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【小原佳太】レベルの違いを示す試合になる~ダイヤモンドグローブ・インタビュー 2022年10月11日

◇日本ウェルター級王座統一戦10回戦
 正規王者 小原佳太(三迫) 30戦25勝(22KO)4敗1分
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 暫定王者 小畑武尊(ダッシュ東保) 18戦12勝(5KO)5敗1分

現役の国内中量級で屈指の実績を誇る実力者が10ヵ月ぶりに戦線復帰する。10月11日に開催される『ダイヤモンドグローブ』のメインイベントは日本ウェルター級王座統一戦。正規王者の小原佳太(三迫)が新進気鋭の暫定王者、小畑武尊(ダッシュ東保)を東京・後楽園ホールに迎え撃つ。
 
 小原は今年4月、前王者の永野祐樹(帝拳)との再戦に臨む予定が練習中に右脚を負傷。試合中止を余儀なくされた。6月に行われた暫定王座決定戦で永野を5回TKOで下し、対戦相手に浮上してきたのが24歳の小畑だった。経験豊富な35歳はこともなげに言う。「王座統一戦となっていますが、日本最強の証明でもなければ、世界へのステップでもない。僕にとっては、ただの3度目の防衛戦です」。その足跡をあらためて振り返れば、うなずくしかない。
 
東洋大学時代の国体2冠を手土産に2010年8月にプロデビュー。9戦目で日本スーパーライト級王座、12戦目で東洋太平洋同級王座とステップアップし、2016年9月には世界初挑戦にこぎつけた。ウェルター級に上げてからも2度のWBOアジアパシフィック王座、日本王座を奪取。2階級で1度ずつの世界挑戦者決定戦を含めれば、30戦のうち16戦がタイトルマッチ、またはタイトルマッチに準じた試合になる。
 
 サウスポーの小畑は昨年3月、当時日本4位の安達陸虎(大橋)を左一撃で沈める初回TKO勝ちで日本ユース王座を奪取。そこから4連勝と波に乗る。3歳から空手、さらには中国拳法、合気道とさまざまな格闘技を経験。大分・別府の地方ジムにあって、飽くなき自己探求と創意工夫で力をつけてきた。「叩き上げでしっかり成長してきた選手。気を引き締めていかないといけない」と小原に油断はない。が、あくまでも世界的に層の厚いウェルター級で過去の自分が果たせなかった「海外で世界ランカーに勝つこと」が目標。きっぱりと言った。「小畑選手は、僕とのレベルの違いを味わうことになると思います」。
 
■ロサンゼルス合宿の目的
 
――当初、4月に予定していた永野選手との防衛戦がケガで中止になりました。試合まで1ヵ月を切ったところだったそうですが、そのときの気持ちは。
 
小原 自分のトレーニング中のケガで、不注意ではなく、起きてしまったケガだったので、仕方ないな、と。それでも(試合を)やるならば、やるしかないと思っていましたけど、難しい状態でしたし、「無理はさせられない」と三迫(貴志)会長からもおっしゃっていただいたので。
 
――ケガの状況、治療の経過は、小原選手のnoteに詳しく書かれていましたが、右ヒラメ筋腱断裂、いわゆる右ふくらはぎの肉離れで、なおかつ腱の一部を断裂していた、と(https://note.com/ko903/)。
 
小原 はい。ただ、自覚症状は「動けないことはない」という感じなんですよ。診ていただいた先生から、動いてしまって、再発して、また治療して、ということを繰り返すケースが多いとうかがったので、トレーニングは完全に休むと決めて。しっかり治してから、また頑張るしかないと切り替えました。
 
――完治まで3ヵ月半、6月末までかかったそうですね。完全にトレーニングを休んだ状態から再開したときの感覚はどうでしたか。
 
小原 早く体が戻るかな、という不安はあったんですけど、自分の感覚的には、そこまで落ちてないな、ズレてないな、と思っても、外から見たら、スピードが落ちていたり、下半身に負担がかからないようにして、少し動きがズレたり、そういうのはありました。
 
――8月7日から2週間、ロサンゼルス合宿に行って。ということは、練習を再開してから1ヵ月程度で行かれたことになりますね。
 
小原 もちろん、日本でしっかりトレーニングを積んで、追い込んでから行くのがベストだったとは思います。ただ、僕は年齢的にもう35で、そんな時間もないし、その環境に踏み込んでしまえば、やらなければいけないので、勝手にコンディションも上がってくるだろうと思って。やはり怖さだったり、不安はありましたけど、行かなきゃいけない、という気持ちのほうが強かったです。
 
