘッドライト」に充てている。ヘッドライトを試しに今の構造で造形してみる。かなり無理があること、前作の構造をもっと残したほうが上手くいきそうなことが分かった。ちょっとしたちゃぶ台返しだ。まとまりかけていた「座席部分」も若干の手戻りが起こった。結果的には素直な蛇腹展開図に落ち着いた(それまでは自分でも制御しきれないようなピタゴラス三角形分子が入り乱れていた)あきらめかけていた「ハンドル(前作にはあった)」も、ギリギリではあるものの、造形できることも確認した。
ここで一旦前半分を保留しておく。後ろ半分は「後部座席」と「前部座席の背面」に充てている。後部座席には多めに領域を残していて、前作では実現できなかった「座席のクッション感(ステッチ?)」を仕込むつもりなのだ。ようは唐突な「テッセレーション」構造を埋め込むことだ。座面と背面の2面にそれぞれX字のステッチを1つずつ、紙の縁で表現しようと思う。ここまでくると周囲の構造からくる制約条件はかなり強く、自由度の少ない中で、(そもそも可能なのかどうかもわからない状態で)上手い線の配置を試行錯誤する。かなりの時間を奪われたが、ギリギリ実現できた。
ここでまた「前部座席」に戻る。後ろ半分からのバックアップ領域があるため、こちらのパーツにもまだまだ余裕があることが分かってきた。…「前部座席にもクッションを置こうか」。この欲は再びたくさんの時間を奪ったが、後部座席で施したものとは構造は違えど、同じような見た目の「X字のステッチ」を表現できた。
ここまで詳細な造形を試作段階で行ったのは久々だった。普段は本番を折っている間に決めてしまうような折りも少なくはない。だが今回はもうこれ以上詰めることはなくなった。ここまでに決定した折り筋を展開図に残した。地獄のような難しさになったと思う。ここでようやく本番に移ろうと思う。
この記事の更新もこれで最期になることを祈る。
こんどこそしっかり走ってくれ。