【うちの子創作-E000】此迄之荒筋。【その3】
負の想念・恨みの呪縛から解き放たれ、大幅なパワーアップを遂げたカスガであったが、その道行きはまだまだ険しい。
元の主に身体を返そうとする人間のカスガであったが、その試みはうまくいかなかった。生き返しにより身体に固着した時間が相当に長かったことと、荒ぶる魂となっていた期間中は身体の主導権を無意識に手放していたことにより、オーガのカスガは既に霊体として自己の存在を固定してしまっていたのである。話し合いの結果、今後はオーガのカスガは背後霊として取り憑き、必要に応じて手助けや助言をすることでまとまった。
これまでの経過報告とピュージュの行方の情報を得るため、カスガは賢者ホーローのもとを――つまりは大陸間鉄道を訪ねる。再会したホーローに己の研鑽を褒められるも、ピュージュ本人の行方は杳として知れないこと、それとは別に世界の各地で災禍のタネを生み出すような事件がいくつか起きていることを知らされることとなった。
ならば、そうした事件の影を追うことを優先するべきだろう。それがピュージュを見つけ出す手がかりになるかもしれないのだから。
二人のカスガとホーローの結論はまとまり、カスガはそのまま世界各地を転々とする冒険の旅を始めることとなった。
そこからの冒険は多岐に及ぶ。
裁縫職人見習いのオーガの青年との友誼。以後長く続く気のおけない付き合いは、旅で荒みがちなカスガにとって大きな励ましとなった。
ドルワーム王国での幽霊騒動と、愉快な怪盗との一夜。霊は祓うだけのものではなく、様々な付き合い方があるのだと知った。
なんでも整備屋を営むウェディとの出会い。彼女の職場に収められた数々の危険物に反し、彼女自身はカスガにとって好感の持てる人物であった。
陰衆の頭領とかち合い、大揉めに揉めた事件もあった。その時に侮蔑混じりで「祈祷師」という呼称を頂戴したのも今ではいい思い出だ。
復興しつつあるエテーネの村へもはるばる足を運んだ。その際にアバ様の霊とも語らい、旅への決意を新たにした。
セレドの町での慰霊祭にも参加した。死と生の狭間を行き来した少年との語らいは、カスガにとって非常に印象深いものとなった。
アズランの住宅村では、幽霊屋敷と化していた一軒をまるごと浄化してみせた。カスガの心霊案件に対する相性のよさと、卓越した手腕の象徴ともいえる事件であった。
その他にもさまざまな事件の解決をしながら、カスガは世界中を探して回る日々を送った。
そしてついに、ウェナ諸島にてピュージュの手がかりを掴むこととなる。
だが、ピュージュは数多くの分身体を持ち、ひとつひとつを潰しているだけでは決して勝てないことをこの時思い知ることになる。
この事件の際に、偶然ながら天馬にまたがった勇者姫との邂逅を果たすこととなるが、二人の間には情報の伝達程度の会話が成されただけとなった。彼女とその盟友に正面から出会うのは、もっとずっと後のことである。
再びホーローの元を訪ね、ピュージュの分身体の情報を伝達することで、カスガは今後の作戦を伝えられた。
曰く、分身体の中に必ず本体はあるが、ピュージュの出方から察せられるように本体は安全圏に居る可能性が高い。ならばその安全圏を叩き、分身体をあぶり出し続けることによって必ず本体が浮き上がってくるはずである。
魔界にいる分身体は信頼できるものが追う。カスガはアストルティアに潜むピュージュをすべて狩り尽くすために手を貸してほしい、というものだった。
ピュージュの気配を霊的に探知できる術を旅の中で身に着けたカスガは、その作戦を担うのにうってつけであった。
そして、そのときは訪れる。
アストルティア側のピュージュは、数多の作戦参加者の手により撲滅。
魔界側に潜んでいた本体は、紆余曲折の末に賢者マリーンの手により封印されることとなる。
カスガは遂に、その本懐を遂げたのだった。
【Part-Conqueror】