――昨年12月に帝拳ジムの玉山(将也)選手に勝ったあと、(コロナ禍で)今年は待ちだったけど、来年は能動的に動くと。有言実行ということですね。
 
小原 はい。目標は海外で世界ランカーに勝つことなので、そのためにも早く海外に出て行かなきゃ、名前を売りに行かなきゃな、と思ったので、自分から動いて。気持ちを上げる意味でも、前に進む意味でも、焦りを持って、行ってよかった合宿だったと思います。
 
――いちばんの目的は、日本人世界ランカー“ケイタ・オバラ”を売り込んで、少しでもチャンスを引き寄せたいということ。
 
小原 そうです。本来ならば、4月の防衛戦を終えたら、行こうと考えていて、年内12月までに何かしら、と思っていたので。想定とは違いましたけどね。
 
――その手応えはありましたか。
 
小原 セルゲイ・リピネッツ(ロシア、元IBF世界スーパーライト級王者)と1週目にスパーリングをしたんですけど、リピネッツのマネージャーから「プロモーターのPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)のほうに推してもいいか」と話がありました。そういうきっかけは得られたので。
 
――7年前、世界挑戦者決定戦でワルテル・カスティーリョ(ニカラグア)と引き分けたときのプロモーターがPBCで。そういう縁がつながったら。
 
小原 つながってくれたら、いちばんいいですけどね。あ、あのときの選手か、と思い出してもらえれば。
 
――目指すところは海外で世界ランカーに勝つこと。それはずっと変わらず。
 
小原 はい。自分が成し遂げられなかったことなので、どうしても引っかかるというか。そこに目標を置きたいというのが僕の気持ちです。
 
――例えはおかしいかもしれませんが、ランナーやスイマーが自己最高記録の更新を目標にするというか、自分が成し遂げられていないことを超える、過去の自分を超えるようなイメージで。
 
小原 はい。どうしても相手ありきの競技なので、相性とか、スタイルの噛み合わせとか、強い、弱いとか、いろいろあると思うんですけど、世界ランカーなら誰でもいいです。形もKO、判定、負傷判定でも(笑)、どうでもいいんです。とにかく勝ちたいです。
 
――それこそ、カスティーリョ戦は小原選手が勝っていた内容でしたが。
 
小原 はい。僕も思っていますけど、人の手に勝ち負けをゆだねた時点で文句を言うことではないと思っているので。倒せなかった、倒されなかった自分が悪いです(笑)。しょうがないです。
 
――はっきり決着をつけるところまで持っていけなかった、と。
 
小原 そうです。そういう価値観で僕はやっているので。
 
――これまでの海外での3戦、マイアミでのカスティーリョ戦、モスクワでの(エドゥアルド・)トロヤノフスキー(ロシア)との世界戦、2019年3月のフィラデルフィアでの(クァドラティロ・)アブドゥカハロフ(ウズベキスタン)との世界挑戦者決定戦を通して、今、自分の目標との距離感をどのように感じていますか。
 
小原 実力的には少し遠いかな、とは思っています。この階級には強い選手がゴロゴロいるので。ただ、僕には世界ランキング(WBO12位)という切符があって、チャンスとしては大いに可能性があると思うので。知ってもらって、候補に入れてもらって、あとは神のみぞ知ることなので。決まらなかったら、しょうがないです。そう思ってないとやっていけないです(笑)。
 
■若者の夢を奪って、先へ行く
 
――誰もがそうでしたが、この2年半というのは思いがけない状況になって、思い通りにならない時間だったと思います。どのように受け止めてきましたか。
 
小原 ボクサーとしては足踏みになりましたけど、ちょうどコロナ禍で試合がなくなり、一時期、ジムで練習ができなくなったときに子どもが生まれたので、子どもと過ごす時間がたくさんあったんですよ。父親としての幸せがあったので、ボクサーとしての不幸せを合わせて、ちょいマイナスかな、ぐらいで。
 
――目標に向けては、年齢的に時間との闘いもあると思いますが。
 
小原 いえ、これまで僕は3回、チャンスをもらっているので。この2年半のせいでチャレンジできなかった、というわけではないんですよ。この3回で結果を出せなかった僕の責任なんです。なので、受け止めるだけですね。
 
