2024年10月の日記~「相談に来たのに、相談をしない中学生」号~
10月*日
グループワークで一緒になった20代の男性から「団さんは理想の1日を過ごしたことがありますか?」と聞かれた。「理想の1日を過ごしてみたいんです。でも、どういう1日が理想なのかと思って。皆さんはどうですか?」と彼は周りにも問いを投げた。
このテーマでみんなで話したのが、面白かった。
理想の1日は「理想からほど遠い1日があるから生まれるものだ」という人がいれば「結局早起きだ」と言い切る人もいる。かと思えば「朝が充実し過ぎると理想が息切れしますよね」という意見もあった。
理想が息切れするってなんだ(笑。
「そんなものは無理だ」派も結構いて。私は遂にそれらしい答えに出会うことはできなかった。皆さんは、理想の1日を過ごしたことがありますか?
10月*日
「家族システム論」を父でもある団士郎さんから学び続けて約20年。この影響をぼくは間違いなく受けていて、自身の会社経営にも応用して使っている。そんな話をRHRBの仲間である岩崎さん、西村さん、渡辺くんたちにしたところ、大変面白がってくれて、そのテーマでオープンセミナーをやろう!となった。
家族も会社も、大きさに違いはあるが、人が立つ「舞台」という点は共通している。そして、どんな課題や問題も、すべて舞台の上で起こる。起こった課題や問題の原因に焦点を当て、解決していこうと考えるのが因果論。対して、システム論は「舞台を整え直すことで解決に導いていく」と考える。
家族の場合は、舞台を見立てる要素として「境界」「サブシステム」「パワー」というキーワードがある。ただ、会社の場合は、それだけでは不十分だと感じていた。
それは、家族が宿命論的なものなのに対し、会社は向目的性があるから。そのため、会社の場合は「境界」「サブシステム」「パワー」という動的構造要件加え「要素」「つながり」「目的」という静的構成要件の掛け算が必要なのではないか、と見ている。
なかなかいい線を行っている気がしている。もしご興味があれば、是非聞きに来てください。
10月*日
「グループ若手会」というコミュニティがある。
これは、私が名ばかり社長をつとめる会社の若手たちが集まる、主に「飲み会」のこと。そのゲストに来てほしいと言われて、30分ほど遅れで駆け付けた。若手会にとってゲストはスポンサーと同義で、先月は安井がゲストに呼ばれたと言っていた。
なので、お会計の時にいればいいやと思って、若干意図的に30分ほど遅れたのだが、到着すると私のサプライズ誕生日会だった。
こういうのは照れる。慣れていない。どう振る舞っていいかが分からない。「とりあえず、ありがとう」なんて最低な御礼の言い方だと分かっているのに、気が付いたら「とりあえず、ありがとう」と言っていた。
ああ、後悔。
「愛しているぜ、ベイベー!」って言えば良かった。
10月*日
知り合いのスクールカウンセラーが、自身の悩みごととして「相談に来たのに、相談をしない中学生」の話をしてくれた。それを彼女は「私への信頼感の欠如」だと内省していたが、ぼくはそれだけでもない気がした。
現に、彼女は「会って顔を見ただけでちょっと元気になれました。先生ありがとう!」と感謝をされている。もっとも、彼女にしてみたら「私はお地蔵さんじゃない!」と言いたい気持ちがあるようだが、ここに横たわるのが「快適主義」というものだと思う。
快適主義とは、批評を嫌う、重めのドラマは見ない、酷い事件のニュースは観ない、みたいなスタンスのことを呼ぶそうなのだが、これもまた個人主義の成れの果てだと思う。
この主義が生み出してしまう負の面は、他人に不快を与えることを極端に避けようとしてしまうこと。そういえば、以前にボーイスカウトのリーダーをしている知り合いが「高校生に依頼をすると、OKなときはすぐ返事が来るのに、NGのときはなかなか返事が来ない」という話をしてくれた。場合によっては「ダメなんだよね?」と確認をしてはじめて、「はいスミマセン、返信が遅れて」と返事が来るらしい。
これも、もしかすると快適主義の表出かもしれない。他人に負担をかけることや不快にさせることを究極にまで回避したいという欲望の現れだとぼくは思う。
行けるときはすぐ返事をするけれど、ダメなときは様子を見て「適したタイミングで返事をしようとする」ような振る舞いは、自身に抑圧的であることを強いてしまっている面があり、やり過ぎは危ういと思う。
10月*日
アソブロックで日本仕事百貨に求人を出した。約10年振り。呼びかけに対して、年齢もキャリアも様々な40名の方から応募をいただいた。
可能であればすべての方をお迎えしたいが、体力・包容力・お金、すべての面から全員を採用するわけにはいかない。そんな中でも、成長支援の観点からできることをしようと、書類審査はせず、全員とアソブロックの誰かがお会いしている。
採用活動においては、残念ながらほとんどの方と「採用」という意味ではご縁を持つことができない。けれど、「落ちたから応募して無駄だった」とならないように努力することはできる。
相手を駒とみるか、人と見るか。
若いころ、とある大きな会社の社長さんから、「団くん、経営者はときに社員を駒と見ることができる目も持たないと、繁栄には導けないよ」とアドバイスをいただいた。その時、ぼくは「あ、ぼくに大きな会社はつくれない」と思った。
お会いして、お話しした時間を、そのメンバーのできる限りの中で相手にとって「良い時間」にすること。そういったひとつひとつのコミュニケーションの中で、迎えるメンバーも「人を支える」ことを学んでいく。
10月*日
パナソニックの社内勉強会にゲスト登壇した。
会が始まる前に、アテンド付きで松下幸之助記念館を丁寧に観て回った。記念館は京阪電車「西三荘」駅を降りてすぐのところにある。
幸之助さんが、ナショナルショップ(松下電器の商品だけを売る全国の販売店)の社長さんたちに向けて話をされた音声だとか、創業直後の苦しい時期に発注をくれたメーカーにずいぶんと時間が経ってから恩返しができた話だとか、戦後の混乱期をどう乗り越えたかだとか、「会社とは何か?」に向き合う勉強素材が山盛りで、いろいろ考えさせられた。何よりも、アテンド
してくれた女性が、終始、とても誇らし気であったことが、心地よかった。
後日、その話をパナソニックの友人にすると、「私はあの場所に行くたびに、幸之助はお客様のもとに足繁く通っていた、という当たり前の事実に気づかされます」と言っていた。
「仕事って何だろう」という問いを、「どうやって稼げばいいんだろう」という問いに置き換えて考えてしまう人にたくさん会う。そんな人には、次から「騙されたと思って西三荘まで行ってみて下さい」と言うことにする。