
1995 ネパール -4-
何で?なんで結婚しないんだヨ!?
沈黙、膠着、押し問答。
果たして、俺は、無事にここを脱出できるのか。。。
メイドさんと約束をした日、待ち合わせて彼女の家にに向かう。歩いて行った位だから、カトマンズの市街地だったのだろう。
ドアを開けて驚いたのは、部屋の天井の低さだ。そして、暗い。裸電球。
私は既に3ヶ月、まぁ、もっと長い間彼女もいなく、禁欲生活を良しとしていた。それもあって、正直、ハプニングを期待していなかったかと言えば、否定できない。が、こんなハプニングに遭遇するとは考えもしなかった。
Welcome!
アレレ。誰だこの男は。一人じゃない、二人?三人?
温かいお迎えの雰囲気と雑談で、私は初めてのネパールの一般家庭を楽しんでいた。
そしてメイドさんのお兄さんが、突然こう言う。
俺の妹と結婚してくれ!するだろ?おまえ。
ウェルカムドリンクとして、ネパールティーをごちそうになったのだが、茶器を洗う様子を見て、絶句した。本当に何日も使い続けたであろう瓶に貯めた水。水は澄んで無いし浮遊物が目視できる。だが、ウェルカムドリンクを拒むのは失礼だと思い、多少の腹痛は覚悟してお茶をご馳走して頂いた。
その断り辛い伏線が意図したものかは分からない。が、兎に角わたしはそのメイドさんと結婚することを前提に、話が進められる。
一番困ったのは、何故結婚しないのか、と言う問いかけだった。そのメイドさんはとても働き者だし容姿も素晴らしい。が、私は結婚相手を探しに来た訳でもなく、この後はタルー族に会うためにチトワン国立公園へ行くことを決めていた。
正確な時間は分からないが、感覚的には数時間拉致されたと記憶する。ことを荒立てたくなかったし、誰の機嫌も損ねたくなかった。
当時、日本人と結婚をする事により、ホテルなり豪邸を建てるということが、少なからずネパール人の中ではサクセスストーリーだったという。それを、メイドさんのお兄さんは考えたのだろう。たとえ無職の私であっても。