2022年12月の日記~「理解」と「解釈」の間には「これまでの評価」が幅を利かせがちだという話~
12月*日
去年は登壇者として参加した「どう?就活」(せたがや文化財団主催)というイベントに、今年は一般人として参加した。このイベントが楽しいのは、登壇者の話はもちろんなのだが、頻回にメンバーを変えてグループでの対話が行われることだ。
ファシリテーターは西村佳哲さん。
私は初日だけの参加だったが(イベントは二日間ある)、それでも10人以上の、「年齢も仕事もバラバラ」な、でも「仕事や就職・転職に関心が高い」はじめての人と話をした。「自己紹介はしない」がルールなので、余程のことがない限り「二度と会わない」ことが約束されている。だからこそ「思い切って言ってみた」的なトピックを誰かが話し出したりして、盛り上がる。
多くの場合「聞こえてくる話」と「解釈」の間には、聞き手の知識や事前に知っている情報が挟まってしまう。「あいつが言うのだから間違いない」や「目は真剣だったが本当とは思えない」などと解釈するのは、そこで話されたことがトリガーとなって過去を評価しているに過ぎない。そしてそれは、多くの会話において、普通のことだと思う。だけど世の中にはそうでない会話もあって、そのことを体感できるのは、このイベントの素敵なところだと私は思う。
12月*日
刑務所や少年院といった矯正施設からの出所者の社会定着を支援する地域生活定着支援センターの初任者向けオンライン講座の講師を担当した。2020年から年に1度開講しているので、3回目になる。テーマは「広報・啓発」だ。
広報啓発は、組織運営において必要だと分かっていながらも後手に回りやすい活動の、エースで4番だと私は思う。広報啓発のためのブログを1本書く時間があれば、目の前で起こっている問題の解消に奔走したいと、人は思ってしまう。それは決して間違っていないが、その判断・行動を続けている限り、サポーターが増えるスピードは遅く、助けられる人の数は徐々にしか増えない。より多くの人の助けになりたいと思うのであれば、広報啓発活動を通じて支援者ネットワークを広げるのが最良の打ち手なのだ。
ただ、定着支援センターの場合、センターの存在意義を世の中に認識してもらうところから始めなければならないため、広報啓発活動の効果実感が持ちにくい。結果的に、後回しになってしまう。今日こそはやろうと思っていた部屋の片づけを、つい後回しにしてしまい、その罪悪感からいつの間にか「やること」リストから削除してしまう、そんな位置づけになりがちな広報啓発活動。その第一歩は、ツイッターでつぶやくことでも、noteで日記を書くことでもなく、自分の仕事の面白さを家族や友達に伝えることだと私は思う。
12月*日
「それって!? 実際どうなの課」というテレビ番組の【家の不用品、全部売ったらいくらになる?】というコーナーを気に入っている。「なんでも鑑定団」の親戚みたいな番組なのだが、自宅で不要になったものをメルカリやヤフオクで売り捌くと幾らになるかを検証する。「なんでも欲しい人がいるのだなあ」とか「フリマみたいで楽しいなあ」とか思っていたら、なんとなくやってみたくなってきて、奥さんと二人で「メルカリ教室」というオンライン講座を受けた。
教室は連日のように開講されていて「ひとつ出品することをゴールにしますので、売りたいものを用意して受講ください」と説明がある。私は買ったが履かなかったスキーブーツ、奥さんは買ったが履かなかったスカートを用意して、二人で仲良く受講した。
受講前に「多分ひとりだったらキャンセルしてたよな」と言い合った。それくらい、時間が近づくと面倒になってきたのだが、講座の内容はよく出来ていて、説明書を読むよりも断然ラクに出品してみることができた。
でも、本当に売れると発送が面倒な気もしてきて、悩んだ末に売れなさそうな値段に設定した。自分でも何がしたいのかよく分からないが、新しいおもちゃを手に入れた気分だ。
12月*日
コロナをきっかけに始めた「団士郎さんと家族を学ぼう」というオンライン講座が好評だ。隔週1回で90分、全6回、3か月を1タームとして開催を重ねている。毎回、50人の定員が満員で、家族を「学ぶべき対象」と見ている人が増えていることを実感する。
この日は学校の先生を対象にした講座の最終回(6回目)だった。小中高を問わず、学校の先生が家族に関心を向けざるを得ない出来事が増えている。例えば不登校。これだけ数がいれば、自分のクラスに何人かいる景色が普通であり、大半の先生たちは「来ないのなら放っておこう」とは思わない。なんとかしてあげたいと思う。そのような状況で考えるべき支援は、もはや不登校児へのそれではなく、対象家族への介入になる。しかし、家族の適切な扱い方や過介入になり過ぎない程度が分からない。そこで、「家族を学ぶべき」となる。
家族を学ぶ勉強会には、看護師さんを始めとした医療関係者や、ケアマネさんを始めとした福祉関係者の参加も多い。例えばホスピス病棟の看護師さんは、治らないことを前提に、どう最期を心地よく過ごしてもらうかが命題になるが、穏やかな看取りにおいて、家族の関係性は大きな鍵になる。独居老人のケアをしているようなケアマネさんも同様に、家族・親族との関係を無視できる仕事ではない。長寿社会は、家族との向き合い方を専門職者のみならず、あらゆる人に問い直している。