まだ言及するタイミングじゃない
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① はじめに
この度、とある女性タレントが女性に対して性加害を行ったとして書類送検されたというニュースが報道されました。
そもそも私はこうしたニュースを余り拡散しないタイプですが、今回は注目度の大きさから「何か言及されないのですか?」と数名からメッセージを頂きましたので、原則論(物事には基本的な決まりがあるのだから、それに従ったものであるとする考え方)を交えて少し触れる事にしました。
※ この記事で得られる知見はあくまで原則論になりますが、推定無罪の原則と実名報道、人権保護問題へ所感、並びにその事柄に関することや今後も繰り出されるであろう性被害・性加害への報道をどう扱うのが個人的に望ましいと考えているか、の2点になります。
② 増える匿名裁判
裁判の原則の一つに情報の公開があります。無罪・有罪が確定しない段階では例え被疑者・被告側であったとしても、誰からの訴えであったのか、また誰のどのような被害に対する公判なのかを知らなければ、的確に抗弁(反論)する事が難しいからです。
しかしならが例えば刑事事件で加害者が起訴状の通りに有罪判決を受けたとしても執行猶予中や出所後に仕返しをされないかという平穏な生活を奪われる懸念や被害者の社会的信用の毀損、セカンドレイプ等の懸念がありました。被害者特定事項の保護、いわゆる匿名裁判はこうした現代社会の中で制度上可能になったのです。
さらに昨今、性犯罪については別の懸念も指摘されています。例えば加害者が面識のない、見ず知らずの相手を対象に複数の性犯罪に手を染め、現行犯ではなくDNA判定により発覚し起訴されたケースでは、意図せず起訴状で被害者の氏名・住所が加害者に通知されてしまうのです。
こうした懸念は近い将来、起訴状の匿名化を可能とするでしょう。
③ 加害者も匿名に
下記の記事は被告であっても匿名裁判が行われた事例を指摘していますが、性犯罪については大変複雑な背景があります。東京新聞が指摘するような加害者の氏名・住所・年齢・職業が公表されれば、○○中学校の教師だから生徒が被害者だ、○○塾に通っていた女子高校生だ、と被害者が特定される懸念もあるでしょう。今回はありきたりではありますが別の視点から考察してみます。
1つ目は冤罪です。氏名・住所・職業まで公開、メディアによって報道された被告の名誉は簡単には回復しないどころか、最悪の場合はそれまで積み上げた人生そのものを失ってしまう恐れがあります。
2つ目は、刑罰の重さが異なってしまう点です。例えば実刑懲役3年と言う同じ刑罰でも、詐欺や窃盗と性犯罪では報道の仕方が異なる為に、明らかに差がついてしまう現実があります。日本は法治国家ですから、懲役3年に相当する刑罰は原則論としては等しくあるべきでしょう。
3つ目は、性犯罪については他の犯罪に比べて特別厳しい日本では、刑期を終えた後にも関わらず、その加害責任が残るのです。SNSや検索サイトの利用が一般化した現代ではその犯罪歴が消えずに残ります。
被害者やその親族の心境を慮れば、一生忘れられない経験がたったの数年で精算されるのは許しがたい、インターネット上に一生残れば良い、加害者が幸せになるのは許せない、と考える気持ちは十分に分かります。
また、加害者の氏名がインターネット上に残れば、学校教師・保育士・塾講師等は採用を避ける事が出来るかもしれず公益性があるという主張もあるでしょう。
しかし一方で、規定の刑期を満了した出所者がどのように社会復帰を果たせるかを公平な目で判断しなければならないのもまた、法治国家がなすべき人権保護のあり方と考えます。
④ 推定無罪の原則
こうした背景から、加害者であっても匿名を希望し、またそれが通ったとしても何ら不思議ではありません。下記は逮捕されながらも不起訴となり、その情報が検索可能だったとしてグーグル社を訴えた裁判のニュースです。
