「クリミアの浜辺で起きたウクライナNATO軍による無差別攻撃」についてのファクトチェック
こんにちは。野嶋ゼミ3年ファクトチェックチームの松村です。
今回は、「クリミアの浜辺で起きたウクライナNATO軍による無差別攻撃」についてのファクトチェックを行いました。
1.検証対象
この投稿は、2024年6月26日にXに投稿されました。9月29日時点でいいね数1.7万、リポスト7,084、表示829.9万。
投稿者は日系企業を退職後、大学で日本語を教えているロシア在住者でした。支持政党はなく、「日本の第一次産業やモノづくりを復活させたい」と発言していることから、親露派ではないことが分かります。投稿の多くは政治に関することでした。
2.検証判定・レーティング
今回は「誤り」という判定をしました。
3.検証過程
クリミア半島とは
黒海の北側から南に大きく突き出したウクライナ南部に位置しています。
ロシア帝国の崩壊後はソビエトに引き継がれましたが、1954年にクリミア半島の帰属をロシア共和国からウクライナ共和国に移管しました。
そして、1991年にソビエトが崩壊しウクライナが独立すると、ロシアとウクライナの間で帰属をめぐり対立しています。
また、ロシア系住民が多くを占めているクリミアで住民投票を強行し、圧倒的多数の賛成を得たとして、プーチン政権はクリミアを併合すると一方的に宣言しました。
その結果、実効支配はロシア、法律上はウクライナとなっています。
そのため、クリミア半島は両国にとってとても重要な拠点となっています。
出来事の流れ
2024年6月23日にウクライナアがクリミア半島を攻撃しました。この時使用した武器は、米国から供与されたクラスター弾搭載のATACMC戦術ミサイルです。その際、子供を2人を含む4人が死亡、151人が負傷しました。
6月23日にロシア国防省がウクライナの攻撃についての説明をした。
6月26日に今回の検証対象の記事が投稿された。
このことから、今回の投稿はクリミア半島の攻撃から数日経っていることが分かります。
ロシア国防省の説明
ウクライナ軍がクラスター弾搭載のミサイル5発を発射し、ロシアはクリミアの防空施設でこれを迎撃したと説明。その際、破片が落下したとした。
ウクライナが使用したミサイルはアメリカが供与した陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)で、すべてのATACMSミサイルはアメリカの専門技術者がプログラムし、アメリカの衛星が誘導していると主張した。
以上の記述は、2024年6月25日のBBCニュースの記事に書かれています。
つまり、ウクライナが無差別攻撃をしたわけではなくて、たまたまセバストポリ北側の海岸近くにミサイルの破片が落下したことになります。そのため、ビーチを狙っての攻撃ではないことが明らかになりました。
4.まとめ
6月23日にウクライナがクリミア半島を攻撃した。
子供2人を含む4人が死亡、151人が負傷した。
ロシアがクリミアの防空施設で迎撃したときに破片が落下した。
ビーチを狙っての攻撃ではない→無差別攻撃ではない
今回は、ウクライナによる無差別攻撃があったのかについてのファクトチェックを行いました。ウクライナ軍の攻撃に対して、ロシアが迎撃をした際にミサイルの飛行軌道がそれ、セバストポリの海岸近くに破片が落下しました。つまり、ビーチを狙っての攻撃ではなく、ウクライナの無差別攻撃ではありませんでした。
また、検証対象で記述したように投稿者は親露派ではないため、意図的に間違った記事を投稿したわけではないことが考えられます。
以上のことから、今回の検証対象は「誤り」と判定しました。