29. カゼルタで困惑
ナポリの手前の街、カゼルタ。ほぼ予定通りに到着した。地域によっては、濁らずカセルタと発音するらしい。駅前からバスに乗って近くの街に行く予定。駅を出たら、思いの外大きな街。カゼルタの宮殿があるから?
バスもタクシーも探す必要がないくらい。が、カオスだ。東南アジアの駅前ほどではないけれど、めちゃくちゃ。どこにバス乗り場や一覧があるのだろう。バスのルート番号などはメモしてきたのだが。
通りがかりのおじさんに声をかけてみた。この辺りの方?そうだよ、どうしたの?カゼルタヴェッキアに行くルート何番のバス乗り場はどこですか?通じたようだ。なんだ、宮殿じゃないのか?バスね、乗らないからなあ。ここで待ってなさい、あなた達がカゼルタヴェッキアに行きたいことを、そのバスを探して運転手に話してくるから。ありがとう。と返事をしたものの、この展開に戸惑う。見渡してあのバスだと教えてくれるのかと想像していたから。しばらくすると、おじさんが戻ってきた。話してきたから、大丈夫だ、ここを通る!と地面を両手の人差し指で差した。あ、何色のバスですか?ブルーだ。お礼を言って、見送る。
が、バスが来ない。番号が同じバスが通ったけれど、オレンジ色だった。仕方ない、タクシーにしよう。乗り場はすぐに見つかったので、行き先をカゼルタヴェッキアと告げて乗り込んだ。これは予定外の出費だけれど、仕方ない。リラは足りるか、次の両替はどこでできるか、ちょっと心配だ。
タクシーの運転手の胸元に、極太のゴールド喜平ネックレスが見えた。緊張する。いやいや、日本と違うはずだ、大丈夫と言い聞かせながら、挨拶してみれば穏やかなお兄さんだった。イタリア人あるいは南伊の人たちは、声の大きな陽気な人たちのイメージかもしれないが、そんなことはない。
どこから来たの?日本です、この辺りの方?そうだ、ナポリだよ。えっ、ここまでは遠くないですか?いや、近いよ。もうカゼルタ宮殿には行ったの?え、行かないの。でも、カゼルタベッキアに、なぜ?
ナポリ王国のカルロ7世のために建設されたという華麗なこの王宮、世界遺産なのだから、聞かれるのも当然かと思いつつ答える。王宮は美しいけれど、小さな町に興味があるので。でも、あの水道橋はぜひ見たいです。そのそばを通るよ。よかった!
ヴァンピッデッリという建築家が古代ローマの水道に倣って建築したこの水道橋は、3層で作られており、全長は529メートル(それ以外に、地下にある水道システムを含めると38kmあるそうだ)。そして、この水は、王宮が独占していたのではなく、当時の労働者のための街にも供給されていたとのこと。とてもいい。そして、王宮とともに、この水道橋もこの邸宅群も一緒に1997年に世界遺産に登録されている。建築物だけでなく、取り組みや考え方まで尊重されている感じがいい(リンクの下の写真はWikiから)。
カゼルタヴェッキア(Caserta Vecchia)という名前は、カゼルタより古くからあるという意味。8世紀にカプアのランゴバルド族に建設され、11から14世紀に最も繁栄したとのこと。山の上にあるこの街はとても小さく、石造りの家屋がとてもかわいい。この建物は教会でなく大聖堂。まわりの住居と同じ石でできているようだ。何という種類の石だろう?
到着したのは正午より少し前。食事のために家に帰られたらしく入れなかったが、プーリア・ロマネスク、アラブ・シチリア、ベネディクト修道会風の建築要素が融合しているとのこと。そういう歴史があるということだ。どのようなものか見てみたかった。2枚目の写真に写っている小さな鐘楼がおそらく横にあるアヌンツィアータ小教会(chiesetta dell'Annunziata)、13世紀のゴシック建築だそう。
関係者を探して大聖堂を開けてもらったら入れたかもしれないけれど、この日は確かちょうどお昼頃にシドニーオリンピックのサッカーの試合があったのだ。スペイン戦で負けてしまったが。散歩していると、パスタソースの香りがしてきたり、テレビの実況中継とおしゃべり、食器の音が聞こえてきた。それに、時おり悲鳴が、結構な音量で。さすがイタリア、熱中度が違う。オリンピックだものね。
◯大聖堂の石は「溶結凝灰岩」だそう。ヴェスピオ山のものだろうか。
◯カゼルタヴェッキアのサイトがある時代になりました。イタリア語。
◯カゼルタ周辺のバスのサイトがこちら
このサイトはカゼルタ近郊のバス会社のようで、この投稿時点では1時間に一本ある。