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「本当の自分」って何? “自分らしく生きる”がしっくりこない時に乗り越えるヒント

自分らしさ、という言葉を耳にすると、どうもひっかかりを覚える。

「自分らしく生きることにしました」
「自分らしく生きよう」

といったフレーズが世の中を飛び交っているが、では今までの自分はいったい何だったのか、と思ってしまうのだ。
忖度している自分も、遠慮している自分も、謙遜している自分も、それは紛れもなく自分自身の判断や意志に基づいて行動している姿ではないだろうか。
どんな自分であれ、結局は「自分」という存在が延々とつながっていて、いまの自分もその延長にある。

 「自分らしく」なる前の自分は、本当の自分ではなかった――
そんな言葉を耳にすると、どうにも自分を切り捨てるような言い方だと感じる。
過去をまるごと否定してしまえば、今の自分や未来の自分さえ、その根底から揺らいでしまうのではないだろうか。


本当の”ような”自分は、果たして本物なのか


 もちろん、嫌な自分と対峙するのはときにしんどい。だからこそ、過去の自分を「本当の自分じゃなかった」と割り切り、新しい自分へと生まれ変わりたい気持ちもわかる。

 だが、それは「内省」を放棄しているのではないだろうか。見たくない過去を無理に振り返る必要はないとしても、そこに引っかかりがある限り、その影は未来にまでついて回る。

 内省を経てこそ、本当に抱えている問題に気づくことができ、そこで初めて未来を変える一歩が踏み出せるのだと思う。

 YouTubeで「好きなことで生きていく」という言葉がもてはやされ始めた時期、多くの人が自分らしく生きることに憧れを抱くようになった。私も例外ではなく、その一人であった。

 好きなことだけをし続け、輝いているようにみえる人たち。彼らの虚像を追いかけて、本当の自分というのは、我慢せず大好きなことだけをし続けている自分なのだという思考に行き着いた。

 私には執筆や教育、SNS発信など好きなことがいくつもあったため、それらを仕事にして少しずつ形にしていくことに喜びやワクワクを感じてきた。前に進む中で、いつの間にか視界は広がり続け、その道のプロや、医師として働きながらも起業している人々とも多くであった。まさに、自分らしく生きている"ようにみえる"その姿を目にするたびに、新たな刺激を受けた。

 なかでも、起業という自分の好きな事業を成立した形で、臨床以外の道を本業として成立させている先輩医師たちには強く憧れたのである。

本当に好きなことと、憧れはときに混同される

 そうした憧れが高じて「何としても起業したい」と考えるあまり、自分の好きなことよりも「起業をすること」自体が目的化してしまい、思考が迷走することもあった。

 自分の弱さを痛感し、本当に何をしたいのかを見つめ直すなかで、逆に迷いが深まる経験も数多くあった。

現状の環境、仕事、キャリア、家族、夢、あらゆる自分を取り巻く事象が複雑に絡み合う未来について―

ひたすら思考をノートに書き綴るという行為を通じて
「自分は何を望んでいるのか」
「何年後にどうなりたいのか」
を問い続けた。

理想を描いては、実際に動くかどうか決めきれないこともある。それでも行ったり来たりを繰り返すうちに、頭の中でぐるぐるしていた思考が少しずつ整理されていくのを感じたのだ。

ひとりぼっちの内省を続けた、その先に


 一人だけで考えていると、堂々巡りに陥ることがある。そんなときは、自分の弱さを誰かに打ち明けるようにしている。

「本当は怖い」
「全然前に進めていない」

と口にするのは、意外と勇気がいる。

しかし「弱い自分」も「何もできない自分」も、
また「強がっている自分」や「前に進むと言いつつ動けていない自分」も、どれも否定できない自分の一部なのだ。
そこを認められたときこそ、

「弱いなら弱いなりでいい」
「何もできないなら勉強してみよう」
「前に進みたいなら一歩だけ踏み出そう」

というように、行動を変えていく余地が生まれるのではないだろうか。

 自分らしさとは、生き生きとした光の当たる部分だけを切り取って手に入れるものではない。嫌な部分やうしろめたさ、矛盾や傷跡も含めてすべて「自分」なのだと受け止める。

 それができたとき、ようやくもう一歩先の未来を望めるようになるのではないだろうか。
過去の自分を否定するのではなく、そこに宿る感情や思考の痕跡を活かしながら、新しい一歩を踏み出す―
それこそが「自分らしく生きる」真のプロセスだと思う。

キャリアプランに迷う若手であっても、自分の中のさまざまな面を認めながら進んでいけば、きっと新たな道や可能性が開けるのではないだろうか?

自分だけのキャリアプランを探すために

 結局、自分のキャリアプランを明確にするには、いろいろな人と会って、話を聞くしかないのだろう。

 少し先を歩いている先輩医師の体験談を聞き、それを自分の中で反芻し、腑に落ちるまで考え抜く。机にかじりついて考えていては得られないアイデアが、人との対話を通じて突然ひらめくこともある。

 もし「これからどう生きたいか」「医師としてどんな未来を描いているのか」に迷いがあるなら、まずは色んな先輩と話してみる。新しい知見や面白い視点との出会いが、自分の人生設計を大きく前進させる一歩になるはずだ。私自身、勉強会やオンラインイベント、学会などで数々の先輩と出会い、そのたびに視野が広がってきたと実感している。

 もっとも、自分自身もまだ道半ばであり、挑戦を続ける身ではある。しかし今回、医師のキャリアプランについて語り合うオンラインイベントでお話をする機会を得た。この会では、診療科や年次の違いから見えてくる多様な働き方を深く掘り下げる予定だ。

 選択肢が増えた今こそ、いったん自分のキャリアを考え直す機会を持ってみるのはどうだろうか。一度立ち止まってみることで、思いがけない可能性や新たな方向性に気づくこともある。

もし、

「自分はこのままの働き方でいいのだろうか」
「もっとほかにやりたいことがあるのでは」

と少しでも感じているのなら、ぜひこのイベントをきっかけに自分のライフプランを見つめ直してみてほしい。

専門医試験を迎える頃合いは、一度立ち止まり、自分の人生を再定義するにはちょうどいい節目である。自分ならではのキャリアを、そこであらためて描き出してみてはどうだろうか。

イベントの概要と申し込み方法は、以下のURLから確認できます。
アーカイブ視聴もあるので、少しでも興味があれば数分で終わる申込みだけお済ませください▼

最後まで記事を読んでいただき本当にありがとうございます。
今後も医師、医療の視点から日々感じたことを心を込めて綴ります。
皆さんの毎日に彩りをもらたしたり、何か日常や生活について考えるきっかけになる記事を作って参りますので、もしよければスキ、フォローいただけると嬉しいです。犬のように懐いて喜びます。

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三谷雄己|綴る救急医
救急の現場を少しずつ知ったうえで、一般の方々との感覚のズレが少ない今だからこそかける文章を心がけて。 皆様のサポートは、多くの方々に届くような想いが書けるよう、自己研鑽にあてさせていただき記事として還元できたらと考えています。 共感いただけた方は何卒よろしくお願いいたします。