イラン大統領のヘリ事故における「生存説」に対するファクトチェック
こんにちは!大東文化大学社会学部野嶋ゼミファクトチェックチーム(齊藤、馬場)です。今回はイランの大統領ライシ氏の死亡事故に関するXの投稿についてファクトチェックを行いました。
1. 検証対象
Xに2024年5月20日午前1時58分に「Sardar Abdul wahab Abbasl」というアカウントより投稿されたポスト。日本人ではない投稿者と見られるが、日本語の投稿を複数行っている。過去の投稿を見ていると不自然な表現もあり、自動翻訳などを使っている可能性がある。
2. なぜこのテーマを選んだのか
イラン大統領の死亡事故に関連した真偽不確かな情報がSNS上で錯綜していたため、その中の1つを今回のテーマとして選んだ。
この投稿の表示件数が52.5万件(2024年5月30日現在)となっていたため影響力が大きいと考えた。
3. 検証判定・レーティング
虚偽
全て、もしくは根幹部分に誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
4. 検証過程
4-1 検証過程
事故から報道までの時系列について、簡単に記載する。
ライシ大統領を載せたヘリコプターが墜落したと現地メディアが報じた。(現地時間16:17)→この時点ではまだ安否は不明。
大統領の同行者2人と連絡を取れたと発表。(現地時間21:15) →天候不順で救助困難。
大統領を含む乗客乗員全員の死亡が発表された。(現地時間8:00)
ツイートした時間は同行者2人と連絡を取れた時間とほぼ同じ。
→「連絡を取れた」とは書いてあるものの「大統領の無事」を伝え
る記事はなかった。
4-2 検証過程
実際にライシ大統領は死亡していないのか?
ヘリに乗っていた8名全員が死亡死したと各報道局が報道している。
ヘリの墜落原因は、現在(2024年5月30日時点)でも不明。
2024年5月20日には捜索の結果、炎上して燃え尽きた機体が発見されている。
さらにBBCNews Japanでは遺体を運び出す映像があり、遺体はタブリーズに運ばれるとされている。
5. 「虚偽」に至った理由
当該アカウントはこの投稿後も大統領に関するツイートをしている。
その後のツイートには「大統領が死亡した」という書き込みがあった。
→死亡が判明しているならば投稿を訂正、削除する必要がある。
しかし、現在でも投稿は存在している。
そのため「虚偽」と判定した。
6. まとめ
これだけの報道、映像の証拠からイラン大統領であるライシ氏が死亡しておらず、回復しているという朗報は残念ながら事実無根である。
当該アカウントは死亡している事実が判明しているにもかかわらず、間違った情報を拡散し続けている極めて悪質な行為だと考えている。
したがって、我々は今回の投稿に対して「虚偽」と判定した。