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2021年11月の日記~社長を辞めて色々分かりました号~

11月*日
 仕事柄、たくさんのインタビューをしてきた。歳を取るに従ってインタビューされる機会も増えたが、インタビュー上手な人は、質問が手短であることが共通している。数少ない質問で相手を考えさせて「初出し」の情報を引き出す。逆に、質問がやたらと長い人や、1回で質問を重ねてしまい結局何が聞きたいのかよく分からないような人はダメだ。そして、残念ながら私も含めて多くのインタビュアーは力不足なことが多い。
 そんな中、長年の友人でもあるK池さんは、いつも聞き上手だと思う。そんな彼に誘われてインターネットラジオに出演した。相変わらずの聞き上手。テーマは【社長退任の裏事情!?】余計なことはしゃべってないはずだけど。
https://www.asoblock.net/contents/michinaru-episodes-dan

11月*日
 アパレル雑貨ブランドのサルビアが事務局を担当し「コミューン」という展示会を年に一度、開催している。毎年3月、東京でアパレル関係の展示会開催が重なる時期に、いくつかのメーカーさんに声をかけ小さな展示会を開催する。足掛け6年になる。去年はコロナでかなり迷ったが、オンラインも活用して開催した。その開催を「もう止めようか」という話になっていた。準備にかかるカロリーが高いことと、十分な集客が見込めないことが要因だ。集客といっても、集めたいのは一般の方ではなく、お店や百貨店さんのバイヤーさん。数が少ないと、出展してくれたメーカーさんに申し訳がなく、精神的に追い詰められるという。
 サルビアのメンバーからそんな相談を受けて「止めるのはいいけれど、出てくれるメーカーさんと一緒に創ってきた6年間だから、一度みんなで話をする機会を持ちたい」と言って、時間の都合をつけてくれた方と、ZOOMで色々と話をした。結果「コミューン」への期待が、それぞれに少しずつ違うことが分かってきて、「集客」はそれほど重要ではないことが分かった。
こういうことってよくあることだと思う。時間の経過とともに、始めた当初の想いは薄れ、世俗的な価値観に照らして良し悪しを判断してしまう。「コミューン」で言えば、「展示会とは商談機会の創出が価値であり、来場者数が成功の指標となる」という価値観だ。
 そんなときは一度立ち止まって、可能な限り全員で話すことが大切だと思う。話し合いの結果止めることになろうが、続けることになろうが、それはどちらでもいい。その場を持てるかどうかが、その後の関係に大きく影響する。

11月*日
 アソブロックの社長を退任して分かったことのひとつに、自分が望んでいたわけではないのだけれど、「意外と気を遣われていた」ということがある。
 例えば「こんなこと、まだ計画が粗い段階で団に声をかけるのは悪い」と、スタート時のたくらみに誘われなかったケースがあった。「十分な謝金を用意できないから、声をかけるのは止めておこう」と場に呼んでくれないこともあった。退任後に、打ち明け話のようにそれらの話を聞かされると、なるほど自分がコントロールできないところで、自分の置かれどころというのは決まっていく面があるのだと思った。
 若さの特権のひとつは、まだ世俗的なラベルが何も貼られていないことにある。それに伴う不安や焦りも、すべては財産だと思う。せっかく社長を辞めたのだから、もしかしたら貼られているかもしれないラベルをどんどん外して行きたい。アンラーニングというのは、大きな意味で言えば、そういうことなのかもしれない。

11月*日
 きょうとNPOセンターの常務理事になって以来、NPOセクターの人と話をすることが増えた。しかし一方で、NPOとは何かがいまひとつ理解できないでもいた。一般社団、公益社団、NPO、合同会社など、株式会社以外にも法人形態はたくさんある。それなりにそれぞれの違いも理解してきたつもりだ。合同会社を設立したときに、NPO設立の道を検討したこともあるが、付き合いの長い税理士に「NPOと株式の違いは、税務的に言えば寄付の有無だけです。寄付収入を期待しないのであれば、かかる時間と手間を考えるとNPOにするメリットはありません」とぶった切られ、そんなものかなあとも思った。
 今日、同じ話をきょうとNPOセンターの理事仲間としているときに「運動から始まるのがNPOだ」と言われてなるほどと思った。株式会社が事業と人材で成り立つものだとすれば、NPOは運動と寄付で成り立つもの、いずれも経営は必要だが、その資源が違うのだという。そういえばNPOの場合は、「事業型NPO」とわざわざ呼ぶ。一方で、「非事業型株式会社」などとは呼ばない。代表を筆頭に、全員がボランティアで運動をしている団体も、NPOなのだ。なるほど、はじめて腹落ちした。

11月*日
 9月から新しく経営に関わる「ねこから目線」(猫の殺処分をゼロにするための会社)でビジネスコンテストに出場した。フランチャイズ展開を支援する会社が主催するもので、書類審査を通過し、最終プレゼンテーションの5社に選ばれた。審査員は誰もが知るフランチャイズ店舗のオーナーを中心とした5人。持ち時間は1社10分で、その後、15分の質疑が行われた。プレゼンテーションを10分に合わせるのが意外と難しく、社長のK池は資料を作り直してはテストを繰り返し、ぼくたちもコメントや指摘を寄せ、結果的に優勝間違いないんじゃないかというくらい盛り上がる内容になった。
 かくして本番当日、控室に集められた5社は、最初は様子を伺い合う感じだったが、ある方が「何をされているのですか?」と質問したのをきっかけに、それぞれが自己紹介をし合う流れになった。うちは「猫」なので被りはないと思っていたが、その他4社も健康器具、音楽系マッチングサービス、ラーメン店、IoT建材とバラバラ。我らは2番手で精一杯のプレゼンをした。
結果は採点表を見る限り接戦だったが4位(1人100点満点で採点、合計点の最上位者が優勝)。かれこれ20年会社を経営をしてきたがこういう機会ははじめてだったので、とても面白かったが予想以上に悔しくもあった。ちなみに、5人の審査員のうち3人は猫に1位の採点をくれていた。平均順位で競う大会なら優勝だったのに。

11月*日
 アソブロックの社長を辞めて以来、アソブロックとは何だったのかを直接ぼくに評論してくれる人が増えた。これを聞いているのが楽しい。当事者が一番分かっているようでいて、実は分からないことの方が多い。
 その中で整理できた視座として腹落ちしたのが、先の話に被るけれど、事業を持たないアソブロックの中心にあったのは「運動」だったということだ。所属メンバーからの「寄付」を原資に、「人の成長支援プラットホームであり続ける」という「運動」を続けてきたのだと思う。
 社長をしているとき、「事業を持たないってホムペに書いてますけど、そんなこと可能なんですか?」とよく聞かれた。結論として、事業がなくても、運動と寄付の二本柱で株式会社も存続することができる。大事なのは、その運動(ビジョン)に共感性が高いかどうかだろう。ただ、個人が主体となる市民運動と違い、株式会社を筆頭としたあらゆる法人の場合「規模拡大」を狙うには「事業」が不可欠だ。一方で「事業」を持つとオペレーショナルワークが増え、私が目指した「人の成長支援プラットホーム」機能が減っていく。ここが難しさだったなと、改めて思う。