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【黒木優子】かつてのV5王者復活なるか、5年ぶり王座返り咲き目指し改革実行 2022年9月1日

◇WBO女子アトム級タイトルマッチ10回戦
 王者 鈴木菜々江(シュウ) 16戦11勝(1KO)4敗2分
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 挑戦者 黒木優子(YuKOフィットネス) 28戦19勝(9KO)7敗2分

引退も考えた…苦しみ乗り越え4年ぶり世界戦

 元WBCアトム級チャンピオンの黒木優子が世界タイトルマッチの舞台に戻ってくる。花形冴美とのIBFアトム級王座決定戦が2018年9月だから、実に4年ぶりの世界タイトルマッチだ。

「あっという間といえばあっという間だったし、長かったといえば長かったし。う~ん、どうなんでしょう(笑)」

 あっけらかんと話す黒木だが、ここ数年は結果が出ず、大いに苦しんだ。

17歳8カ月でプロデビューしたのが08年12月のこと。この試合には敗れたが、その後は“ボクシング界のゆうこりん”として多くのファンに愛され、注目を浴びながら14年にWBCアトム級チャンピオンに輝いた。同王座を5度防衛。小関桃に敗れて王座陥落したのは17年12月のことだった。

 以来、女子ボクシングで確かな存在感を示していた黒木の影は少しずつ薄くなっていった。返り咲きのチャンスだった花形とのIBF王座決定戦は、決め手を欠いて2-1判定負け。引き分けを挟んで21年6月、OPBF王座決定戦で新鋭の千本瑞規(ワタナベ)にこれまた2-0という小差で敗れると、ついに張り詰めていた緊張の糸が切れかかった。

「千本さんの試合が終わってすぐ、引退しようと思ったんです。ここでこんな試合をしているようなら続けている意味がない。しばらくして冷静になって、あの試合で終わりというのもどうかなと。まずはいつでも試合ができるように練習だけはしっかりしておこうと思いました」

 敗れた2試合はどちらに転んでもおかしくないような接戦だった。ただし大きな見せ場を作れず、はっきり勝ったと胸を張れるような試合でなかったことも事実だ。そんなことを反省しながらコツコツと練習をしていると、今回のタイトルマッチが巡ってきたのである。黒木は連敗中だったこともあり、5月にタイに遠征して2回KOで久々の勝利を飾る。こうして2月にチャンピオンになったばかりの鈴木への挑戦が決定した。

メインイベントを務めたバンコクで行われた女子ミニマム級8回戦。2R KO勝利を飾った
(2022年5月)

スタイルを見つめ直し、世界王者返り咲きへ着々準備

 いつも明るいイメージの黒木には似合わないかもしれないが、本人の言葉を聞いていると「背水の陣」というフレーズがどうしても浮かんでくる。それほど自身10試合目となる世界タイトルマッチにかける思いは、今まで以上に強い。

「年齢も30歳を超えてこのままズルズル続けていていいのか、という気持ちがあります。10代からボクシングを始めて、どこかで踏ん切りをつけないといけない。それくらいの覚悟で今回の試合に臨もうと思いました。鈴木さんってガンガンのファイターじゃないですか。それをうまくさばけずに負けたら、逆にすっきりするかな、とも思ったんです。もちろん勝つつもりなんですけど」

 今回の一戦に向け、黒木は地元の福岡から神戸の真正ジムに出向いて腕を磨いた。環境を変えて自らに刺激を与える意味もあった。出げいこ先では真正ジムの選手たちとスパーリングを重ね、山下正人会長から指導を受けた。最も注意されたセリフは「行くな」だったという。

「私はもともと距離を取ってきれいなボクシングをしたいんですけど、相手に合わせて打ち合ってしまう悪いクセがあるんです。もちろん攻めるところは攻めるんですけど、そういったところを修正しています」

チャンピオンの鈴木は黒木とは対照的なファイターだ。鈴木相手に「行って」しまえば思うツボ。スピードを生かしたスタイリッシュなボクシングをもう一度見つめ直し、王座返り咲きに向けての準備を着々と進めてきた。

「距離を取ったスタイルを貫きたい。ただ、それを1試合通じてできるわけではないので、鈴木選手の距離になってもしっかり対応したい。今、一番の目標って練習してきたことを試合で出すことなんです。出せない試合が続いているので、それを打破するのが一番のモチベーション。それができれば結果は自然についてくると思うので」


福岡市九電記念体育館で行われたWBC女子世界ミニフライ級 タイトルマッチで、
元王者の安藤 麻里(フュチュール)選手を3-0の判定で下した(2016年12月)


黒木はいまでも「世界チャンピオンの黒木さん」と紹介される場面がたびたびある。そのたびに「元チャンピオンです」とか「今は違うんです」と説明を加えることに寂しさを感じる。やっぱりもう一度世界チャンピオンになる。黒木の実績を考えれば当然だろう。

「絶対に世界チャンピオンに返り咲いて『チャンピオンです』ってみなさんにあいさつしたいです。チャンピオンになれば今度は統一戦とか、また新しい目標ができると思うので」

 ベテランぞろいの女子ボクシングにあって31歳はまだまだ若い。苦しみながら世界戦の舞台に戻ってきた黒木がチャンピオンロードの第2章をスタートさせようとしている。

●ライブ配信情報
 ▷配信プラットフォーム:BOXINGRAISE
 ▷ライブ配信:9月1日(木)17時45分~試合終了時刻まで
 ▷料  金:980円 ※月額会員制
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詳細はこちら

(カバー画像:DANGANカメラマン ヒノモトハジメ氏撮影)

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