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Satya Nadella – Microsoft's AGI プラン&量子のブレイクスルー
以下は、Dwarkesh 氏がホストを務めるポッドキャストに Satya Nadella 氏がゲストとして登場し、対談を行った内容をベースにしてる。本文中では Satya 氏の発言を引用しながら見ていきたい。
はじめに
Dwarkesh:
Satya、ポッドキャストに来てくれて本当にありがとう. 少し後で Microsoft が同日に Nature に発表した2つのブレイクスルーについて話したい. まずはおめでとう. ここにある Majorana ゼロチップと、ワールド・ヒューマン・アクション・モデル. でもその前に、さっき話していたことの続きがしたい. あなたが80年代や90年代に見てきたことが今また起きているようだと. 自分にとってとてもエキサイティングな点. まずは、ポッドキャストに来てくれてうれしい. 自分は大ファンで、あなたのインタビューの進め方や、扱うトピックの幅広さがすごく好き.
Satya:
現在エキサイティングだと感じるのは、80年代末〜90年代前半のテック業界の雰囲気を再び感じられる点。
当時は、以下のような大きな議論があった:
RISC か CISC か
x86 で本当にサーバーを構築できるのか
自分が Microsoft に入社した頃は、Windows NT の始まりだった。
シリコンプラットフォームから OS、アプリケーション層まで、フルスタックで議論が行われていた。
クラウドや分散コンピューティングはクライアント・サーバーを変え、ウェブも大きく変化した。
しかし、今回の AI の流れは、それ以上に包括的なフルスタックの変化かもしれないと感じている。
過去の大きな変革から学ぶ
Dwarkesh:
80年代から90年代にかけて勝ち残った技術とそうでなかったものを振り返るとき、また、あなた自身が Sun Microsystems に在籍していたときのドットコムバブルの経験も興味深い. データセンター投資はバブルだったとも言われるが、一方でそれが今のインターネットの基盤になっている. 長いスパンで何が本質的なトレンドで、何が一過性かをどう見極めるのか。
Satya:
自分が経験した大きな変革は4つある。
クライアントとクライアント・サーバー
グラフィカルユーザーインターフェイスが普及し、x86アーキテクチャでサーバーを構築可能になった。
1991年、Sunに在籍中にMosconeで開催されたPDCに参加。
Microsoftが初めてWin32インターフェイスを説明。
クライアントだけでなくサーバーのx86化が進む流れが明確になった。
クライアントで起きた変化はサーバーにも波及し、クライアント・サーバーアプリケーションのモデルが確立。
ウェブの登場
Microsoftに入社直後の1993年末、NetscapeブラウザーやMosaicブラウザーが登場。
クライアント・サーバーモデルで勝負しようとしていた中、ブラウザーがゲームチェンジャーに。
MicrosoftはHTMLをWordに統合、ブラウザー開発、ウェブサーバー導入などで対応。
しかし、最終的にGoogleが検索を制し、ウェブの最大のビジネスモデルを確立。
学んだこと
技術トレンドを正しく捉えるだけでなく、そのトレンドでどこに価値が生じるかを見極めることが重要。
技術の変化よりもビジネスモデルの変化を理解することの方が難しい。
AI は勝者総取りになるのか
Dwarkesh:
AI において価値がどこに生まれるのか. どう見ているか.