従って性犯罪に限らず、現行犯逮捕を除けば個人や企業の信用を毀損するような報道は慎むべきではないかと考えるのですが、今のテレビメディアや報道各社の姿勢を見るとかなり難しい状況で大変残念に思います。
しかし、決して推定無罪への取り組みもゼロではありません。昨今ではバーリンクが採用され、ニュースは時限制でリンクの効力を失います。(下の画像みたいな)また、昨今個人的な感想ではありますが逮捕時の実名報道が少なくなった気がしています。
グーグル社の訴訟のように、逮捕時に実名を記載してしまえば出所後に本人から裁判を起こされる可能性は十分にありますし、推定無罪の原則からも有罪判決が出て始めて報道するのは理に適うと考えます。少なくともマスコミやワイドショーが面白がって事件を取り上げて私刑を加えるような文化は私は好みません。
⑤ 私刑と責任
推定無罪の原則を尊重しての判断かどうかは不明なものの、現実に大手報道各社ですら後の訴訟問題を危惧してバーリンクを採用し、実名報道を控えつつある現状と比べて、個人のSNSでは興味本位で公判が行われていない被告や容疑者に石を投げる私刑が堂々と行われているように見受けられます。
特に私はフェミニスト・アンチフェミニストの情報を集める中で多くの私刑を目にしてきました。しかし確定判決や確定情報が出る前に、どちらか一方に肩入れしてしまう事は推定無罪の原則からは避けるべきではないかと考えています。
民事訴訟なら和解に至る事もあるでしょうし、刑事訴訟であっても刑事和解や被害届の取り下げ等も可能性としてはあります。報道に乗っかって被告に石を投げたものの、当初とは全く別の決着の仕方をしてしまった場合に、SNSに投稿したユーザーはそのニュースを追いかけて投稿を削除したり謝罪するでしょうか?草津町の一連の報道で、黒岩町長に石を投げたり、火を放った人は謝罪に至りましたか?
⑥ まとめ
以上をまとめますと、概ね私が考えている事は下記に集約されます。
・推定無罪の原則を尊重すべきだ
・メディア各社は確定判決後に報道するのが望ましいのではないか
・目先の視聴率やPVを目的とした活動は人権蹂躙の誹りを免れない
・人権意識の低いメディアに唆されて憶測で投稿するのは避けたい
・インターネット時代の刑期満了後の人権について改めて考える必要がある
私にもミーハーな一面があり、新鮮なニュースに飛びつきたい気持ちもあります。今回であれば、”あれ?フェミニストの皆さんは報道された被告にどんな声を掛けているのかな?”、”フェミニストなら見分けがつくので、当然これまで警鐘を鳴らされたんですよね?”と言う感じです。
しかし今後は自制心をもってそれを慎みたいと思います。過去を振り返れば不適切なツイートもしたと思います。この場を借りて謝罪をいたします。例えばヒステリックブルーの赤松直樹氏は確かに逮捕されましたが刑期を満了し出所した段階でその罪は償ったのです。被害者の方の心情は計り知れませんが、少なくとも私が私刑を加えて良い理由にはなりません。
その後、二階堂と名を変えて再び逮捕されましたが、このnote執筆時点ではその後起訴されたのか、起訴猶予となったのか等の情報はありません。ならば、この二階堂としての罪については判決の確定を待ってからコメントすべきと考えます。
この手の報道は確実に論争を産み出し、人々に禍根を残します。先の”黒岩町長に謝罪されましたか?”も同様も私がツイートすれば立派な煽りになるでしょう。マスコミが扇動する人々をイライラさせる報道に乗るのは終わりにしませんか?
私は法律の専門家ではありませんが、昨年性的同意年齢についてnoteを編集した際にマスコミの報道姿勢に疑問を持ち、どういう法体系、解釈が有り得るのかを考えた時に、理想と現実のギャップを知り学べる事が沢山ありました。今回のnoteのカバー範囲と多少被る箇所もあったと思います。
最後になりますが、もし女性タレントの件に私が言及するならば、それは確定判決後に論じる事になると思います。今はまだ言及するタイミングではありません。
以上。