見出し画像

夏が暑いと冬が怖い

今夏の暑さはどうしたことだろう。昔は北海道の夏が雨から始まることも珍しかったし、30度越えの日が続くなんて経験したことが無かった。
クーラーがキンキンに効いたお店を出るとメガネが曇るほど空気がジメッとしているのも初体験でびっくりだ。

時々空がゴロゴロと唸り、ザーッと突然強い雨が降って虹の出現と共にあっという間に止んでしまうのも、「本州が舞台の映画みたい‼」と感動するし、熱帯夜で夜眠れず、目の下にクマをこしらえながら「こういう感じか…」とベタベタした身体をどうすればよいのかわからずにいるのも新たな道民の知見である。

とにかく暑い。暑い。暑い。北海道の地方都市、我が家のような郊外の一軒家にはエアコンやクーラーなんかないのが当たり前だ(かつては窓を開ければ涼しい風が通るのがデフォルトであった)。仕方なく、ストーブを焚くときに使うサーキュレーターを取り出して使ってみた。うん、使える。そうか、サーキュレーターは扇風機と同じ構造だもんな。夏も使えるわけだ。

面白いのはSNS上にたくさん雪の写真があふれ出したことだ。あまりの暑さにみんな冬が恋しくなっているようだ。「おすそ分け」「ご堪能下さい」とコメント付きで、親切にも軒下まで積もった雪の風景や市電のササラ電車が盛大に粉雪を噴き上げて進む様子、除雪機を繰り出して家族総出で雪かきをする姿、ほとんど雪饅頭になっている愛車の写真などをフォロワーに見せてくれている。
フォロワーもすぐに反応している。

「早く雪が降らないかな。」
「あー、今雪の中にダイブしたい!」
「朝起きて雪が積もってたらいいな~」

暑い夏に思い浮かべる雪は待ちわびるものであり、ご褒美であり、サプライズプレゼントなのだ。

だがしかし、実は今だから言えるこの冗談、我々は自虐的に楽しんでいるに過ぎない。

「夏猛暑だと冬は豪雪」

…と、よく言われる。これはラニーニャ現象が発生している時はそうなりやすい、と説明されることも有るが、厳密には、統計的に優位であるとも限らないらしい。しかしながら、北海道民として体感的に暑い夏があった翌シーズンの冬は大雪で大変、という記憶があるのだ。

今のうちに雪への愛情表現をたっぷりしておいて、いざ冬が来たら「春よ、来い」と雪を恨めしく思うであろうことは例外のない事実である。
まるで半年後の自分たちを戒めるように、暑い夏に文句を言いながら「冬に帳尻合わせの寒波が来るに違いない」という覚悟がこの冬の風景写真の掲載なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?