2024/08/13 日経新聞 朝刊 個人的厳選4トピックス
[1面] 知財、新興企業の活用後押し
自社株と交換しやすく
法務省 価値の適正評価必須
法務省は2024年度中に自社株と知的財産権の交換に関する規制緩和の協議を開始する。これにより、資金に乏しいスタートアップが特許や技術を取得しやすくなり、研究機関の知財を活用して新興企業のイノベーションを支援する。スタートアップは、眠る特許の活用や市場ニーズに即した技術革新を進める役割が期待されており、大企業よりも資金力に乏しい場合もある。自社株と知財権の交換には裁判所が選任した検査役による検査が必要であり、時間と費用がかかるが、例外規定も存在する。政府は自社株を活用した知財権の取得を促進するため、制度改革を検討している。一方で、検査役制度の規制緩和には株主保護の課題があり、知財権の過大評価が株価に悪影響を与える可能性があると指摘されている。企業の成長を支援するために、政府は事業性融資推進法を成立させ、資金調達の柔軟性を高める取り組みを進めている。
億ション続々、高騰でも… 日本の住宅「割安」
収入比、OECD平均未満 都心・新築偏重
東京都心のマンションの平均価格は1億円を超え、日本の住宅価格は高いが、OECDによると収入と比べて住宅価格は低い。中古市場が活性化せず、空き家が増加しており、価格は国際的に取り残されている状況。円安で海外マネーは都心に集中し、中古や地方の住宅価格が上昇する可能性がある。東京23区の新築マンション平均価格は1億円を超える。 日本の住宅価格はOECD平均を下回り、コロナ禍後の上昇率も低い。中古住宅の比率が欧米より低く、空き家率は高い。中古住宅の流通が進まず、新築志向が根強いことが影響している。海外からも簡単に情報を得られる仕組みが必要との指摘も。 海外資金の地方分散が必要であり、海外からの資金は市場を支える柱となる。地方の魅力を発信し、移住や別荘需要を喚起することで地方の住宅市場が活性化する可能性も。米国のように一極集中を是正し、リモートワークの拡大で人の流れを変えることが重要だとされる。
建設派遣のIT人材育成 設計デジタル化後押し
パーソル系、28年度末までに300人
パーソルテンプスタッフはIT人材の育成を強化し、2028年までに300人の3D設計図技術者を育成する。ヒューマンリソシアも外国籍社員の派遣を増やし、建設業界のデジタル化に対応する。BIMの活用が進み、施工作業の生産性向上や維持管理を容易にする。パーソルテンプスタッフとグラフィソフトジャパンが連携し、BIM技術者の育成を進め、ヒューマンリソシアもBIM人材を派遣。建設業界のBIM普及に国の後押しがあり、大手ゼネコンのBIM導入が進む一方、業界全体では普及が進んでいない。人材確保が課題で、企業の半数以上が活用できる人材不足を指摘。高齢化や人手不足の課題を抱える建設業界において、派遣各社は人材育成に注力し、建設業界向けに商機を見込んでいる。
北陸新幹線延伸、費用対効果示されず
自治体、説明求める
国土交通省が北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸に関する「費用対効果」を公表しなかったことが問題となっている。建設費が上振れし、最大5.3兆円になる見込みで、16年度の2.1兆円から大幅に増加したことが明らかになった。費用対効果は効果が費用を上回る「1」以上を目指しており、16年度の試算は1.1だったが、具体的なデータが示されていないとして沿線自治体からの不満が高まっている。国交省は費用対効果を算出する方法の変更を検討中であり、社会的割引率の見直しや先行開業区間の試算対象への含め方などが検討されている。将来の効果を現在の価値に換算するための課題があり、50年間の効果を算出する際に社会的割引率の変化が重要視されている。また、敦賀―新大阪間のルート選定には懸念もあり、地下水や水資源への影響が議論されている。建設費の増加により、推進されていた小浜ルートに代わる米原ルート案の再検討も行われているが、政府・与党は現状を維持する方針を示している。