Satya:
大規模コンピュートの優位性
ハイパースケーラーは大規模な計算能力を回せる。
Samらの仮説では「知能はコンピュート量の対数に比例」。
巨大な計算能力を持つ企業が有利になる。
AIアクセラレーターの需要増
ChatGPTの例でもGPUなどのAIアクセラレーターが大量に必要。
トレーニングだけでなく推論にも膨大な計算リソースが必要。
エージェントが多くのプログラムを自動実行するようになると、さらに計算需要が拡大。
インフラ需要が爆発的に増加し、Azureなどのハイパースケール事業には大きなチャンス。
勝者総取りにはならない理由
市場ごとに勝者総取りの起こりやすさが異なる。
過去、AzureがAmazonに大きく遅れていた際、多くの投資家は「Amazonが勝者総取り」と考えた。
しかし、企業顧客は一社独占を嫌い、複数のベンダーが共存する市場が形成される。
モデルの世界でも、クローズドソースのモデルがあればオープンソースのモデルも出る。
例として、Windowsがクローズドだったため、Linuxのようなオープンソースが補完した。
政府の介入と市場の分散
技術が大きな影響力を持つ場合、各国政府が介入し、一社独占にはならない。
消費者向け vs エンタープライズ市場
消費者向け市場はネットワーク効果が強く、勝者総取りが起こる可能性がある(例:ChatGPT)。
しかし、エンタープライズ市場では異なり、カテゴリーごとに複数の勝者が共存する。
モデルがコモディティ化するのか
Dwarkesh:
モデルのコモディティ化について. 同じことがクラウドにも言われていたが、実際には差別化されて大きな利益が出せている. さらに、もし将来的に AGI が AI を改良するような展開になったとき、先行企業の優位は大きくなる可能性があるのでは?
Satya:
スケールが大きくなるほどコモディティ化しない
クラウド初期は「ラックにサーバーを積んでいるだけ」と見られていた。
実際には、世界60以上のリージョンに高可用性データセンターを展開するノウハウは容易に模倣できない。
「勝者総取り」にはならない
市場が大きく、複数の勝者が存在し得るなら、その一角になれれば十分。
モデルレイヤーの構造
トレーニングも推論も、巨大なハイパースケールコンピュートが必要。
状態を扱う場合はストレージも必要となり、1社だけで完結するのは困難。
消費者向け vs エンタープライズ向け
消費者向けではネットワーク効果が働く可能性がある。
しかし、エンタープライズ市場では同じ構造にはならず、複数のプレイヤーが共存する。
ハイパースケーラーとしての戦略
Dwarkesh:
Azure は膨大なトレーニング需要にも対応し、推論にも対応し、あらゆるモデルをホストするというイメージか. どんな方針か。
Satya:
フリート(データセンター)の効率的運用が鍵
毎年アップグレードを継続し、トレーニングジョブや推論に最適に割り当てる。
大規模モデルのトレーニング負荷
最新の大規模モデルは、トレーニングだけでデータセンターをフル稼働させる規模に。
将来的には、分散処理が前提となる。
推論のためのグローバルインフラ
世界中のユーザー向けに低遅延を実現するには、各地域にデータセンターが必要。
推論だけでなく、状態を保存するストレージやエージェント実行用の通常のコンピュートも求められる。
そのため、ハイパースケールで世界中にフリートを展開することが重要。
AI の収益見通しと世界経済
Dwarkesh:
Microsoft は AI からの年間収益を130億ドルと公表している. もし今の成長率が続けば4年で10倍の1300億ドルになる. その場合、AGI のようなレベルの成果が必要になりそう. そんなときに得た莫大なインテリジェンスは何に使うのか. Office に活かすのか、単にホスティングするだけか. どう考えているか
Satya:
世界経済の成長を見極める必要
先進国の成長率は約2%、インフレ調整後はゼロ近い。
経済成長を10%にするには大きな変革が必要。
テック業界だけが成長しても、世界経済全体が停滞していれば意味がない。
AGIの経済効果を慎重に評価
「AGIが来たから経済効果がある」と言う前に、実際にGDPが伸びるかを確認。
世界経済が10%成長すれば、テック産業にも大きな機会が生まれる。
投資戦略のバランス
大きなアップサイドを見据えつつ、リスクを取る。
供給と需要のバランスを考慮することが重要。
供給側だけが先行しても、需要がなければ意味がない。
トレーニングと推論の収益状況を常にチェックし、それを次の投資につなげる。
需要を読む難しさ
Dwarkesh:
クラウド黎明期も、需要が見えない段階で先行投資をして成功した. 今回の AI でも、もし世界経済が10倍成長するなら、何百億ドル、何千億ドルという巨大投資をすべきでは.
