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「福井カイリュー問題」を考える ~自己紹介に代えて~

ななはし
1994年福井県生まれ。

地球温暖化に気候変動、止まらない政治不信に円高……多種多様な問題が存在する昨今だが、今この瞬間人類が第一に語るべきはご存じ「福井カイリュー問題」である。賢明なる読者の皆様にとっては当然既知のことであろうし改めて説明するのも非常に恐縮であるが、2023年10月23日に福井県と㈱ポケモンは相互協力協定を結び「ふくい応援ポケモン」としてカイリューが就任することが発表された。恐竜の化石産出量が日本一であり、県内北部に流れる一級河川「九頭竜川」など竜=ドラゴンにちなんだイメージの強い(←嘘つけ)福井県に対し、ドラゴンタイプの代表的ポケモンであるカイリューが抜擢された形である。これに伴ってカイリューのラッピング電車の運行・スタンプラリー・県内企業とのコラボグッズの製作販売・カイリューに会えるグリーティングイベント等が企画されている。


この件に関し私は非常に強い憤りを禁じ得ない。それは福井県民とポケットモンスターファンに対してのものである。先に紹介した人類史上最も愚かなコラボレーションを実施したのは言うまでもなく福井県と㈱ポケモンであるが、残念ながらこのような悲劇は往々にして起こりうるものである。この無意味極まりない施策は恐らく100年以内には人口縮小に伴い自然消滅するであろう限界集落の地方公務員あるいは田舎代理店がいかにも考えそうなことであるし、㈱ポケモンがキャラクタービジネスの雄として業界に君臨するものであるとしても、そのブランドは巨大資本を背景としたあらゆるメディア・企業を駆使した数撃ちゃ当たる戦法のビジネス展開の物量から成るものであり、ひとつひとつが練りに練られた至高の施策の集合体でないことは多少なりともポケモンブランドに触れてきた諸君らにとっては自明のことであろう。つまり、このコラボレーションは何かの間違いで誕生してしまう可能性は十分に考えられたものなのである。


だからこそ、この悲劇が起こってしまった後に誰も何もアクションを起こさないことが私には不可解であり、憤怒せずにはいられないのである。

まず大前提として断言するが日本国の中で最も終わっている地方公共団体の一つであることでおなじみ福井県と、カイリューとではとてもではないが釣り合いがとれうるはずもない。わざわざこのような義務教育レベルの知識を書き連ねることを読者の皆様には陳謝するが、1996年発売『ポケットモンスター赤・緑』を初出とする図鑑NO.149、ドラゴンポケモンのカイリューはミニリュウからハクリューを経て進化するひこう・ドラゴンタイプのポケモンである。分類の「ドラゴンポケモン」からもわかるように、いわゆる第一世代では唯一のドラゴンタイプの最終進化系にあたり、青色でほっそりとしたいわゆる東洋龍的フォルムのミニリュウ・ハクリューがいきなり黄土色のずんぐりむっくりで親しみを感じさせる二足歩行の翼をもったトーべ・ヤンソン作品に出てくる某妖精めいたフォルムに激変するという、昆虫の変態的側面をもつポケットモンスターにおける「進化」そしてデザイン面における「ズラし」というコンテンツ全体の核たる魅力を体現する存在であるとも言える。俗にいう600族(ポケモンの能力を司る六項目のマスクステータスの数値の合計が非常に高い600であることからの呼称。公式の名称は「大器晩成なポケモン」)の最初の一匹でもあり、特に各ポケモンに設定される固有の能力である「とくせい」の中でも特に強力な「マルチスケイル」を獲得した第五世代以降は通信対戦環境でも存在感を発揮し続け、2024年時点で最新環境である第九世代では固有の対戦システム「テラスタル」との抜群の相性の良さから、ソフト発売後から一年半以上環境上位に君臨し続けていることはあまりにも有名である。劇場アニメ第一作『ミュウツーの逆襲』(1988)での登場やチャンピオンでもある有名キャラクターワタルのパートナーポケモンとしてのメディア露出、アニメ『ポケットモンスター(新無印)』(2019~2023)では我らが主人公サトシの手持ちとしての活躍がみられたことも印象深い。名・実ともに隙のない人気キャラクターであり、今や1000匹以上存在するポケットモンスターの中で誰に聞いても最低上位20位以内に入るであろうブランド力を備えた存在。それがカイリューなのである。


