「産まず(うまず)して何が女性か」という上川陽子外相発言」に関する報道のファクトチェック
こんにちは。野嶋ゼミ3年ファクトチェックチーム(仁藤・松村)です。
今回私たちは、「産まず(うまず)して何が女性か」との内容が話題になった上川陽子外相の発言をめぐる報道についてファクトチェックを行いました。
1.検証対象
2024年5月18日に、「京都新聞」の公式アカウントがXに投稿しました。 いいね数 415件・リポスト数 923件・表示475.4万・フォロワー18.3万。
今回はこの投稿について検証しました。
2.この記事を選んだ理由
多くの人に人に見られている投稿だった。
発信源が、影響力のある新聞社だった。
今、ジェンダー問題は社会的に敏感な話題で、誤解や議論を引き起こしやすいため。
3.検証判定・レーティング
今回、私たちはミスリードという判定をしました。
4.検証過程
検証過程1
上川外相はどのようなことを言っていたのか調べました。
下にある画像は、上川議員が応援演説の際に発言した内容の全ての文です。そして、赤線で引かれているところが、今回取り上げられた問題発言の部分です。ここでの注目ポイントは、問題発言の前の文です。
そこには、「今、一歩を踏み出していただいたこの方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」と書かれています。そのため、上川議員は候補者を「知事」としてうむということに解釈できます。つまり、子どもを「出産」するという意味では発言していなかったということになります。
この発言は、静岡県知事選の選挙運動期間中である5月18日、ある候補者の応援演説のための集会で発した発言の一部であり、その言葉が記事のタイトルになっていましたが、「うむ」が「産む」に解釈されたようです。
その背景には、こんな事情もありそうです。
女性+うむ=「出産」というイメージがある。
女性支持者の集まりだったため、より出産を連想させる。
全ての女性が出産するわけではない。
上川外相の発言は言葉足らずなところがあり、誤解を生む余地もあったと言えるでしょう。実際、野党からは「『子どもを産まない女性は女性ではない』と受け取られかねない不適切な発言だ」というように批判が出ました。
検証過程2
では、ここで対象記事に注目します。京都新聞は、記事のタイトルの「うまず」を漢字表記の「産まず」と書いてあることが分かります。
そのため、上川議員と京都新聞での「うむ」という言葉の意味が変わってくることが分かります。そして、「うむ」という字を漢字表記にすることで、記事を閲覧した人が出産のイメージに誤解する可能性があります。
つまり、京都新聞はタイトルの表記を誤っていることが判明しました。
一方、本件に関するほかのメディア報道などを確認してみると「産む」というタイトルで記事を掲載していたのは京都新聞だけではなかったようです。
5月23日のプレジデントオンラインの記事(https://president.jp/articles/-/81981?page=1)の検証にあるように、通信社である共同通信から「産む」を示唆するような配信があり、地方紙がその内容に沿って各サイトで報道した、という経緯もあったようです。
4.まとめ
今回のファクトチェックのまとめをします。
上川外相の発言は女性+うむ=「出産」という誤解を招きやすい表現ではあったが、実際には、候補者を知事として「うむ」という意味だった。
メディアは記事で「うむ」を「産む」と漢字表記にして誤解が広がった。
そのため、今回のファクトチェックは、記事タイトルは確かに誤りの要素もあるが、元の発言自体にも誤解の余地があったため、総合的な判断として「ミスリード」という判定にしました。
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