小説*③
恋人はいるのかと聞いたことがあったのだが、ふっとニヒルな
笑顔を浮かべてくせ毛を掻き毟りながら、
「まぁ、前に彼女がいたことがあったけどな…自殺したんだよ」
と言われ、僕はそれ以上深く聞けないでいた。
あまり、たくさん喋る人ではない、甘党でドーナツをよく食べる。
聞き上手で愚痴も相談も乗ってくれる。
すぐにふらふらとどこかに行ってしまう事がある。
「恋人作らないのですか?」と聞くと
「俺はいいよ、とらちゃんこそどうなのよ」と無邪気な笑顔を
向けられるから困る。
***
犬飼警部はとてもお茶目だ。
41歳と言っていたが、少年ぽいというか、仕事はバリバリできる。
僕の料理が大好きと言っていて、ご飯を美味しそうに食べてくれる。
僕はというと、中性的な顔立ち、おっとりとしていてよく
女の子と間違えられることがある。
料理を作る事と掃除が好きで、修さんと犬飼警部のご飯をよく
作ることがある。