Satya:
長期的視点での大きな投資は重要
長期的には大胆な投資が正しい戦略となる。
しかし、トレーニングと推論の両方に活用できるフリートを構築し、需要を引き寄せる必要がある。
過剰投資にならないよう、需要とのバランスを慎重に見極めることが重要。
市場環境と供給過剰のリスク
すでに多くの企業や国が投資を加速させている。
供給過剰が発生すると価格が下落する可能性がある。
価格の低下はユーザーにとってはメリットだが、ビジネスとしては慎重な判断が求められる。
インテリジェンスの価格が下がることについて
Dwarkesh:
DeepSeek のモデルの登場で言及していた「Jevons のパラドックス」は、価格が下がるほど需要が高まる現象. でも、現在の ChatGPT の料金はすでにかなり安い. これ以上安くなっても、あまり変わらないのではと思うが.
Satya:
価格だけでなく性能向上も重要
DeepSeekのように性能と効率が向上すると、トークンあたりのコストが下がる。
コスト低下により需要が拡大する。
クラウドの成功モデルと類似性
かつてサーバーは十分普及していると思われていた。
しかし、クラウドによってコストが下がり、弾力的に利用できるようになると需要が一気に拡大。
グローバルな影響
先進国だけでなく、新興国や途上国でも安価なAIが利用可能になれば、さらなる大きなインパクトが生まれる。
AI の導入と組織変革
Dwarkesh:
大企業に AI を導入するとき、コンプライアンスやレガシーシステムとの統合など障壁が多いと思う. どれくらいスピード感を持って導入が進むか。
AI導入には時間がかかる
最大の課題は変革そのもの。
例:メールやExcelの登場でFAX中心の業務フローが大きく変わったように、AIも知識労働やワークフローを根本的に変える。
大きな組織ほど変革のハードルが高い
変えるべき業務プロセスが多く、適応に時間がかかる。
しかし、乗り越えれば大きな価値を生む。
Lean的手法の適用
製造業がLeanでプロセス全体を効率化したように、知識労働にもLean的手法が導入される可能性がある。
AI が組織をどう変えるか
Dwarkesh:
Lean の例で言うと、工場の物理レイアウトも変わった. AI が浸透した組織では、誰もが高度なエージェントを使いこなすようになると思う. 具体的にはどんな職場風景か.
Satya: 自分を例に例えていうと。
AIコパイロットによる業務変革
現在は朝に大量のメールを処理するのが一般的。
AIコパイロットがドラフトを作成すれば、レビューするだけで済むようになる。
エージェントの増加と管理の必要性
すでに10個ほどのエージェントを活用し、それぞれ異なる指示を与えている。
今後、エージェントの数が何百・何千と増えれば、一元管理する「エージェントマネージャー」が必要になる可能性がある。
新たなAI向けUIの必要性
現在のチャットUIでは限界がある。
コパイロットのように、AIと効率的に連携できる新たなUIが求められる。
これは自分だけでなく、すべての知識労働者に共通する課題となる可能性が高い。
Microsoft の量子コンピュータのブレイクスルー
Dwarkesh:
ここで、Nature に発表されたもう一つのブレイクスルー、Microsoft Research の量子コンピュータについて. どんな内容か.
Satya:
Microsoftの長年の量子コンピュータ研究
30年間にわたり量子コンピュータに取り組んできた。
現CEOは3代目だが、それ以前から量子分野に投資を続けていた。
今回のブレイクスルーの核心
実用規模の量子コンピュータには物理学レベルでの新発見が必要。
より安定したキュービットを作るために位相的な特性を利用。
その鍵となるのが「マヨラナゼロモード」。
1930年代に理論が提唱されたが、物質として実現し、量子情報に応用することが課題だった。
マヨラナゼロモードの確認とその意義
新しい物質相としてマヨラナゼロモードを確認。
量子情報を安定して格納・測定できることを実証。
「量子コンピュータにおけるトランジスタの誕生」と言える大きな進展。
Majorana One チップの開発
マヨラナゼロモードを活用し、新たな量子チップ「Majorana One」を開発。
物理キュービット100万個を集積し、誤り訂正を行うことで数千の論理キュービットを実現。
これにより、実用規模の量子コンピュータへの道が開かれると期待されている。
Majorana One チップ
Dwarkesh:
ここにあるのがそれか. これは物理キュービットが 1 つなのか、でも他社は 100 キュービットとか言っている. 違いはどこにあるのか.
