マラサイのプラモ動画で思い出した或る模型屋とか
2024年現在では首都圏レベルですら絶滅危惧種となっている個人経営の模型屋だが、展示されている店主や店員、或いは常連客の作例を生で見ると購買意欲やテンションが上がったのもよい思い出である。それはやはり2024年現在では売り場縮小はまだしも売り場すらなくされていることも珍しくないビックカメラとかヨドバシカメラ、場所によってはヤマダ電機とかトイザらスなどでも売り場担当の店員が作ったサンプルを見て商品が思わず欲しくなるなんてこともあるし、過去に至ってはヨーカドーなどの玩具売り場での魔神英雄伝ワタルのプラクションシリーズや元祖SDガンダムなどの組み立て玩具の完成品も陳列されていて、子供から大きなお友達の購買意欲を刺激したのかもしれない。
現在だと実店舗よりもむしろインターネット上の各種サイトで各種作例を観ることが可能であり、下手したら実店舗よりそちらの方が多いのではないかと思う。で、たまたまガンプラのマスターグレードのマラサイ(『機動戦士Zガンダム』に出てくる敵MS)を紹介する動画を観て「ああ、カッコいいなぁ」なんて素朴な感想を抱く。値段が四千円台と、今日日のHGが普通にそれくらいするのが珍しくないからかリーズナブルと錯覚してしまうくらいに、コスパのいい趣味であるガンプラというのを確認してしまう。
マラサイのガンプラに関しては自分はHGUCのジオン残党カラーとか旧キットの1/144スケールを作った事があり、後者は時代を考えると普通に合格点レベルと思われる出来だと思う。前者のHGUCは名作キットと言える一方で合わせ目関連は仕方がないものの、表情のついた手首はともかく、武器持ち手が銃持ち手とサーベル持ち手が分けられているとはいえ右手にしかないのはどうなんだというのが出てくる。あの表情のついた手首は引っ掛ける感じで持たせるように飾ることができないわけではなく、フェダーインライフルを左手に持たせた感じで飾ることができたものの、普通の左の武器持ち手(サーベル持ち手)は付けられなかったのかと今になっても思う。これじゃあハイザックの強化型どころかなんとやらである。が、そういうハンドパーツ関連でのダメな部分というのはHGUCのみならずHG関連では結構多く、武器持ち手が左のがないというのがゴマンとあるとか、右手が銃持ち手しかないなんてのもあったりとか、値段とクオリティの両立を考えると仕方がないんだろう。ああ、バンダイがタカトクからマスコミ玩具の第一人者の地位を完全に奪い去った仮面ライダーの変身ベルト関連の逸話もタカトクが低価格の商品として開発する契約で作った変身ベルトに対しポピー(バンダイの子会社)が高額トイとしてよりギミック豊富な変身ベルトを作って発売したなんて感じだったが、それはまた別の話。右にライフル左にビームサーベルが普通にできるのは旧キット1/144やマスターグレードである。
そんなマラサイのガンプラはZガンダム放送当時に発売されたのは1/144スケールのものと1/220スケールの廉価版で当時としては画期的なスナップフィット(接着剤なしでも作れる)のもので、ガンダムMk-Ⅱや百式も発売されている。ハイザックは当時としての結構難物な腕の動力パイプ各種とかで1/220じゃ難しいと判断されたのだろうか?ちなみに1/220スケールのはメッサーラとかアッシマー、キュベレイも発売されていたが、それらは普通に接着剤を使うものであった。
そんな1/220スケールのマラサイを全塗装は勿論、躍動感あふれるポージングをした、これでもかとばかりに高クオリティに再現した作例を展示していた模型店があり、そこの店主の老婦人が「この人マラサイが好きでねえ」と話していたのを覚えている。その模型店は駅からも近く車窓からも見える、手狭ではあったけど品そろえはきちんとしてる感じのお店。私が訪れた2014年か2015年の頃にはもう閉店を考えているという話だった。そこには『ダンボール戦機』シリーズのLBXとか自動車や戦車などのスケールモデル、ガンプラ各種の作例が飾られ、このハイクオリティな1/220スケールのマラサイもそのうちの一つだった。閉店をするから作例を受け取りに来てほしいという感じの話とか色々とさみしい話を聞きながらもガンプラをいくつか買って帰った後、数か月で惜しまれながらも閉店。
現在では同じ建物でレストラン兼料理教室がオープンしているが、「食べログ」で掲載保留店となっているので休業なのか閉店なのかわからない状態。
流行り廃りが激しいうえに不況、そしてコロナと逆風吹き荒れだから何とも言えない。
もし、このマラサイの店が模型店を続けていたとしても、色々と酷いことになっているバンダイや問屋、客とかに嫌気さしてやめていた可能性もなくはない。こんなつらい思いをしないだけ、まだマシかもしれないか?
今でも車窓から見える模型屋、レストランだった建物を見ると、あの頃を思い出す。