2023年9月の日記~「世継ぎは早いに限ると言い張っていたのに49歳で社長に復帰」号~
9月*日
新潟県加茂市にある小柳建設さんのオフィスを訪ねた。
小柳建設は、建築業界の革命児的に取り上げられることが多い会社なのだが、タクシーで社屋前に到着した瞬間から、訪ねた4人で驚嘆した。オフィスが素敵過ぎた。
3代目の社長で改革の牽引者でもある小柳さんに色々な話を聞いたけれど、特に印象に残ったのは、「119億円あった売上を、生産性を上げるために65億円まで下げた」という話。「でも、利益額は一緒か伸ばしたので、仕事が楽になって収入は増えたんです」と。
成功体験は、年齢を問わず喜びを与えてくれるんだなあと実感した。
改革は、「残業代で稼ぐ、という発想を止めませんか」という言葉かけから始めたそうだから、建築業界の慣習も踏まえると一筋縄では行かなかっただろうけれど、32歳で社長を引き継げたことも、原動力のひとつであっただろうし、32歳の青年社長を支えたのが、ひいじいちゃん(初代)が掲げた「経営理念」だったというのも、綺麗に聞こえ過ぎるかもしれないけれど、リアリティがあった。そこにリアルに感じられたのは、そこで働く人たちの姿をこの目で見たからだけど。
若い世代に大胆に移譲する。
誰にでもできる、可能性に満ち溢れた行動なんだけれど、なんだかんだ言って難しいし、なされない。国会議員の皆さんも、ぜひ見学に行ってほしい。
9月*日
2012年に産声をあげたアイドルグループ「ゆるめるモ!」。
当初はある目的の「手段」として始まったのだけれど、どんどんと応援してくれるファンの方が増えて、秋葉原の地下ステージから始まったライブ会場は、恵比寿リキッドルーム、赤坂ブリッツ(もうない)、Zepp東京と、どんどん大きくなっていった。
その間に11人のメンバーが卒業し、現在は5人組。その最新アルバムを引っさげたライブツアーのファイナルに、Zepp新宿に行った。
オリジナルメンバーはもう誰も残っておらず。今の5人は、ゆるめるモ!の歌に救われ、「歌い継ぎたい!」と志願してオーディションを受けた子たち。つまり、かつては客席にいた子たちだ。
ファンの顔ぶれも、随分と変わっている。推しが卒業すると、一区切りするファンも多いし、そういうものだと思う。でも、結成から見続けている立場からすると、そこに変わらぬ何かを感じる部分もある。5人とファンの方々の躍動に過大な元気をもらって帰ってきました。
9月*日
アソブロックの現経営陣である3人から「話がある」と言われて場を持った。そこで「今期末(9月)で総辞職する意向である」ことを告げられた。
それ自体は「青天の霹靂」ではなくて、事前に話もしていたので、想定の範囲内ではあるのだが、それでもやはり残念である。
2年という時間が彼・彼女らの中に人生の糧や仕事の糧になる何かを残してくれていれば本望だけれど、そればかりは本人にしか分からない。もしあったとしても、今は悔しい部分もあるだろうから、それに気が付くのは、もっとずっと先なのかもしれない。
政治の世界なら、やれ解散総選挙だと盛り上がるところだけれど、あいにく誰もが狙う総理大臣のようなポストではないので、10月1日から、晴れて三代目アソブロック社長に就任することになった。
当面、J Soul Brothersをライバルに頑張ることを決めた。
9月*日
メインバンクのとりなしで、国際税理士法人、というところの人たちと面談することになった。なんでも33の国と地域に事務所があるらしく、FBI調査官みたいな人が出てきたらどうしようかと恐れていたのだが、普通の気のいいお兄さんとお姉さんたちだった。
相談したかったのは、マレーシアにある現地法人の閉鎖について。
コロナ前に友人から譲り受けたのだが、コロナの影響で思ったような営業活動ができず、今後も活用イメージができないので閉鎖しようと思ったのだが、肝心要の現地コーディネーターと連絡が付かなくなり途方に暮れていた。