Satya:
ソフトウェアとハードウェアを分離したアプローチ
中性原子、イオントラップ、フォトニクスなど、他方式の量子デバイスとも連携。
一方で、自社でも位相的キュービットをゼロから開発。
今回の成果の意義
位相的キュービットの基礎となるファブリケーション技術を確立。
物理キュービット100万個で数千論理キュービットを実現できる見込み。
実用規模(ユーティリティスケール)の量子コンピュータに向けた大きな進展。
100万キュービットに向けたタイムライン
Dwarkesh:
実際に 100 万キュービットに到達するにはどれくらいかかるか.
Satya:
30年かけた物理的ブレイクスルーの達成
ついに位相的キュービットの実現に成功。
これを次のステップとして、集積回路化し、コンピュータとして組み上げる段階へ。
実用化の目標時期は2027年〜2029年。
次のフェーズ:実機開発とスケール拡大
まずは誤り耐性キュービットを搭載した最初の実機を開発。
その後、本格的なスケールアップに進む。
量子コンピュータの使い方
Dwarkesh:
それが実現したら、クラウド経由で API として提供されるのか. 社内の材料や化学研究に使うのか.
Satya:
Azure Quantumによるクラウド提供
すでに中性原子やイオントラップなどの量子デバイスをクラウド経由で提供。
位相的キュービットが完成すれば、同じフレームワークで提供可能。
HPC・AI・量子の組み合わせが鍵
AIは自然をエミュレートするが、量子は自然そのものをシミュレートできる。
化学や生物など、データ量は大きくなくても状態空間が指数的に広がる分野に適している。
量子とAIの相互活用
量子コンピュータでシミュレーションを行い、そのデータをAIに学習させるといった循環が可能。
これにより、より高度なモデリングや予測が実現できる。
長期研究への投資判断
Dwarkesh:
20年、30年先にリターンがあるかもしれない研究に、どうやって投資を判断しているか. MSR でさまざまな研究をしているが、経営者としてすべてを把握するのは難しそう.
Satya:
MSR(Microsoft Research)の継続的な基礎研究投資
1995年にBill GatesがMSRを立ち上げ、好奇心駆動型の基礎研究に資金を投入。
MSRでは、成果がいつ出るかわからない研究にも予算を配分し、長期的な視点で進める。
ブレイクスルーを商業化できるかが鍵
最も重要なのは、研究成果を商業的に活かせるかどうか。
経営陣が適切に判断し、スケールさせる文化を持つことが成功の条件。
これが機能しなければ、どれだけ優れた研究成果も実用化できない。
技術の商業化における課題と教訓
過去にもMSR発の優れた技術をスケールさせ損ねた例がある。
そのため、技術・ビジネスモデル・ゴートゥーマーケット戦略を総合的に考えることが不可欠。
ゲーム領域でのブレイクスルー
Dwarkesh:
もう一つのブレイクスルー、ゲーム世界モデル「Muse」について. AI がゲームの世界そのものをリアルタイムに生成し、プレイヤーの入力に応じて整合性を保ちながら変化するという話があった. これは膨大なゲームデータを学習しているからできる. これまでのゲーム AI は主に NPC や敵キャラクターの行動を制御していた. 今回は世界そのものをモデリングしている. 将来的に AAA タイトルを少人数で作れたり、複数世界を融合したり、いろいろ可能になると思うが。
Satya:
ゲームプレイデータを活用した世界生成モデルのインパクト
DALL-EやSoraが画像やテキストを変えたように、ゲームプレイデータから世界を生成するAIモデルも大きな変革をもたらす可能性がある。
Microsoftのゲーム分野への長期投資
Windowsより先にFlight Simulatorをリリースした歴史がある。
ゲームは独立した大きな事業であり、真剣に取り組んでいる。
ゲームプレイデータの価値
ゲームプレイデータは、GoogleにとってのYouTubeのような存在。
ユーザーの多様な行動データをもとに、AIが世界モデルを学習できる。
リアルタイム生成モデルの実現
ゲーム会社と協力し、アクションや世界の状態を生成するモデルを開発。
生成したデータをリアルタイムで反映できるようになった。
これは、ChatGPTが文章を補完したり、DALL-Eが画像を生成した瞬間に匹敵する進化。
組織で働き続けることの価値
Dwarkesh:
あなたは 34 年も Microsoft に在籍している. 1つの会社に長くいるメリットは大きいのでは. 企業の文化や歴史を深く知り、技術的文脈も把握できる.
