くる、夏
夏が来ます
はじめてかもしれません。
こんなにも母を思い出す夏は…
母は夏生まれでした。
そして
去年の夏、母は静かに眠りました。
今まで、なんてこともない暑苦しい夏が、うっとおしい熊本の夏が、
こんなにも寒い。
母は夏生まれには見えないほど物静かな人でした。爽やかとは縁遠い。
ずっと昔から、冬の押し入れの中みたいな人だなと。
しかし、今なら夏の人だということがわかります。夏の花。
ヒマワリ、サザンカ、朝顔…etc.
たくましい花が育つための大地。
とても我慢強い人だったと。
肌の白い母の顔に、瞳に、映る花火がとても美しかったことは一生忘れないでしょう。
炎天下の山鹿の町で、
楽しそうに話しながら隣を歩く母の姿を一生忘れないでしょう。
もう母の夏はこない。
熊本の静かな夏がきます。
母の大好きな夏が…