1点を笑う者、1点に笑う【114回医師国家試験受験記】

注:2020年2月施行の114回医師国家試験の受験記です

【はじめに】
こんにちは。
国公立医学部で底辺を彷徨いながらもなんとかストレート卒業できそうなさいこれ(Twitter: @dame_dical)です。
同級生全員が「お前がストレートで卒業するとは思わなかった」と言うのではないかと思うほどひどい成績でした。あまりにも試をコレクトしすぎていたのでさいこれという名前になりました。4回あった進級判定のうち2回がいわゆる仮進級。6年間で受けた試験の最低点はマイナス2点(100点満点中)です。

【結果報告】
近年の医師国家試験の合格基準は、必修問題80%以上、一般臨床問題基準点以上、禁忌選択数3問以下です。
このうち必修、禁忌で落ちる人は稀で、実質的に一般臨床問題の点数で合否が決まると言っても過言ではありません。
僕は、その一般臨床問題を最低点ちょうど(217/299)で合格していました。

以下、今回の自分の行動を振り返ってみて、良かったことと悪かったことを書いていきます。
(注:あくまでも自分にとってどうだったかを書きます。他の人には当てはまらないものが多いと思います。)

【良かったこと】

・2019年中は一切勉強しないと決めていたのがよかった

だらだらやっても成果が出ないタイプなのは過去の経験からわかっていたので、年内は絶対にやらないと決めました。おかげで年明けから最大の集中力を発揮できたと思います。

・medu4究極MAPを取ったのがよかった

国試予備校medu4が年明け1月1日以降に発売する究極MAPという映像講座があります。この講座は素晴らしいです。特に僕のような最低限の勉強で国試に合格したいと思う受験生にとっては。

医学生は、いわゆる映像講座を5年生頃から受けている人が多いようですが、僕は全く受講していませんでした。理由は、時間をかけて勉強する気がなかったこと、人の話を集中して聞くのが苦手なのでどうせ頭に入らないと思ったこと、数万円の受講料を払って受けるほどのものではないと思っていたことです。

そんな僕は、究極MAPを受講する気はさらさらなく、それどころか存在すら知りませんでした。

そんな中、1月上旬に同期と飲む機会がありました。僕は年明けは国試の勉強に集中すると決めていたので、そのような誘いは全て断るつもりだったのですが、どうしてもということだったので飲みに行きました。

そこで勧められたのがこの講座です。「特にお前みたいなコスパ厨は絶対に受けたほうが良い」と強く言われたので、その言葉に負けて購入してしまいました。

この講座は医師国家試験の全範囲を網羅しています。それでいて全て受講しても10時間程度という超コスパ。要点が絞られているので知識の定着率も良い。その時点でほぼ知識ゼロだった僕にとって救世主となりました。medu4の穂澄先生と勧めてくれた友人には感謝してもしきれません。

・禁忌対策をしなかったのがよかった

合格基準に禁忌3以下がありますが、禁忌で落ちる人はかなり稀で例年1桁程度と言われています。一般臨床問題の点数の方が重要なので禁忌対策は一切しませんでした。
また、僕のように中途半端な勉強量で受ける場合「○○→△△は禁忌!」と覚えても本番で(○○は△△…聞いたことある気がする…)と選んでしまうことを懸念していました。
結果、禁忌選択数は0。禁忌対策は不要でした。

・生活リズムを回せたのがよかった

国試は朝から夕方までなので、常に朝型の生活リズムを整えておくのが最善なのは言うまでもないです。でも334(注:午前3:34に行われるTwitter上の競技)常連の僕には無理な話ですし、常に寝坊しないように気を張るのはストレスです。そして何よりも、睡眠不足になって日中の集中力が落ちるのが嫌でした。

そこで僕は、国試までの1ヶ月間、1日30分~1時間ずつ起床時間を後ろにずらしていく方法を取りました。人間の体内時計の周期は個人差あれど24時間50分ほどと言われています。身体にも負担はないですし、夜型の自分が朝方に逆転できる唯一の方法だと思いました。

この結果、本番は21時就寝6時起床という理想的なリズムを作ることができました。

・1日目に必修の採点をしたのがよかった

1日目終了後の採点については意見が分かれるところですが、僕は採点はしないつもりでした。1日目の採点結果によるバイアスで2日目の直前に「するべき基本的な勉強」ができなくなるのが嫌でしたし、メンタル面でもこのタイミングで新たな情報を追加したくないと思っていたからです。

しかし、今回1日目の必修問題の感触が悪く、合格ラインの8割を切っているかもと思いました。8割を切っていた場合は必修対策にシフトしなければと考えて必修問題のみ採点をしてしまいました。結果は8割台後半。必修落ちの心配は少なく一般臨床問題の勉強に集中できました。ここで採点をしていなければ「少しは必修問題も見ておくか…」となり、一般臨床問題の対策が疎かになっていたかもしれません。

【悪かったこと】

・QBは最新版を買うべきだった

最新のQBは全巻揃えると7万円以上します。僕は6000円くらいで手に入る1年前のQBをヤフオクで買いました。(部活に入っている人なら先輩から譲ってもらえるかもしれません)

このとき僕は、お金を節約できただけでなく、昨年113回の問題が収録されていないので、113回の問題を試験形式で直前に解くことで自分の実力を測ることができる、というメリットすら感じていました。

しかし、僕は試験直前に重度の体調不良に陥ってしまい、直前に解く予定であった113回には目すら通さずに本番に挑むことになってしまいます。

今思うと、試験直前に最新の問題を解くという計画に意味があったのかは疑問です。

少なくとも直前詰め込み型の僕にとって、113回の結果がどうであれ、がむしゃらに勉強する以外の選択肢はなかったのではないでしょうか。

また、試験本番、「自分は113回の問題を見ていない」という引け目を感じていました。メンタル面でも、このような事態は避けるべきだと思います。

(補足ですが、QB1~5巻は最新版でも昨年度の問題は乗っていません。6,7巻のみ昨年度の問題が反映されています)

・Fブロックで途中退室したのはまずかった

医師国家試験では、各ブロック試験開始1時間後以降は途中退室をすることができます。
途中退室をする人は少数派のようですが、それ自体は悪いことではないと思います。
見直しの時間は減りますが、次のブロックのために勉強ができますし、試験室にいるだけでも緊張感でMPを消費します。試験室から出ることは気分転換になります。

特に、B、Eブロックの必修問題は時間が余りやすく、考えれば考えるほど沼にはまって間違えやすくなるという特徴もあるので、途中退室は有効だと思います。
さらに、Eブロックの次のFブロックは公衆衛生の問題が多く出ます。公衆衛生の知識は実習などではあまり身につかないので、直前に詰め込む効果が高いです。
ただ、途中退室をすると同じ大学の人が答え合わせをしていたりするので、それが嫌な人は避けたほうがいいかもしれません。

さて、Fブロックは2日間で最後のブロック。
Fブロックで途中退室をしても次の時間の勉強はできません。つまり、Fブロックでの途中退室は戦闘放棄に等しい行為です。

しかし、僕は連日長時間の受験で疲弊していて、結果なんてなるようになるさ、ここで見直しをすることで合否が変わることなんてまずないだろ、そんなことより開放感を味わって1時間でも多く人生を謳歌するぞ~、なんて考えて半分くらいの時間で途中退室してしまいました。

その後自己採点をするのですが、勉強不足で取れなかった問題は数多くあれど、試験本番のケアレスミスで落とした問題はたったの1問でした。

問題文の読み落としで落としたその1問は、Fブロックでした。

もしこの1点で不合格になっていたら…
一生の不覚になっていたでしょう。


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