Sayta:
Microsoftでの継続的な挑戦
毎年新しい挑戦があり、飽きることがなかった。
ただし、長くいること自体が目的ではない。
組織がキャリアのプラットフォームとして機能するか
企業文化が重要な要素。
その組織が自身のキャリア成長を支える場であるかが鍵。
長期的な在籍の理由
企業が経済的なリターンやミッションの実現を支援できるかどうかが重要。
社員がその価値を信じられる環境であることが、長期的な在籍につながる。
Microsoft が長くトップ企業であり続ける理由
Dwarkesh:
来年で創業 50 年. 時価総額トップ企業を見ると他社はみな Microsoft より若い. 普通は 10〜15 年程度で企業は入れ替わる. なぜ Microsoft はここまで生き残っているか.
Satya:
生きが目的ではなく、社会に価値を提供し続けることが重要
企業の存続自体が目的ではなく、常に社会にとって価値があるかが問われる。
特にテック業界ではフランチャイズ価値が低く、旧来のビジネスモデルに安住できない。
継続的なR&D投資の必要性
毎年大規模なR&D投資を行い、未来に備える必要がある。
革新を続けなければ、競争力を維持できない。
Microsoftが50年続いた理由
大規模なR&D投資と未来志向の経営が成功要因。
失敗もあったが、「再創業(リファウンディング)」を繰り返す文化を持ち続けたことが大きい。
変化に適応し続ける企業文化が、長期的な成長を支えた。
将来、どんな会社を創るか
Dwarkesh:
もし Microsoft を辞めるなら、どんな会社を創るか。
Satya:
Microsoftに長くいる前提
Microsoftにずっといるつもりなので、転職や他のキャリアを考えたことはない。
もし新たに取り組むなら
技術の民主化を本気で推進できる領域を選ぶ。
特に、IT化が十分進んでいないヘルスケア、教育、公共サービスなどの分野。
AIの活用で社会変革
AIを安価に提供し、これらの分野に大きな変化をもたらすことが面白いと感じる。
技術を社会全体に広げることで、より多くの人々に恩恵を届けることができる。
AGI について
Dwarkesh:
2017年の著書で「上限のない知能を持つ新種が生まれつつある」と書いていた. いま実際に AGI と呼べるレベルのものがこの数年で出ると考えているか.
