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「ソーシャル→フィジカルディスタンス」と「ペアダンス」
この1ヶ月ほどですっかり日常に馴染む言葉となった「ソーシャルディスタンス」。最近では「フィジカルディスタンス」という言葉を使う動きも起きています。
3月20日の世界保健機関(WHO)の会見では「(フィジカルディスタンシングと)あえて言い換えているのは、人と人のつながりは引き続き維持してほしいから」と専門家が述べています。
「ソーシャルディスタンス」は「社会的距離」
「フィジカルディスタンス」は「物理的距離」
(ちなみにディスタンスは「距離」、ディスタンシングは「距離をとること」)
確かに、新型コロナウィルスの感染防止で求められるのは「物理的距離」を2メートル以上とることであって、社会的に人との繋がりを疎遠にするという意味ではありません。なので、意味的には「フィジカルディスタンス」の方が断然しっくりきます。
“オンライン飲み会”や“オンラインランチ”が流行り始めている昨今、ソーシャルディスタンシングが推進されたことで、むしろ多くの人が以前よりも積極的に社会的、心理的な繋がりを築こうとしているようにも見えます。
「ソーシャルディスタンス」という言葉があまりにも浸透しているので、今から一般的に「フィジカルディスタンス」が使われるようになるかどうかはわかりませんが、少なくとも意味の違いと真意を心に留めておこうと思います。
さて、ここで悩ましいのは、アルゼンチンタンゴをはじめ、ペアダンスにおいては「ソーシャルディスタンシング」も「フィジカルディスタンシング」も、とても難しい...ということです。
2人で組んで踊る以上、相手と2メートルなんて距離は取れません。
リードとフォロー、お互いを感じながら踊る以上、相手との心の繋がりがなければ成立しません。
(決して恋愛感情という意味ではありません。少なくとも踊っている曲の間、共に同じ音楽をステップで奏でるためには、相手を知ろうとし、受け入れるために、いろいろな感覚を研ぎ澄ませて向き合うことがとても大切、という意味の“繋がり”です。)
この2ヶ月で、世の中はすっかり変わりました。
キスやハグで挨拶をしていた国から当たり前の挨拶がなくなり、握手で信頼や親しみを確認し合っていた私たちから当たり前の触れ合いが消えてしまいました。
これを文字にするのは心が震えるくらい怖いのですが...
もしこのまま世界からハグ文化が消えてしまったら...
もしこのまま屈託無く誰とでも握手できる日が戻ってこなかったら...
タンゴをはじめいろいろなペアダンスは、世の中に存在しなくなってしまうのでしょうか...?
少し前は「そんな大袈裟な」と笑い飛ばすことができたことも、今は神妙に想像できてしまいます。
現に、緊急事態宣言発令から2週間の今、笑顔で何の気兼ねもなくペアダンスを楽しむことが手放しで歓迎される空気などありません。
今は「ソーシャル/フィジカルディスタンシング」を一人一人が実践することが重要です。
新型コロナウィルスは、いずれは収束するはずです。その日のために、今世界中の人が「Stay Home」「ソーシャル/フィジカルディスタンシング」と、これまで経験したことのない毎日を手探りで粛々と送っているわけです。
ただ、その収束が1年後や2年後になる場合のことも想定しておく必要があると思うのです。
やっと誰もが笑顔で安全にハグや握手をできるようになるであろう記念すべきその日に、ペアダンスの楽しさや魅力を多くの人が忘れてしまっているようなことがないように。
今、この自粛期間にできることは何なのか...やるべきことは何なのか...
今、すごく大切で難しい課題を突きつけられている気がします。
そしてこれは、タンゴの、ペアダンスの本質をとことん考えることにもなるのだと思います。
〈参照〉 4/19(日) 11:00配信 朝日新聞デジタル
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200419-00000014-asahi-sctch
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