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【力石政法】夢は矢吹正道との兄弟同時世界王者 満を持して初タイトル戦 5月15日

◇東洋太平洋スーパー・フェザー級王座決定12回戦
 3位 渡邉卓也(DANGAN AOKI) 49戦38勝(22KO)10敗1分
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 6位 力石政法(緑) 11戦10勝6KO1敗

 前WBC世界ライト・フライ級王者である矢吹正道の弟、力石政法が満を持して自身初となるタイトルマッチに挑む。2017年のプロデビューから5年。そのスピードとパワーで将来を嘱望されるサウスポーに「これまで長かったか?」と問いかけると、次のような答えが返ってきた。

「けっこう待ったという気持ちはありますね。ここのところはタイトルマッチをやっていいくらいの相手とずっとやってきたので。ランカーと何人もやってすべて明確に勝ってきましたから」

 当初は4月29日に大阪でフィリピンのサウスポー選手と対戦する予定だった。しかし、東洋太平洋チャンピオンの木村吉光(志成)が海外での世界ランカー戦を優先してタイトルを返上。これにより渡邉拓也との王座決定戦の話が力石に舞い込み、4月の試合をキャンセルしてこちらのチャンスに飛びついた。

「相手が左から右に変わったんですけど、やっぱりタイトルマッチというのは大きかったです。それに渡邉選手は上位ランカーの中でも上位ランカーらしい選手。それなりの相手とやってきているし、何度も敵地で戦っている。そういう意味でリスペクトできる選手です」

 力石の「けっこう待った」という言葉には説得力がある。2019年には日本ランカーの岩原慶(本多)、試合の数日前まで世界ランカーだったフレディ・フォンセカ(ニカラグア)に勝利。翌年は日本ランカーの粕谷雄一郎(角海老宝石)、21年12月には元OPBF王者のロリ・ガスカ(陽光アダチ)も下した。本人の言う通りすべてが明確な勝利だった。

2020年11月1日 59.5kg契約8回戦 VS それいけ太一

 兄である矢吹の世界王座獲得も力石をモチベーションを一段と高めている。矢吹は21年9月、WBC・L・フライ級V8王者の寺地拳四朗(BMB)に挑み、不利予想を覆して世界チャンピオンに輝いた。ちなみに矢吹と力石は言うまでもなくボクシング漫画の不朽の名作『あしたのジョー』から取ったリングネーム。2人の姓は佐藤である。

 力石は幼いころからグローブを握った。そばには常に2歳上の兄がいた。兄はよき理解者であり、時にライバルであり、何より家庭環境が複雑だったことから、あらゆる困難に立ち向かう同志だった。

「ボクシングは親にやらされて始めただけなので、僕も兄も途中で何度もドロップアウトしました。それでも世界チャンピオンになろうと思って18歳のときに兄と上京しました。だけど上京前に起こした事件で捕まって少年院に2年入ったんです。そこでようやく意志が固まった。こんな適当なことしてたらアカンなと。本気で世界チャンピオンになろうと思いました」

 弟より1年半早くプロのリングに上がった矢吹は2020年に日本タイトルを獲得し、翌年にはトントン拍子で世界チャンピオンまで登り詰めた(22年3月に王座陥落)。兄に続いて今度は自分が世界チャンピオンになる。それは当然の目標だが、力石にとって矢吹はただ背中を追うだけの存在ではない。

「兄に世界チャンピオンに返り咲いてもらって兄弟で同時に世界チャンピオンになっているというのが僕の中の夢なんです。どっちか世界チャンピオンになって引退じゃない。目標は世界チャンピオンで、兄弟同時チャンピオンが夢です」

 大きな志を胸に抱いてプロデビューしたのが2017年7月のこと。4年前の3戦目で坂晃典(仲里=現日本王者)に2回TKO負けを喫したものの、その後は8連勝をマークしている。上位選手を相手に安定した戦いぶりは立派と言えるが、力石が自らのパフォーマンスに納得したことはまだないという。

「3戦目でKO負けして自分は打たれ弱いと思った。それが勝ちに徹するボクシングにつながったと思います。でも、それから試合を重ねて別に打たれ弱くないことが分かった。なんていうか、もっとできるんじゃないか、自分を過小評価してしまったんじゃないか。そんなふうに感じるようになりました」

 打たれ弱いという意識が“安全運転”につながった。勝利に徹するあまり、持っている力を十分に出さないままゴールテープを切るような試合が続いた。ここ数年はそんな自分を変えようと思い、いかに力を出し切るかを大きなテーマに据えるようになった。世界に向けた登竜門とも言える今回のタイトルマッチは新しい自分を披露する絶好の舞台と言えるのではないか。

「自分の力をすべて出し切って、実力の差を見せつけて勝ちたい。東洋のタイトルを取ったら海外で学びたいとも思っているんです。スーパー・フェザー級で一番強いチャンピオンはシャクール・スティーブンソン(WBO&WBC王者)。今はだれも僕なんかじゃ勝てないと思っているけど、ワンチャンならいけるんじゃないかと思われるような実力をつけたい。一番強いチャンピオンに挑戦したいんです」

 兄弟同時チャンピンを目論む力石が今、飛躍への大きな一歩を踏み出そうとしている。
<渋谷淳>

●ライブ配信情報
 ▷配信プラットフォーム:ABEMA
 ▷ライブ配信:5月15日(日)12時45分~試合終了時刻まで
 ▷料  金:無料
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