【重岡優大】 危険なパンチでミニマム級らしからぬ倒し方見せる 重岡兄弟の兄が4戦目でタイトル獲りへ! 2021年11月12日
◇WBOアジアパシフィック・ミニマム級王座決定戦12回戦
同級2位 小浦翼(E&Jカシアス) 16戦15勝(10KO)1敗
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同級3位 重岡優大(ワタナベ) 3戦3勝(2KO)
拓殖大3年時の2018年に全日本選手権優勝、熊本・開新高時代に全国4冠を果たした24歳のサウスポーがプロ4戦目でタイトルに挑む。
弟・重岡銀次朗(ワタナベ)が返上したベルトを争うのは、元東洋太平洋王者で現在は世界2団体でランクされる実力者の小浦翼。まずは「試合が決まったことがすごく嬉しいし、受けてくれたことに感謝です」と神妙に語った。
「試合ができるのは相手があってこそ。それを最近、特につくづく思いますね。この状況では、海外の選手っていう選択肢はないじゃないですか。やってくれる時点でありがたいですし、感謝の気持ちは忘れないように。そう自分のなかで思っています」
大学を中退し、弟から遅れること1年、2019年10月にプロデビュー。が、2020年は1試合もできなかった。今年2月、1年2ヵ月ぶりに決まったのが1階級上の日本ユース・ライトフライ級王座決定戦。元インターハイ王者で当時無敗の20歳、堀川龍(三迫)を5回TKOで退けたが、国内のミニマム級トップ選手たちにはチクリと言いたくなる。
「試合のオファーを出しても拒否されることが結構ありましたからね。自分に自信がないのか、ビビりが多いのか、知らないですけど、相手が誰だろうと試合をやるのがボクサーだし、格闘家だと思うので。僕からしたら話にならないなっていう」
4年前、重岡がまだ大学生の頃、この12月14日に2度目の世界挑戦が決まったジムの先輩・谷口将隆が接戦の末、0-2の判定で小浦に競り負けた一戦を後楽園ホールで見た。当時の「強い選手だな」というイメージも残っているし、今、ミニマム級で「誰が強いか」と見渡したとき、真っ先に名前が浮かんだのも小浦だった。
だからこそ、ボクサーとして、「嬉しいし、試合が楽しみ」という気持ちが心の底から湧き上がってくる。口をついて出る言葉も勢いを増していく。
「強い相手だからこそ、圧勝しなくちゃいけない。それは当日、見てもらえれば分かると思います」
プロとして迎える初めての大舞台。それでも「ベルト、ベルトって、そんな熱い気持ちではないですよ」とそっけない。
「ここがゴールじゃないですからね。まあ、銀が獲って、次は僕が獲るので。重岡兄弟が所持したってことで、このベルトの価値が上がるんじゃないですか。それぐらいですよ」
2歳下の銀次朗と物心がつく頃には空手、兄は中1、弟は小5からボクシングに転じ、父親が息子たちに課す壮絶な練習に空手時代から耐えてきた。小、中学生年代の大会では、優大が4冠、銀次朗が6冠と兄弟で10冠。これまでの人生、誰にも負けないぐらい練習をやってきた自信があり、「育ち方、踏んできた場数が違う」という自負がある。
重岡兄弟が見据える場所は、さらに高み。ふたりの導き手を担う町田主計トレーナーは「そこに道がつながっていくイメージで練習してきた」と言う。
「もう限界というところから、あと一歩、さらに一歩、追い込んでいます。あの兄弟は、それでも食らいついてくるし、根を上げずにやりきるんです」
重岡も「俺たちだけに、町田さんは他の人たちにはやらせないようなメニューを与えてくれてると思うし、乗り越えることで、また自信になります」と胸を張る。
「小浦選手は12ラウンドやった経験があって、僕はやったことがない、という声があるかもしれんけど、とうに12ラウンドでも15ラウンドでもできる状態に仕上がってるし、それぐらいのことじゃ埋まらない差があると思います」
プロ2戦目の6回戦。小浦から東洋太平洋王座を奪い去り、唯一の黒星をなすりつけたリト・ダンテ(フィリピン)に苦闘ながらも判定勝ちしている。が、それ以上に拠り所になっているのが豊富な実戦経験、アマチュアキャリアで培ってきた対応力だ。
「ある程度、得意なパンチ、戦い方は頭に入れておいて、あとはリングの上で臨機応変に考えて、戦う。しっかりレベルの差が出る試合になりますよ」
本番まで1ヵ月を切ったジムで、鬼気迫る表情でサンドバッグを叩く銀次朗を指して、町田トレーナーが耳打ちしてきた。
「試合が決まったわけでもないのに銀も熱が入ってるんですよ」
幼い頃から一緒に練習に励み、大会に出てきただけに兄弟の呼吸はぴったりだ。
昨年はともに試合ができなかったが、ふたりで休まず練習をやり切った。今年に入り、2月に兄、7月に弟が久しぶりのリングに上がり、お互いのセコンドにもついた。優大も銀次朗も「特に気にしてるわけじゃない」と口をそろえながら、「結局は刺激し合ってる」と認める。
「試合が決まって、銀が横で熱い練習してると、試合は決まってないけど、こっちも自然とやっちゃうし、銀も僕の練習を見て、刺激されてるんじゃないですか。俺らは小さい頃から、そういう関係なんで」
止まっていた兄弟の時間が動き始めた。「試合が決まらなかった期間にやってきたこと、小浦選手と決まってからやってきたこと、さまざまなピースがひとつになって、カタチになってきた」と重岡は手応えを語る。言葉に闘志をみなぎらせた。
「僕のパンチは危険だし、迫力が違うので、毎度のことですけど、ミニマム級らしからぬ倒し方を見せたいですね。倒しに行く闘争心があふれ出ないか心配なぐらい、今回は前回の試合以上に気合いが入っているので。楽しみにしてください」
<船橋 真二郎>
●ライブ配信情報
▷配信プラットフォーム:BOXINGRAISE
▷ライブ配信:11月12日(金)17時45分~試合終了時刻まで
▷料 金:月額会員制 980円/月
▶視聴サイトはこちら
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