【林業してる女子のあれこれ】2年目の下刈りシーズンが無事終了!
もう10月になってしまいましたが、9月には無事に今年の下刈りシーズンを終えることができました。6月初旬から9月中旬までの3か月半、ほぼずっと刈払い機を握りしめ、来る日も来る日も草を刈り続けていたことになります。造林作業において、下刈りの占める割合が大きいことを改めて実感した3か月半でした。
昨年もシーズン終わりに下刈りの振り返りをしましたが、今年も簡単に振り返ってみようと思います。
去年の振り返りはこちら
まずは、今シーズンの下刈りで良かったことから。
【良かったポイント①】重大な事故・怪我が無かった!
昨年も書きましたが、下刈り作業はいくつかの危険があります。まず、刈払い機を使用するので切創事故が起これば大怪我につながる可能性があります。また、ハチが活発に活動するシーズンにあたるため、ハチ刺されの危険もあります。暑い中での作業となるため、熱中症になる可能性もあります。
今年度の下刈りシーズンでは、メンバーの小さな体調不良などあったものの、救急搬送や入院が必要なほどの事故や怪我はありませんでした!今年は入社したての林業未経験者もメンバーにいたのですが、全員、五体満足でシーズンを終えられたのは何より良かったです。安全管理についてはまた改めてまとめたいと思いますが、引き続き労災ゼロを目指して頑張っていこうと思います。
【良かったポイント②】工期に間に合った……!
下刈りは草の成長が旺盛な8月いっぱいが工期のことが多く、限られた期間で作業を終えなければいけず工期が厳しめです。また、草の繁茂状況によって現場に入れるか変わってきたり(草が薄いと現場を始められない)、苗の大きさや草の濃さによって進みの速さが変わってくるため、スケジュール調整が難しかったです。そんな中、全ての現場を工期内に終わらせることができたのは良かったなと思います。
一方で、まだまだ課題もあります。
【今後の課題①】誤伐をどう減らすか
そもそも何のために下刈りをやっているのかというと、植えた苗を健全に育てるためです。しかし、植えた苗を間違って伐ってしまうこともあり、これを誤伐と呼びます。苗が小さいと誤伐リスクも高まりますが、特に今年は植えたばかりで苗が小さい現場が多く、誤伐が多くなってしまった場所もありました。
コストとの兼ね合いはもちろんありますが、良い森をつくるために誤伐を減らすに越したことはありません。誤伐を全くのゼロにするのは難しいですが、現場の状況に応じて苗が小さい現場は草が伸びきる前に入るようにしたり、誤伐リスクの高い場所は時間をかけるようにしたりして、来年は誤伐を減らしていきたいと思います。
【今後の課題②】雨の日の作業をどう考えるか
例年、6月ぐらいから下刈りに入りますが、6月中旬〜7月中旬ぐらいは梅雨時期となり、雨が多いです。今の会社は雨の日は休みの方針のため、作業できる日が限られます。雨の日作業は危険が増すため避けるのがベストではあるのですが、そうすると現場が進まず工期が迫ってきます。今年は休みの日をずらしたりして何とか作業日を確保しましたが、休みの予定がずれるとメンバーのストレスにもつながります。また、工期が迫って余裕が無くなると焦る気持ちから事故の危険も高まります。
例えば、多少の雨ならば傾斜が緩い場所を進めるなど、安全を確保した上での雨の日作業なども来年は検討していきたいと思います。
また、今シーズンは社有林の下刈りもありました。社有林で行っている、良い森づくりのための試みを少し紹介したいと思います。
天然更新している樹木の実生や萌芽を残してみた!
会社として、生物多様性の森づくり(ざっくり説明すると色々な生き物がいる森にしよう!ということ)に少しずつ取り組んでいます。その1つの試みが、地拵え・下刈り時に天然更新している樹木を残すということです。造林地には植えた苗以外にも、鳥や風が運んできたタネや、ネズミが土に埋めたタネから発芽した樹木の芽生え(実生とも言う)があります。その中で特に高木性(樹高が高くなる樹木)をなるべく選んで残してみました。
今までの造林では、「スギを植えた場所ではスギ以外全部刈り払ってしまえ」というのがスタンダードな考え方でしたが、スギばかりの山には住める生き物も限られます。「色々な種類の樹木を混ぜて植えてみては?」と思う方もいるかもしれません。その方法は一理あるのですが、現状の補助金の制度上、利益が出にくいため積極的に採用していません。今回採用した「勝手に生えてきた樹木を残して育てる」は、そこまで大きなコストはかからず、多様な樹木の生える森をつくれる可能性があります。
もちろん注意点はあります!まず、この方法はあくまでも試験的にやってみたまでで、正解かどうかはまだ分からないということです(そもそも森づくりの正解とは何か?、いつになったら答えが出るのか?という問題もあるのですが……)。この方法を採用した山が、どのように変化していくのかは今後も観察を続ける必要があります。また、木材生産を主な目的とする山では多様な樹種が入っていることで作業の効率が落ち、経済的に不利になる可能性があるため、すべての山でこの方法を採用するかは議論の余地があります。そして、下刈りは今後数年間は毎年行いますが、クオリティを揃えることも課題になりそうです。現状では、班のメンバーの中で樹木の知識に差がある状態なので、「何を残して何を伐るか」の統一ができていません。それでも、班のメンバーは分かりやすい樹種から1種類ずつ、確実に樹木を覚えてきてくれています。「林業に携わっている人間でも、生き物に興味がある人ばかりではない」というのは業界のあるあるなので、このメンバーの姿勢に私は感激しました。
個人的には、現場によって生えている樹種がかなり異なることがおもしろかったです。「この現場はハリギリが多いな」とか、「この現場は林縁がスギで囲まれているから、鳥散布のホオノキやミズキがメインだな」とか。山を見る眼がちょっと変わってきて、解像度が少しだけ上がった気がします。
簡単ですが今シーズンの下刈り振り返りでした。
下刈りが終われど、今年の造林の仕事はまだまだあります。引き続き、気を引き締めて頑張っていこうと思います!
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