ハクのおはなし
特別記事です。
世の中が平和ではないので、たまには平和な事を書いてみます。
私は、犬を飼っています。
名前はハク。
その名の通り、白い毛並みの柴犬です。
ハクとはちょうど2年前の今頃、お台場の保護犬譲渡会で会いました。
お台場には別の用事で行って、用事が終わって駐車した商業施設を歩いていると、イベントスペースで譲渡会をやっていました。
ここが人生の分岐点になりました。
譲渡会を覗いてみる?みない?
覗いてみる、を選択しました。
その後の記憶は定かではありません。
私は失神して、気づいたら家でした。
部屋にはケージが置いてあり、その中で生後6か月の白い柴犬が寝ていました。
私は、たぶん変わったと思います。
この2年間はハクがかわいい2年間でした。
私は、人生を見直しました。
今までは、いつ死んでも後悔しない人生を送ろうとしていました。
思い起こすと、プロレスが私の半生でした。
人生全てがプロレスかと言うとそれはそうでもないのですが。
それでも職業になってからというもの、
プロレスに捧げた人生はとても愛おしいものでした。
プロレスは特殊な世界です。
世の中からは「予定調和」呼ばわりされ、
業界の中でも今までにないプロレスは認められにくい。
極めて排他的な世界です。
だから、私は権威から距離を取りました。
面白い、けれども認めない。
そんなプロレスを目指しました。
当時、数としては多くはないけれど、
それでも私の表現したいものを楽しんでくれる人を喜ばせよう。
いつか「昔から好きだった」って胸張って言わせてあげるようにしよう。
そう思って戦ってきました。
それが、キャリアが浅い頃の、私にとってのハクでした。
ハクが喜んでくれるなら、何でもする。
世の中からなんと言われても、私がハクを守る。
ハクは今2歳半だから、
ハクが生まれる20年~10年前の話です。
少しだけ時は過ぎます。
プロレスの中でいくつも出会いがあり、別れがありました。
そして、私は中堅になりました。
業界でも「まあいてもいいか」くらいの存在になりました。
後輩がいっぱいできました。
先輩がどんどん抜けていきます。
でも、ハクは変わりません。
ずっとかわいいです。
長く一緒にいると、お互いすれ違いがあったり、悲しい思いをさせたり、寂しくさせたりする時も生まれてきます。
そんな時を通して、ハクはずいぶん大きくなりました。
小さいままかなって思っていたけど、思った以上に大きくなりました。
毛は生え変わります。
怪我だってすることもある。
散歩中、逃げ出したこともあります。
一瞬、私がいることでハクにとって良くないんじゃないか、という思いが頭をよぎることもありました。
普通の家にいた方がハクにとっていいんじゃないか。
でも、ハクはかわいいんです。
私がハクと一緒にいたいんです。
ハクは、私を勇気づけてくれます。
私は外に出た時に嫌われても、否定されても。
ただ私でい続けました。
家に帰るとハクが待ってくれるから。
私が外に働きに出て帰ってきた時、ハクが喜んでくれるから。
そのおかげかどうかはわからないけれど、そして絶対に私一人の力ではないけれど。
外に出てエサ代を稼ぐ人、家で守る人。
どちらもいて、ハクはどんどん大きくなりました。
ハクが生まれる10年くらい前のことです。
もう少し時間が経ち、ハクの成長は止まりました。
元気でいればそれでいい、と思っていたのに。
生きていると欲が出てきます。
芸をしてほしいだとか、急に家で走り回るのはやめて欲しいだとか。
ハクはハクなだけなのに。
でも、ハクはかわいいです。
この頃に気づきました。
私がハクを守ってきたんじゃなく、私がハクを育てたんじゃなく。
私がハクに助けられてきたんだ、ということに。
公平に言えば。
ハクは私を慕ってくれて、確かに育てた一面はあります。
だけど、もう今となっては私はハクなしでは生きていけないんです。
途中で飼っている犬を手放さなければならない人もいます。
それは、どうしようもない事情があることもある。
私だって、何か事故があればハクを手放さなきゃいけないことだってあるかもしれない。
私の都合じゃなくても、ハクの方が私を見限って家出してしまうかもしれない。
未来はわからない。
でも、確かに私はハクを守って育てたけど、
私もハクに生きる原動力を与えてもらってたんです。
そうして2年前。
このあたりでハクは生まれ、ウチにやってきました。
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