山口新聞 東流西流 #7「ようこそミュージアムへ」

山口新聞の担当の方から了承をもらい、こちらのノートへ転載していくことにする。

#7 ようこそミュージアムへ

 アートが難しいと言われる理由を探る連載も今回が最終回となりました。

 アートは確かに過去や歴史などの文脈に依存する側面があります。一方で読み解き方については不正解がなく自由だとも言われます。しかし、自由という言葉は、逆に人を不安にさせ、思考停止を招くようです。

 実際アーティストは意図を持って作品を作ります。しかし実はこれに縛られる必要はありません。私の経験から言えば、多様な鑑賞者の想像を超える反応を、アーティストは概ね好意的に受け取ります。「作家の意図が判っとらん!」と怒るより、むしろ「そんなふうに読み解けるんだ!面白いねー」となります。この事実が示しているのは、作品はメッセージを伝える代弁者ではなく、多様な反応が生まれる交差点のような存在だということです。

 だとすると鑑賞者がすべきことは「分からない」という思考停止ではなく、「面白がれる力」を発揮して、目の前の作品から自分なりの解釈を構築することです。「作品の中にこんな要素が見つかるなら、こうも読み解けるかしら」といった具合に、鑑賞とは可能性をひらいていく創造的な行為です。作品を介した鑑賞者の多様な解釈が行き交う豊かな交流の場、これがアート鑑賞のあるべき姿なのです。

 ミュージアムは楽しむ鑑賞者を全力でお迎えします。

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