雑談 小さなお茶会教
旦那さんのことは「旦那さん」とか「あなた」とか呼んでいる。
旦那さんは私を「奥さん」とか「あなた」とか呼ぶ。
婚前に、かわりばんこに忘れ物をした時は二人とも呼びかける名前を持たずに「あ…あ…」と漏らしながらダッシュするしかなかった。
はっきり言って多分今も同じことが起きる。だって考えてみても欲しいんだけど外で「奥さん!」と聞こえたとして「我こそが奥さんぞ!」と反応できるだろうか。袁傪じゃあるまいし。
無理だろう。それに別に婚前だって「あなた~~!!」と呼びかければよかったはずだ。
単純に、瞬発的に大きい声を出す体を持たず体より先に頭が駆動する似た者同士なだけだ。
我が家に旦那さんの友達が遊びに来ると大抵私を何と呼んでいいやら困った様子を見せる。それが旦那さんや同居人が「奥さん」と呼んでるのを見るうちにみんな「奥さん」と呼びだす。
最初はニヤニヤしたりおずおずしたりしながら。徐々に何の感慨もなく。
ニヤニヤしながら発される「奥さん」にはおそらく人妻を意識しそれをごまかすような照れ隠しが含まれるがそれが30分もたてばなくなる。
私を「奥さん」と呼ぶのはもはや我が家内のコードになっている。家の中での私は「我こそが奥さんぞ!」という気持ちで満たされている。
そこで呼ばれる「奥さん」に性別役割分担の文脈とかは全然ない。私たち夫婦にとって「奥さん」といえば「ぷりん奥さん」だからだ。
「ぷりん奥さん」は猫十字社の「小さなお茶会」という漫画に出てくるお転婆でちょっと意地っ張りで最高にチャーミングな猫のことだ。
話は変わるがついこの間10年近く贔屓にしていたバンドが解散した。
解散の少し前、ツイッターで「信じる心だけが僕を宗教にする。」とボーカルがつぶやいていた。コンセプトが宗教団体でボーカルが教祖を名乗っていたのでそういう言い回しになるわけだけど、すごく腑に落ちた。
私は元々お転婆でも最高にチャーミングでもない、ガサツな割に神経質な心配性で頑固だ。旦那さんのほうがよっぽどぷりん奥さん的素養を持っていて、うらやましくて自己嫌悪に陥ったりする。旦那さんみたいにおしゃれな洋楽なんか聞きやしないしバンギャだしどうせどうせ。
でも「奥さん」と呼ばれればなんとなくできる範囲でぷりん奥さんを目指そうかなという気持ちになる。名づけの効能というのはおそろしい。
長々と書いたけどこんなの読んでる暇があったら小さなお茶会を読めという話でした。