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101. 新しい目標に向かって

それは、ものすごい勢いだった。なにかにとりつかれたように本を読み漁った。そのほとんどは、社会常識的なもの、個人の体験談。その内容に、納得させられ、共感しながら、大切な言葉や箇所は、ノートに書き出していった。

そして、その大切なことのほとんどが、わたしには身についていないことを痛感させられた。

『わかっていること』は多くても『出来ること』は何もない。そんな自分が、えらそうな顔をして仕事をしたつもりになっていた。

周りの人たちの仕事振りや、環境が整っていないことに不平不満を抱き、愚痴をこぼしていたのだ。とても恥ずかしく、情けなかった。

だけど、そんな至らない自分ときちんと向き合わなければ、成長はできないのだ。

今は出来ないことだらけだけど、ひとつずつそれを自分のものにしていけば、確実に今より成長することが出来る。変わることが出来るんだ。

目の前の雲はすっかりと消え、今は、どこまでも続く真っ直ぐな道がわたしの目の前にある。今は、その道をひたすら歩き続けるだけ。歩きつづけていたら、きっと「これだ」というものを発見することが出来るはず!

〝自分を信じて、歩いていこう!” 本を読みながら、わたしは自分自身にそう言い聞かせていた。

もうひとつ気づいたことがあった。それは、派遣会社の登録に行ったことを振り返ってのことだったが、わたしには、履歴書に書く資格が何もなかったこと。

“1枚の紙切れのためだけに、その場限りの知識を一夜漬けで押し込めて、取ってしまえば全てを忘れてしまうようなことはバカらしい。資格が全てではない!自分自身が何ができるかが大切なんだ!”

そう思っていたので、学生時代も就職活動をしているときも、資格なんて取る気にもならなかった。
でも、どんなに仕事ができても、それを目に見える何かで証明できなければ、第三者には伝わらないのだ。

“大切なのは、取った資格をそのままにせずに、自分が活かしていけばいいのか_。”

これから歩いていく道のずっと先に小さな灯りを発見した。そして、次は、その道の途中で自分の歩みを振り返るために立ち止まる場所を作ること。目に見える、もう少し具体的な目標として、何か資格を取ってみようかと思い始めたのだった。

“じゃあ、一体何を取ったらいいんだろう?”
ふと、目に止まったのが「秘書」という言葉だった。メインで仕事をする人たちを影で支えるサポート役のプロフェッショナル。女性の憧れの仕事(当時)。そして、公的資格として試験制度がある。上級資格の合格率は、民間団体の主催といえども、10%にも満たないという難関試験。チャレンジするには、申し分のない条件だった。

早速、主催する事務局に問い合わせをしてみると、ラッキーなことに夏期試験の締め切り前だった。すぐに願書を取り寄せて、受験することにした。試験日は2ヵ月後。時間はほとんどない。一番下のレベルから受験するつもりだけど、最初は不合格になるかもしれない。

“でも、チャレンジすることが、今は目的なんだ!”

そう、自分に言い聞かせながら、手続き書類を作成して郵送した。

“自分の目標に向って、今は歩いていくだけ。不平も不満も、愚痴もこぼさない!”
気がつくと、会社からもらっていた休暇は残りわずかになっていた。

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