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ニャンとも可愛い!猫の浮世絵に隠れた曲芸の魅力

前回、江戸時代の見世物の一つ、軽業の魅力をお伝えしました。

今回はそんな曲芸にまつわる、可愛い猫の浮世絵のお話です。

歌川広重「猫の鰹節渡」(天保13~14年ごろ)

これは、広重の「猫の鰹節渡」という浮世絵。流行の曲芸「乱杭渡り」を猫が得意げに演じているところで、ユーモアと愛らしさがあふれる作品です。右端には乱杭ならぬ鰹節を支えるスタッフがいて、左端には口上人ならぬ口上猫が「ヨッ!」と言わんばかりに盛り立てています。

口上人は見世物のステージにはマストな存在で、見世物を描いた絵にもよく描かれています。主役の横で扇を持っている人物がいたら、それは口上人。口上人とは、舞台を盛り上げ、観客の注意を惹きつけ、技の説明なども行う重要な役割で、今でいえば司会進行役、MCですね。

上記の画像では見づらいと思いますが、中央の軽業師が片手に持つ扇には「にやんくい渡り(にゃん喰い渡り)」と書かれていて、もちろんこれは「乱杭渡り」のもじり。「乱杭渡り」という芸は、高低差のある何本かの杭の上を渡っていくという軽業芸の一種で、早竹虎吉ほか多くの軽業師が演じている技の一つです。

ちょうどこの絵が作られた直前の天保13年、江戸の深川八幡宮や両国で浪花亀吉菊川伝吉浪花松之助らの曲芸興行が行われており、これがモデルになっているとか。この興行で演じられた乱杭渡りが大変な人気を集めたそうで、だからこうして猫のパロディ絵が残っているんですね。

風景画が有名な広重ですが、猫の絵もいろいろ描いています。このかつお節の上を渡る曲芸猫もなんとも言えない愛らしさがあって、何度見てもフフフと笑いがこみあげてくる、大好きな一枚です。


歌川国芳「流行 猫の曲手毬」

さて、同じく猫が見世物を演じる作品からもう一つ。
こちらは国芳が、「大坂下り 風流曲手まり太夫」という看板で大評判をとった菊川国丸の技を、擬人化ならぬ擬猫化して紹介したもの。

国丸がどれほど人気だったかというと、かの好奇心旺盛な平戸藩主・松浦静山が「見に行きたいが自分の身分では庶民の集まる浅草の見世物に行くことはできないから、使いの者を代わりに見に行かせた」という逸話があるほど。

一体どんな技があったかこの絵を見てみると、まりを蹴りながら階段を上る、まりを指でくるくるまわす、まりを蹴りながら「寿」という文字を書く、などなど。どれもバランス感覚と器用さが必要なものばかりで、今見ても「おおー!」とびっくりしてしまうでしょう。

そうしてこの一番下の右端に、ここでも「乱ぐい渡り」の文字が。まりを蹴りながら、高低差のある杭の上を歩いていたようですね。乱杭渡りをするだけでもすごいのに、まりを蹴りながらなんて…驚きしかありませんよね?

こんな楽しい浮世絵を見ていると、江戸の人々にとって見世物がごく身近なものであったこと、夢中にさせる魅力的なものだったことが改めてよく分かりますね。

今回は、ニャンとも可愛い、見世物にまつわる猫の浮世絵のお話でした。

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それではまた~。

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