――海外で世界ランカーに勝つという目標は、これまでの小原選手のボクサー人生の中で、どのような目標になりますか。
 
小原 今までの僕のボクシング人生の最高到達点です。そこをクリアしたとき、また大きな目標であり、夢が目の前に広がると思うので。まずは。
 
――では、ロサンゼルス合宿に行けば、コンディションも上がるだろう、感覚も戻るだろうということでしたが、実際はどうだったのでしょうか。
 
小原 あ、よかったですね。強い選手とずっとやれたので。こっちとは相手の耐久度、技術面、スタイルがかなり違うので、僕のほうの緊張感が違いますし、対応しているうちによく動けるようになりました。
 
――東京五輪ライト級銅メダリストの(ホブハネス・)バチコフ(アルメニア)ともスパーリングをしたそうですね(現WBA世界スーパーライト級11位)。
 
小原 いや、めちゃくちゃ強かったですね。ヤバかったです。ボディで一度、倒されましたし、上でもボッコボコでした。バチコフ、怖かったです(笑)。
 
――ロサンゼルス合宿は3年前、2019年の夏に後輩の吉野(修一郎)選手と行って以来、3回目ですが、そういう経験ができるのも海外ならでは。
 
小原 はい。1週目はずっとリピネッツだったんですけど、スーパーライト級の元世界チャンピオンだったら、僕はやれるんだって、自信になったんですよ。2週目はバチコフ、スーパーウェルター級のアルゼンチン王者、メキシカンのミドル級とやったんですけど、こっちはやられました。強かったです。
 
――前半は手応え、後半は世界の強さ、両方を味わうことができた。
 
小原 はい。いつもとは違った刺激がありました。
 
――その分、コンディション、感覚の戻りも早かったということですね。
 
小原 そうですね。ただ、そこに関しては結果、こっちでもできたんですよ。(ジムの後輩の)渡来(美響)だったり、草村(龍弥)だったりが本当に強いので。特に草村はミドル級で耐久度もあるし、大きいので(身長190センチ)、距離もしっかり取らないといけないので。そういう面では行かなくてよかったかな、と思いましたけど(笑)。
 
――日本に帰ってきてからもいいスパーリングができているということですね(笑)。草村選手はサウスポーだし。
 
小原 ただ、(小畑とは)サイズも、戦術も、距離も全部、違いますけどね(笑)。渡来はオーソドックスですけど、技術が高くて、こっちも常に対応を考えてやらないといけないので。いいスパーリングができているのは確かです。

同門の渡来美響と

 ――次の試合、前王者の永野選手に勝って、暫定王者になった小畑選手が相手になりました。この試合のテーマは?
 
小原 ただの防衛戦です。それ以上でも、それ以下でもないです。王座統一戦となっていますが、日本最強の証明でもなければ、世界へのステップでもない。僕にとっては、ただの3度目の防衛戦です。
 
――小畑選手のことは、どう見ていますか。
 
小原 まだ映像は永野戦しか見てないんですけど、まとまった、いい選手だと思います。
 
――大分の別府にある地方ジムで、ここまで来たということは、それだけ自分で考えてやってきて、そういう力がある選手でもあると思います。
 
小原 ランカーに一発で勝ち、永野選手に勝って、急上昇中の実力のある選手ですし、負けの数は多いですけど、勝つための糧として、叩き上げでしっかり成長してきた選手なので。気を引き締めていかないといけないと思っています。
 
――どんな試合を見せたいですか。
 
小原 圧勝です。しっかり自分のボクシングを貫いたら、そうなると思いますし、小畑選手は、僕とのレベルの違いを味わうことになると思います。
 
――決着を人にゆだねる必要のない試合になる。
 
小原 はい。KO以外にないですよ。今までもらったことのないパンチ力だと思いますし、タイミングだと思いますし、きっと最後は倒れているでしょう。若者の夢を奪って、背負って、僕が先へ行きます。
 
――しっかり力を示して、また自分が目指す場所の実現に向けて、できることをやっていくと。
 
小原 それだけです。ただ、試合が決まったら、目の前の試合がすべてです。気を引き締めて、今は小畑選手に勝つことだけが僕のいちばんの目標です。
 
(取材/構成 船橋真二郎)

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