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アイドルソングを読む#2 Shooting STAR(chuLa)

魅力的なアイドルソングの存在

ここではライブアイドルを「アイドル」と呼びます。近年の坂道シリーズや80年代のアイドルのようないわゆる地上波アイドルではなく、地下に設置されることの多いライブハウスを主現場として活動しているアイドル(=地下アイドルまたはライブアイドル)を指します。

アイドルの楽曲は、オタクか推し活でもしない限り耳にすることはないでしょう。しかしアイドルに興味がない方でも、一度聴いてもらえれば素晴らしい楽曲が多くあることに気付いていただけると思います。

いまアイドル業界は群雄割拠で、無数のアイドルユニットが存在しています。カバー曲がメインの駆け出しアイドルから、オリジナル曲を多数抱える人気アイドルまで様々です。

アイドルに楽曲を提供しているのはプロのミュージシャンやバンド活動等をおこなってきたクリエイター集団が多く、音楽的にも完成度の高い作品が数多く存在します。

歌唱するアイドルのコンセプトやオタクの趣向、ライブで沸ける曲かどうかで評価が変わるのがアイドルソングの難しいところではありますが、ここでは純粋に作品の歌詞に注目し、その魅力を語りたいと思います。

Shooting STAR/chuLa

女性アイドルユニット「chuLa」は2017年に誕生し、ハイテンポで躍動的なパフォーマンスと個性的なメンバーによって一時代を築いたライブアイドルです。

Shooting STARは2019年に発表され、いまも人気の高い楽曲のひとつです。BPM200以上が大半を占めるchuLaの楽曲の中で数少ないバラードであり、歴代のメンバーとファンに愛されながら歌い継がれてきました。今回はこの色褪せることのない名曲を読み解いていきます。

Shooting STAR/chuLa

サビのフレーズが何度も繰り返されるとてもシンプルな歌詞で、それが逆に想いの強さを感じさせます。一読するとラブソングのような印象がありますが、比喩的な表現の少ないストレートな歌詞にどのような想いが込められているのでしょうか。

会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
どんな時も
会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
生まれ変わっても
星空を見上げ願いを込めるの 君に届けこの想い
Make a shooting star!

Shooting STARは頭サビで始まります。一度聴いただけで耳に残るこの印象的なフレーズは真っすぐで一途な愛を表現しています。

君に会いたいと願う気持ち。いつでも会えるような関係性や距離ではないことを連想させる、とても切ない歌詞です。星空に思いを馳せる様子がうかがえますが、最後の「Make a shooting star!」とは何を表しているのでしょうか。星に願いを込めるのであれば「make a wish」となるはずですが、流星を作るとは一体どういう意味なのか。続きを見ていきましょう。

いつか描いた夢にまでは まだ少しだけ遠いけど
振り返ると歩いてきた日々は 君と僕らだけの宝物だね

描いた夢というのは、未来に据えた目標でしょう。「まだ少しだけ遠い」という言葉からは、目標までの道のりは長いけど不可能じゃないんだという希望に満ちた意志が伝わってきます。

仲間と一緒に過ごしてきた日々のひとつひとつがかけがえのない思い出。「君と僕」でもなく「僕ら」でもなく「君と僕ら」という表現をしていることから、去っていく仲間を想う詞なのではないかと想像しました。もしそうであれば、MVで描かれている世界観とも合致します。

一人になると思い出すよ あたたかな君の笑い声
どんな時も優しい笑顔で そっと僕を包み込んでくれた

アイドルは一年中メンバーと行動を共にし目まぐるしい日々を過ごしていますが、家に帰り一人の時間を過ごしている時ふと我に返ると、いつも自分の心を満たしてくれていた仲間とのいろんな思い出がよみがえってきます。

止まらないまだ終われない この声を届けたい
それまでは君に向かって歌うよ
負けないと決めたから また走りだすから
サヨナラなんかじゃないから

去っていく仲間へのエールでしょうか。自分はアイドルを続けられる限り歌い続けるという覚悟が伝わってきます。みんなで掲げた夢に向かい走り続ける自分の姿を見守っていて欲しいという仲間との絆の強さや、転んでもつまづいても夢をあきらめないという決意を感じます。ここでの「サヨナラ」は仲間との別離というよりもアイドルとしての夢をあきらめることを形容しているように思います。

今すぐ
会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
どんな時も
君に会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
生まれ変わっても
もう一度会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
忘れないよ
ずっと会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
共に歩いた日
星空を見上げ願いを込めるの 君に届けこの想い
Make a shooting star!

