映画レビュー/マリウポリの20日間
2022年2月、ロシアがウクライナ侵攻を開始した。カメラは、ウクライナ東部の都市マリウポリでの20日間、その凄惨な現実を映す。
私の家にはテレビがない。ニュースを見ることもなくて、戦争の映像を見ることもなかった。
街が包囲、封鎖され、ロシア軍は民間人を殺戮する。サッカーをしていた少年、民家、産婦人科や小児科病院を攻撃され、罪のない子供や妊婦までもが殺される。逃げ場なく爆撃音に怯えるしかない、悪夢のような日々が続く。誰も助けてはくれない、絶望。
そんな中で、人間性を失わず、人を助けよう、街を守ろうとするお医者さんや看護師さんたち、警察や消防、軍の人たちは本当にすごいと思った。すごいなんて簡単に言ってはいけないと思うけど、言葉が見つからない。
ロシア側は、この映像をフェイクだという。フェイクなんかであるものか。これは、ロシア政府の、ウクライナ人大量虐殺以外の何物でもない。攻撃を受けて亡くなった人々は、戦争に巻き込まれたんじゃない。攻撃対象として、標的にされたのだ。マリウポリで、なんの罪もない、平和に暮らしていた人々2万5千人以上が亡くなった。
この映像を撮影したウクライナ人ジャーナリストは、他のジャーナリストたちが皆街を後にする中、陥落するギリギリまで街に残って、命がけで撮影を続けた。この映像がなければ、「平和」な私たちは、この残虐なロシアの非道を信じられなかったと思う。映像や写真の意味、価値というものを考えさせられた。
今、わたしも含めかりそめの平和に生きている人たち全員が見るべき現実。絶対に起きては、起こしてはいけないものが、戦争。戦争を始めるのは権力者だけれど、死ぬのはいつも権力を持たない普通の人たち。そんな理不尽なことがこの現代社会において許されるはずがない。殺人は犯罪、そんな常識の通じない人がこの世にいる。私たちはどうしたらいいか。平和に生きている私たちこそ、戦わなければならないと思った。
2024.06.19