見出し画像

マダムかマドモアゼルか、ときどきマァムか

日本でも有名な観光地でバイトをしていると、
たくさん海外からのお客様がいらっしゃって
"エクスキュズミー"以外にも いくつかの呼ばれ方をします

「ヘイ、ミス!」だったり「サンキュー、マム!」だったり、

そして「マダム」だったり。

昔バイトは、この「マダム」と呼ばれることが嫌いな時代がありました。
ですが今は全く戸惑うことがなく、それどころかバイト先でお客様に言われると嬉しく感じる時もあります。

というのは、バイトは
もう何年も前のこと、フランスに住んでいた経験がありまして

パリ右岸のアパルトマンに住み、ストラスブール周辺の東洋人のいない小さな村に数ヶ月と長く滞在したこともあります

当時、晴れて気持ちの良い休日の早朝に目覚めた時には、急いで着替えて ひとり朝のマルシェに買い物に行くのですが、その途中、外にテーブルを出しているカフェの店員さんに「ボンジュール!」と声をかけて挨拶。
すると必ず「ボンジュール、マドモアゼル!」と蝶ネクタイ姿の彼らから返事が返ってきました。

道を歩いていても、信号で止まった車の 空いた窓から「マドモアゼル、サバ?」と声がかかり

ひとり長距離列車に乗っていた時には車掌さんが「マドモアゼル、ボンジュール」とうやうやしく頭をさげてくれました

嗚呼、これぞ おフランス!などと思っていたわけですが、住み始め3ヶ月後には「マダム」と言われるようになりました

バイト、最初はこの変化に断固として反対!

マドモアゼルって呼ばれたいし、
マダムとは呼ばれたくない

なので「マダム」と呼ばれると「いいえ、私はマドモアゼルです!」と切り返す始末でした

どうしてパリに来た当初はマドモアゼルと呼ばれていたのに、3ヶ月が過ぎてマダムにかわってしまったのか?
マダムは既婚女性、マドモアゼルは未婚女性のことですから、結婚したわけでもなく、3ヶ月で変わる理由がありません
マダムだなんて、すごく年齢を重ねたみたいで嫌!

疑問も残しつつ モンモンとし
とにかく否定する日々

そしてある日、ふと気づきました

マドモアゼルと呼ばれていた当初は、決断を迫られることがなく、一人で旅行をしていても深く質問されなかったこと

マダムと呼ばれるようになってからは「どう思うか?」と聞かれたり、決断する機会が増えたことです

何十年も長く住んでいたわけではないので、本当のことはわかりませんが、そこで感じたのは、未婚・既婚の違いではなく、責任能力がまだない未熟なのか、責任能力のある一人前と見なされたのかということでした

フランスは年齢を重ねるほど成熟した大人の女性として失礼なく扱われる国。
お歳を召すほどに大きな宝石をつけてエレガントに装います。

当時自分が 未婚が優位で若いほうが素晴らしい!と思っていたのは東アジアの文化なわけで、
フランスという文化の違う国に住みながら しつこいほど頑なに拒否、否定していた自分が恥ずかしくなりました。

お店の話に戻りますが、
お客様は「サンキュー、マダム」「メルシー、マダム」と店を出ていく方もいらっしゃいます

「サンキュー」のお礼だけでもいいのに、わざわざあえて「マダム」をつけてくれるのは、そうした過去の出来事から信頼の証だと受け止めて胸を張って見送ります

それに、ありがとうだけだと店全体に言ってるようですが、
マダムと言われると個人的にも感謝されたような気持ちです

ああ、でも、
「マム!」と海外のツアー客のお母さん集団に言われると、そういうつもりはないとわかっていても
自分は彼女たちの母親ではない!と、やっぱり心の中で否定してしまう・・・
そこはまだまだ未熟者です






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?