冒頭のフレーズの繰り返しですが、最初に「今すぐ」が付加されることで常に一緒にいたいという強い思いが伝わってきます。道が分かれても仲間とは一心同体であることを感じさせます。サビはすべて同じフレーズですが冒頭のしっとりとした印象に比べるとこちらは力強さがあふれています。

悔しくて泣いてたあの時も 嬉しくて抱き合った時も
一つ一つ重ねてきた日々が きっと今の僕らを作ってる

いつの時も悲しみや喜びを共に分かち合ってきたからこそ僕らは強い絆で結ばれている…ここでは過去を振り返っていて、すべての歌詞の中で最も感慨深さを感じるフレーズです。

二度とはない人生なら せめて自分にだけは
素直に前だけを向いていたいよ
時間は戻せないから 今この瞬間を
忘れないように生きてこう

一度きりの人生だから後悔しないようにいつも自分の気持ちに正直でいよう、人生の1分1秒をすべて記憶に刻み込んで生きていきたいんだ。

今すぐ
会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
どんな時も
君に会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
生まれ変わっても
もう一度会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
忘れないよ
ずっと会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
共に歩いた日
星空を見上げ願いを込めるの 君に届けこの想い
Make a shooting star!

再びサビのフレーズが繰り返された後、落ちサビへとつながっていきます。

絶対絶対絶対絶対 叶えよう
絶対絶対絶対 道が別れても
バイバイバイバイバイバイバイバイ
言わないで
バイバイバイバイバイバイ
今約束しよう
転がり続けて 掴んだこの想いを 必ず守るから

落ちサビでも「絶対」や「バイバイ」の言葉の繰り返しが多用されていますが、これらはサビの「会いたい」の力強さとは対照的に、別れの寂しさや空間的な距離感を感じさせる哀愁が漂ってます。

これからは離れ離れになってしまうけど、再び会える日まで夢はあきらめない。だからまだサヨナラは言わない。共に苦難を乗り越えながら育んできた友情に偽りはないから。

今すぐ
会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
どんな時も
君に会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
生まれ変わっても
もう一度会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
忘れないよ
ずっと会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
共に歩いた日
星空を見上げ願いを込めるの 君に届けこの想い
Make a shooting star!

いよいよ謎のフレーズ「Make a shooting star!」の意味に迫りたいと思います。

比喩的表現においては、流星は新しい物事の始まりや希望の象徴とされることがあります。そう考えるとこのフレーズは、仲間たちと輝かしい未来を築きたい、という願いが込めらているのかもしれません。

アイドルとしての夢は目標であることに違いありませんが、それはあくまで人生における到達点の一つに過ぎません。大切なのは夢を追いかけ仲間と共に懸命に生きていく日々の経験であり、ひいては友情を育むことです。

輝かしい未来とは、究極的には幸せな人生そのものとも言えます。私の個人的な考えでは、将来自分が死ぬとき、幸せな人生だったと思えるかどうかは友の存在や物事の達成感が大きく関わってくると思っています。

名曲「Shooting STAR」は、何かに打ち込むことでかけがえのない宝物(経験や自信・友情・思い出などお金では買えないもの)を得ることができ、それが人生を豊かにする(輝かしい未来を築く)ということを伝えているのではと感じました。

現実世界の流星というのは墜ちていき消えてなくなってしまうけど、最後の瞬間まで輝いていたい。Shooting STARの「STAR」が大文字なのはそんな願いが込められているからなのかもしれません。

まとめ

今回は「Shooting STAR」を読み解いてみましたが、いかがだったでしょうか。アイドルソングに限らず、歌詞を読み解くのはいつも難しいものです。

しかし作者がどういう意図で書こうとも、他人がどう解釈しようとも、聴いた人・読んだ人が感じたことが正解です。それが歌の良さなのです。

chuLaの「Shooting STAR」がオタクの心をつかんで離さないのは、シンプルな歌詞故に解釈の幅が広く、多くの人の心に刺さるからなのだと思います。楽曲発表当時のMVが公開されていますので、ぜひ聴いてみてください。


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