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腐女子の私は、ゲイ(同性愛)の理解者だと勘違いしていた。
吾輩は腐女子である。ボーイズラブ(BL)、つまり男性同士の恋愛を題材とした創作が大好きなのです。
そして私は腐女子である自分のことを、「ゲイを理解できる人間」だと勘違いしていました。
「BLを感動ポルノにするな!」って言える、差別のない私。
三年前、男性同士のオフィスラブを題材にしたドラマが放送され、ヒットしました。腐女子として私も視聴したし、内容もよいドラマだったと思います。
しかし私は、BL作品がたくさんの人の目に触れるのが嫌でした。
なぜならドラマがヒットしたことにより、似たようなBLドラマがたくさん出るかもしれないと感じたから。そしてそうした創作の影響で、実際にいるゲイの人にも生あたたかい視線が送られたら……。
冗談じゃねぇ!と思い、題材にして文章を書きました。大学の課題としても提出して、周囲の腐女子からの評判もよし。
ちなみにこれ。
というように、「私はゲイやLGBTに差別ないから!」と思っていたのです。あるときまでは。
リアルのゲイは、恋愛以外でも大変そうで。
最近SNSで、ゲイの人と知り合う機会がありました。学生のころにもバイセクシャルやアセクシャルの人は数人いましたが、社会に出ているその人は、私の想像できないことに、たくさん対面していました。
今考えれば当たり前なんですけど、同性愛者のぶつかる壁って、恋愛だけじゃないんですよ。
社会に出れば「恋人はいるの?」という会話は当たり前に出てくるし、相手も「異性の恋人がいますよ」という答えを想定している。
ある程度の年齢で結婚していなければ、「なにかが欠落しているに違いない」という烙印を押される。
上司や得意先の人に「お前オネエっぽいよな」「しぐさが女みたい」とネタにされれば、自分のセクシャリティを責める。
そんな彼を目の前にしたら、私にできることなんて、なにもなかったんです。「ゲイに差別ない」私、ゲイのことなんにもわかってなかった。
ていうか男性二人組を見ても「あれ絶対カップルだよね」なんて言ってしまう腐女子の私、「オネエみたい」ってネタにした人たちと一緒で、ゲイを消費していた立場ではないか?
「腐女子はゲイの敵なのか」問題。
ゲイは腐女子を許せるのか、許せないのか。それは人によるそうです。
私の知りあった人は「バラエティ番組で観たんだけど、腐女子の生態面白すぎるでしょ」と話していたので、比較的許せるタイプなのかもしれません。
だから「腐女子はゲイの敵」とも言い切れない。
そして腐女子である私自身も、「腐女子はゲイを消費する悪だ」とは言えない。
好きなアニメを通じて友だちができるのはうれしかったし、さらにディープな話題としてBLが出てくると、より仲よくなれた気がしていました。
創作としてのBLが好きなのは、個人の自由だし。
というか「BLはゲイを歪曲している」と言うなら、少女漫画だって「食パン加えて角でイケメンとぶつかるかよ」って話じゃないか、とも思ったり。
街で手をつなごうとしている高校生カップルをみて「エモいなぁ」と思うようなことも、一種の消費ではないか、と思ったり。
正解は、私一人で考えて出るものではないし、ゲイを一人捕まえて「どう思います?」と訊いたところで、それはゲイの総意ではないのでしょう。
しかし、言えることはあります。
思考を止めない、「ゲイはこうだ」ひとくくりにしない。
大切なのは、思考を止めないこと。
「自分に差別はない」と思い込むことから、差別ははじまります。
「腐女子はゲイを消費している」と決めつければ、攻撃される人が出てきます。
「実は思い込みなんじゃないか」と立ち止まることから、新たな視点が生まれるのではないでしょうか。
そして、「ゲイだからこうだ」「腐女子だからこうだ」などと、その人を見ずにひとくくりにしないこと。そのためにしっかり相手と向きあうこと。
当事者でなくても、できることはある。そのために、私は考え続けています。
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