白米みたいに好きなバンドのこと

 かれこれ10年間ずっと好きなバンドがある。
 ひょんなきっかけである曲を聴いて好きになった。アルバムがリリースされれば欠かさず集めた。毎年2公演程度ではあるがツアーにも足を運んだ。就職後はファンクラブにも入った。部屋にはバンドのグッズがちらほらある。カラオケではそのバンドの曲縛りで数時間歌い続けたこともある。そのくらい、もう白米のように好きなバンドだ。

 今日は、あるアルバムを久しぶりに聴いていた。そしたら涙が出てきた。歌詞に共鳴したのではない。曲に付随する記憶が思い起こされて、それがそのとき限りのものであったことがしみじみ感じられて、きゅっと寂しくなったのだった。
 そのアルバムがリリースされた数年前、私はまだ大学生だった。サークルやバイトに勤しんだり学業や研究に頭を悩ませたりしていた。幸いなことに人には恵まれていて、ある程度の波はあれど総じて穏やかに楽しく過ごしていた、と思う。どんな活動でも人間関係のいざこざからくる余計な悩みというものを抱えることはほぼなかった。だからなのか、多少なりとも交流のあったそれぞれの人に対して思い入れがある。卒業した今でもまた直接会って話したいと思うし、同窓会をやるならしっぽを振って飛んでいく。でも現実には、ほとんどの人とは連絡すら取っておらず近況だってもう知りようがないのだ。

 私は他人に依存したくなくて、実際マイペースで生きてきたと思う。けれど精神的にはいろんな人にちょっとずつ依存していたことを知った。私の苦手な部分を頼ったり、私に無い価値観に憧れたり、一緒に過ごす時間が好きだったり、私のことを分かってくれる安心感があったり、いろんな人がいろんなものを私に与えてくれていて、与えてもらっているからこそ私は私として自立していられた。
 それらを簡単には受け取れなくなった今、ぽつぽつと心に穴が空いたような感じがする。アルバムを聴いて、隙間風が吹いていることに気づいた。今度大きなライブがあるのだけど、行ったらやっぱり泣いちゃうのかな。どうなんだろうね。

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