私はこのカイリューが福井県などという最底辺地方自治体と並列されていることにすら虫唾が走って仕方ないのであるが、それ以上に、福井県民と世に蔓延るポケモン好きを自称する愚民どもに深く、深く、深く失望を表明せざるを得ない。

まず、福井県民。私は田吾作ゆえの無知を責めるつもりはないが、少なくともカイリューを一目見て直観的に己にとって不相応な尊き存在であると見抜ける程度の眼力は養ってほしいものである。責めるつもりはないが、単純にガッカリである。―――っていうか普通に恐竜の化石つながりなら化石ポケモンがいるやん別にそれでええやん、プテラですらちょっと福井にはもったいないレベルやん、なんなら化石ポケモンかつドラゴンタイプのポケモンも別に普通にいるやん、そもそも竜ならタツノオトシゴでもええやん、タッツーくらいが丁度ええやん、福井県の形もちょっとタッツーに似てるやん、田舎者は田舎者なりに無知であってもせめて謙虚であれよ、たとえ体が障害者でも心まで障害者になるな―――言いたいことはそれだけである。

次に自称ポケモンファン。諸君はただオツムが足りていないだけの土人共と違ってより罪深い存在である。なぜ、福井県とカイリューという存在してはならないコラボが発表されてから半年近くが経つというのに怒りを覚えないのか、反対の声を上げないのか、全世界同時多発デモが起きないのか、㈱ゲームフリーク(東京都千代田区神田錦町2-2-1)と福井県庁(福井県福井市大手3丁目17-1)に爆破予告が行われないのか。それは偏に諸君らがポケモンを愛していないからである。もし諸君の心にひとかけらでもカイリューを愛する気持ちがあれば、このようなカイリューの尊厳を踏みにじる最も卑劣かつ愚劣な行いを事前に防ぐことはできずともゴネ倒して企画発表後に頓挫させることくらいはできたはずである。それがこの体たらくは何だ。スターウォーズEPⅠ~Ⅲを受けて『ピープルVSジョージ・ルーカス』(2010)を制作したスターウォーズファンの精神は現代では失われてしまったのか(そういえばスターウォーズファンは『ピープルVSウォルト・ディズ二―』は作らないんだろうか。EPⅦ~ⅨはⅠ~Ⅲよりよっぽどクソって聞いたことあるのに。見てないから知らんけど)。この10年で人類は受動的にコンテンツを消費するだけの豚に成り下がってしまったのか。こんなに急速なオタクの劣化が起きてしまっていいのか。私は憤りを禁じ得ないのである。


以上を以て改めて私はまず福井県民に告げる。悪いことは言わないから可及的速やかに現「ご当地ポケモン」を返上し、代わりにタッツーあわよくばプテラでも貰っておくがいい。君たちは知らないと思うから教えてあげるが、2024年が辰年であることを記念し、年末年始にかけてイタリアの世界的ハイブランド「FENDI」とカイリューはコラボを行っており10万円以上するバッグが転売ヤ―の手にかかり(死ね)飛ぶように売れる、そういう世界にカイリューは生きているのだ。ご当地ポケモン発表から半年以上経ってもコラボ商品の一つさえ公式サイトに載せられない無能極まりない行政機関そして君たち自身にもあまりにも不釣り合いな存在なのである。もし君たちが恥という概念を持ち合わせているのならば、一刻も早くカイリューを開放してやってほしい。双方の名誉を守るためにも、心から、お願いしたい。

そして自称ポケモンファン。貴様らにかける言葉はもはや存在しない。カイリューが福井県のご当地ポケモンであり続ける限り貴様らにポケモン好きを名乗る資格はなく、必然的にポケモンファンは今現在世界に存在しないという結論になるからである。今回の問題についてのご意見・ご感想・反論は応鷹揚に受け付けるが、あらゆる意味でまず間違いなく反論など来ないと推測されるため、今、ここに私の完全勝利をあらかじめ宣言しておくものとする。


お前ら全員人間じゃねえ。かかって来いよマンキー野郎。
ついでに牙の抜かれた惰弱なスターウォーズファンも謝れ。全世界に頭を地べたに擦り付けて詫びろ資本主義の敗北者共が。

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