という話をたまたま訪問してきた銀行の担当にしたところ、専門のセクションがあるので聞いてみます、ということからの今日であった。
早速、頼りになりそうな4人に身の上を話す。解決してくれそうな雰囲気が満々で、あとは予算だな、なんて思っていたら、第一声が、「団さん、残念ながら私たちではお手伝いできません」だった。なんでもマレーシアは、半島側とボルネオ側で違う国くらい税法が違うらしく、私の法人はボルネオ側に本社を置くのでクアラルンプールに事務所がある彼らの会社では対応不可、ということらしかった。
現地法人を所有しながら、そんなことも知らなかったのかと自分自身に呆れながら、スタートに逆戻りである。FBI捜査官の皆さんには、大変申し訳ことをしてしまった。
9月*日
周回遅れで「君たちはどう生きるか」を観に行った。
予告に続き本編が始まり5分もしない頃だろうか、後部座席の人の嗚咽を漏らし始めた。まだ物語は何も始まっていない。それでも、嗚咽は加速し、涙と鼻水が止まらない。聞き耳を立ててみると、どうやら女性のようだ。ちらっと後ろを振り返ってみたが、真っ暗なのでよく見えない。本編そっちのけで、なぜ泣いているのかを色々考えてしまう。
まず思ったのは、「何回も観ているファンで、冒頭シーンの意味を知っているからこそ、思い出し嗚咽が来てしまった」パターン。ただ、それにしても激し過ぎる。すると、プランBを思い付いた。「もしかすると、隣席から嫌がらせをされているのではないか。その恐怖で身体が動かなくて、嗚咽されているのではないか」という説。
もしそうであれば一大事である。益々気になってスクリーンに集中できない。まさに「君たちはどう生きるのか」である。
あまりに気になるので、エイヤで思い切って振り返った。すると、程なく嗚咽の主が判明し、隣席は空席であることが確認できた。どうやら、プランBではない。と同時に、スクリーンの光に照らされて見えた周囲の人も、結構嗚咽主さんを気にしていることが分かった。
それから20分ほどもした頃だろうか、その嗚咽さんは劇場を出て行き、二度と帰ってくることはなかった。
9月*日
有楽町にある「ふるさと回帰支援センターに」に出掛けた。
このセンターは44都道府県への移住を考えている人に対しての情報提供&相談ステーションで、都道府県がそれぞれブースを構え、毎日がお祭りのような雰囲気である(東京都は多摩島しょ地域のブース)。
仕事の絡みもあるが、プライベートでも時々来る。各都道府県は言うに及ばず、市町村単位のパンフレットやチラシ、写真も充実していて、それらを眺めていると、人は自由なんだと実感できる。そこが気に入っている。
同じ理由でたまに出掛けるのがバスタ新宿。羽田空港も嫌いじゃないけれど、あそこは「旅」という物語がひとつしかないように感じられて、センターやバスタに比べると場所に深みがない。
センターに来る人を眺めたり、漏れ聞こえてくる相談者の声に耳を傾けていたりすると、色々なことを想像させられる。教育移住を考えている人、東京を離れて人生をやり直そうと考えている人、本当は帰りたくないが帰らざるを得ない事情を相談員に打ち明けている人。それぞれ事情は込み入っていそうだけれど、場所が「あなたはどこに住んでもいいのだ」とエールを送っている。
バスタもいい。便名だけが陽気な、会津に向かうバスに乗り込む人々。利便を考えたら新幹線に乗る方が圧倒的に高いのに、敢えてバスな理由がそれぞれにあるはずで、そこが東京駅や羽田空港にはない、独特の雰囲気を醸し出している。「もう無理」となったらここに来よう。目を瞑って、どれでもいいから乗ればいい。そして到着した地で、また新たに始めればいい。バスタ新宿もまた、励ましに満ちているとぼくは思うのであります。