山口新聞 東流西流 #2「知識は理解と同じ?」

山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していく。

#2 知識は理解と同じ?

アートが分かりにくいと言われるのはなぜか?というテーマの二回目です。前回は内容と形式という話から、アートの形式だけでも知っていれば理解の助けになる可能性を示しました。今回は形式としては馴染み深い、世界最短の文学「俳句」を例に考えてみます。

 「古池や蛙飛び込む水の音」芭蕉の詠んだ有名な句です。もし、五・七・五という形式を知らなければ、意味のわからないただの短文と思うかもしれません。俳句に季語があることを知っていれば、どれが季語?どんな季節?と読み込めます。これは、形式についての知識が作品を味わう手がかりとなる例です。

 次に内容を見てみます。多くの人がこの句に、静けさや侘しさという印象を持っていると思います。しかしこれは知識が影響しています。もし先入観なく読んだなら、複数のカエルが飛び込む賑やかな音を想起しても不自然ではないです。よく見れば作品そのものにはどこにも「一匹」とはありません。

 定番の解説を知ることも大切な知識の一つですが、実はそれだけが解釈の可能性ではありません。次回はニューヨークMoMAで発明された、より自由な作品鑑賞メソッドを紹介します。

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