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1995 タイ -10-

バンガローのスタッフの女性とバイクに乗っていて転倒をしたのだが、その場でシコたま怒られるだけでは許されていなかったことが後になって分かることになる。

私の大好きなタイ料理の一つに、ナマズの炙り焼きがある。ナマズと聞くと、でっぷりとした太い魚体を想像するかも知れないが、タイのナマズは随分とスリムで細長い。

当時はサムイ島の屋台で買ったら10-15バーツほどだった記憶だ。これに辛めのタレをつけて食べると、脂の乗った白身が炭火焼きの煙をまとって実に美味い。川魚でありながら、骨の構造は比較的簡単と言うこともあり、食べやすくてお気に入りだった。

今でもバンコクでこのナマズを食べることはもちろん出来るが、今のタイでは庶民の味としては格が下がったようで、エアコンの効いた食堂でこれを出すところはかなり限りていると感じる。ウナギのタレで焼いたら相当に美味いのではないか、きっとそうに違いない。

だが、この魚を食べる時には注意が必要だ。内臓は食べない方が良い。とにかく苦いのだ。その事を私は知らず、バイクで転倒した何日か後にその女性にナマズの炙り焼きを御馳走してもらうと、彼女のニコニコした笑顔と共に、これ食べて!と内臓が取り分けられた。

魚好きの私は勿論魚の内臓にも目がない。むしろ、え?俺が食べちゃっていいの?位の気持ちで頬張った。

悶絶するほど苦い内臓を食べた時、あぁ、この人はまだ俺の事を許していなかったんだと理解した上で、改めて転倒した時のことを謝罪した。

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