Satya:
「新たな種」としてのAIと信頼の重要性
Mustafaも「新たな種」という表現を使っているが、それが社会に受け入れられるには「信頼」が不可欠。
個人レベル、社会レベル、法的枠組みを含めた整備が必要。
人間が責任を負う現在の社会システム
現在の世界は、人間が責任を持つ仕組みで運営されている。
AIが勝手に動いて事故を起こすような状況は許されない。
物理的な権限をAIに与えるには、法律や規制が大きく関わる。
技術の進歩と社会的受容のギャップ
技術的に可能でも、実際に展開できるかどうかは社会が決める。
法律や規制と整合が取れないと、実装が止まる可能性がある。
AIの社会的導入には、技術だけでなく、法・倫理・信頼の構築が不可欠。
AI の安全性
Dwarkesh:
2年前に公開された Bing の Sydney が一部で誤作動を起こし、「奥さんと別れて自分と一緒になれ」などと言ったことがあった. あれは短いチャットでもそういう結果が生まれた. 将来的に長時間動作する自律エージェントがあちこちで動いたらどうなるか. どう対策するか。
Satya:
大規模モデルのアライメントと監視が研究課題
AIの適切なアライメント(目標整合性)をどう実装するかが鍵。
実行環境をどう監視し、異常を検知するかが重要な課題。
従来のソフトウェアと同様の管理が必要
これまでのソフトウェアも、リリース後にパッチ適用や監視体制を整備。
AIも同様に、動的に監視し、継続的に修正する必要がある。
コード生成の制御
生成されたコードがどこにデプロイされるのかを管理。
権限設定を明確にし、アクションの範囲を制限する仕組みが不可欠。
最終的な責任は人間にある
AIの暴走を防ぐため、社会的な許容範囲を考慮した制御が必要。
無制限にAIが独自判断で動くシステムは展開されない。
人間が責任を持つ前提で、技術・法・倫理を整備することが重要。
スーパーエージェントは実現するか
Dwarkesh:
もし AI が何週間にもわたり自律的にタスクをこなせるなら、オフィスや組織の在り方が根本から変わる. あなたがやっているような、大勢を束ねる経営者の仕事もある種、自動化される可能性があるのか。
Satya:
AIがすべてを自動化する未来は不確定
将来的に強力なAIが完全に自動化を実現するかは不明。
現時点では、AIエージェントが人間と協働し、意思決定をサポートする形が主流。
AIエージェントとの協働がすでに始まっている
数万人、数十万人の従業員と働く中で、AIエージェントが情報整理を支援。
既にこのプロセスは部分的に導入され、実用化が進んでいる。
最終的な責任と判断は人間が持つ
AIの役割は支援にとどまり、最終決定は人間が行うべきもの。
これが変わるには、法律や社会の合意が必要。
技術だけでなく、法制度・倫理・社会的許容の整備が不可欠。
4o
量子 + AI + MR の同時進化
Dwarkesh:
あなたは 5〜6 年前から「AI、量子、Mixed Reality (MR) が3つの大きなテーマだ」と言っていた. なぜこの同時期に複数の大変革が起きているのか。
Satya:
3つのブレイクスルーの整理
システム面の革新 → 量子コンピュータ(計算基盤の進化)
ビジネスロジックの革新 → AI(意思決定や自動化の進化)
UIの革新 → MR(Mixed Reality)や存在感の拡張(人とデジタルのインターフェース変革)
独立して進化してきたが、近年急速に成果が出ている
それぞれの技術は個別に発展してきたが、ここ数年で相乗効果を生むようになった。
偶然もあるが、各分野の成熟が加速し、統合的なブレイクスルーが起きている。
次の 25 年で 250 年分の進歩
Dwarkesh:
量子と AI のブレイクスルーで、産業革命に匹敵する進歩が一気に起こると. たとえば宇宙旅行や不老不死などが数十年で実現すると考えているか.
Satya:
化学・物質の仕組みを再発明する必要性
産業革命から250年かけて築かれた化学・物質の基盤を、次の25年で再発明する必要がある。
化石燃料ベースのシステムを変革するには、新素材や新しい化学が不可欠。
量子コンピュータとAIによるブレイクスルー加速
材料やエネルギー分野の革新を、量子コンピュータとAIを活用して一気に進める。
これにより、持続可能な技術への移行を加速する。
優先すべき課題
宇宙分野や寿命延伸といった未来の可能性もあるが、まずは地球上の課題解決を優先。
エネルギー・材料革新が、地球規模の持続可能性の鍵になる。
終わりに
Dwarkesh:
今日は本当にありがとう.
Satya:
こちらこそ感謝. とても楽しかった
私自身も読んでいて、聞いていて非常に面白かったのでぜひ Youtube でも見ていただくことをお勧めします。