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明日もあなたに会うために。「世濁声~GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」観た。

この世は碌なもんじゃありません。
観劇後、すぐ仕事で福岡に出張することになり、「俺、福岡から帰ってきたら、世濁声の感想書くんだ」とか言っていたら、まさかの福岡から台湾経由で米国に拉致移動させられ、そこから1週間軟禁拘束必要とされ続けて、家に2週間近く帰れなくなる始末。労働はクソ。(CV:津田⚪︎次郎)
それ以降も過酷な師走ラッシュを走り抜けていたら、年末になっちゃった。

まあ社畜の言うクソなんて甘っちょろいもんで、生きて働けてるだけ幸せ者だし、今でも世界で紛争は続いてて、日本にだってどっかの誰かさん達のせいで生活に息苦しさを感じている人も大勢いらっしゃるので、これしきで「この世は碌なものではない」なんて言うもんじゃないんだよ。
現代社会よ、世界平和を願うのは笑い事でもなんでもないんだぜ。


そんなこんなでお話したいのは、

今年からペーぺー状態で有識ファンの皆様のお力を借りながら応援させていただいております、鈴木勝吾さん。
が、同じく役者の安西慎太郎さんと2人共同で初めて作・演出・出演の"三足のわらじ"で生み出した作品があるんですって!というお芝居を観に行ったよっていうお話をしたい。
その名も、

「世濁声~GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」

☝︎イントロダクションなど概要は上記HPより。


これは観た後の感想なんですけど、生まれたものが壮絶すぎたので、なんかもう"三足のわらじ"なんてもんじゃない…三足のマーチンで作りました。って感じの作品でした。(は?)

お忙しかったと思うんですけど…どうやってあの話を生み出したのか切にお聞きしたいですな。
生んだと言うより、心の中をそのまま出した感じだったのかな。

..........

鈴木さんは、日々の配信や文字の投稿などを覗かせていただくと、まあ〜この方は考え出したら思考がどこまでも深く止まらない方なんだろうな(良い意味)という印象があるので、そんな人がどんな物語を描くのか。と言うのは、贔屓目なしでも興味がありました。

安西さんのことは、以前、感想にもなってない感想を書かせていただいたアルカナ・シャドウという作品で、"最高おもしれー男(けどかっこいい男)"な藤原伊周を演じられていた方なので、安西さんが生み出すものによって安西さんがどんな方か知れるのも楽しみだし、安西さんの演技をまた観れることも楽しみ…。
こりゃ行くっきゃねえっすわな!!
ってことで勿論、申し込みました。

因みに、普段ならGmailを使用しているのに、今回応募にキャリアメールを使ってしまったせいで当選公演なのに落選メールが送られてきてしまい、クルーでもある役者様にお電話かけさせてしまうというトラブルがありました。お手数おかけして申し訳ございませんでした。
(キャリアメールでの申し込みが原因らしい。皆様もお気を付けを……)



ほっ、本物だァ~~~ッッッ!

ということで、念願叶って"DisGOONieS(ディスグーニーズ)"さんに行って参りましたよ!
DMやらマシュマロやらで沢山オススメいただいたこの場所。一見さんにはハードルの高い場所なのでは…と思っておりましたが、実際乗船したらクルーの皆様含め、あったか〜い場所でした。


レストランでありながらフロアも座席も、全ては役者さん達の板の上。
「でもま、一定の距離は保てるんでしょうƪ(˘⌣˘)ʃ」
と、思っていた私がバカでしたね。
一定の距離、なかったに等しかったですね。
近すぎ。目の前で繰り広げられる演技に、言葉と表現の攻防戦に、その熱量のダイレクトアタックを浴びた私の体は終わった頃にはバッキバキでしたよ。

開演前の店内を普通に役者さんが歩いているということも事前に聞いていたんですけど、いざ遭遇するとやはり心臓は跳ね上がるもんで、かと言ってはしゃぐのもアカンと思った私は「私はあなた方を存じ上げませんけど何か?」顔でやり過ごすなどしていましたね。
嘘です。あなた方を観に来ました。

そしてこのお店、その日演じる役者さんに"差し入れドリンク"として、メッセージ付きのコースターを贈れるとのこと。
オシャレ文化やんけ…!!何事も経験。やれることはやっておこう!と思い、書きました。無念だった点としては、テーブルと私の筆圧の相性が悪く(我筆圧異常強女)、文字が多少歪んでしまったことです。

ご飯!しっかりボリューミー。洋食。美味。
世濁声オリジナルカクテル。すっきりアップルティー的お味。美味。


お店レポはこのくらいにして…感想書きます。
通常運転の主観ありあり感想、捉え方が様々な作品だと思ったので、「コイツはこういう風に思ったんだなぁ😅<チゲエトオモウケド笑」くらいに思っていただければ幸いです。


◎話の流れとか感想ですよ◎

前半では、登場人物2人の会話から、2人の近況や過去が描かれる。
天真爛漫で純粋な悟(鈴木さん)と、どうやら物書きをしているらしい小木。
悟はサロペット姿で開幕早々なあぜなあぜどちて坊やで非常に可愛い。
小木はビシッとシャツにベストにスラックスで髪をきっちり固めており、穏やかな物言いの落ち着いた大人の男性。カウンターでコーヒーを淹れながら悟の疑問に付き合う姿のなんと絵になることよ…。
久々に会ったという第一印象正反対な2人は、回想する。


小学生の頃、教室で飼っているネズミを見ていた時に出会ったようで、小木は昔、ガムテープを口に貼っていたらしい。
人との関わりを疎ましく思っていた小木に、悟はしつこいくらいに話しかける。「なぜ?なぜ?どうして?」と。
いつの間にやら仲良くなったらしい2人は夕焼けの綺麗に見える場所で、見えている風景の美しさと、ここではないどこか、"夕焼けの向こう側"について話す。

この流れが、悟目線と小木目線でリピートされていくのですが、2人ともそれぞれがそれぞれ、簡単に言うと"変なやつ"なんですよね。
悟が話している話を聞いていると小木は凄く変なやつだし、小木の話を聞いていると悟は凄く変なやつ。2人とも、同じように変なやつ。
でもそれぞれ、話し手としている側の時は"まともなやつ"という印象を受けました。
不思議な感覚だな〜と思っていたのですが、今考えると感じ方としては正解だったんじゃないかと。

ここから事態は不穏ムードに急転するんですが、前提として、小木と悟は主人格と別人格/マルチバースの同じ者同士のような者、大きい意味で同一人物なんですね。前項で私が感じた違和感ってこれだったんだなと。
私の感じたまま言うと、悟は小木の理想像というか「こう生きれたら良いな〜」という姿。疑問に思ったことはなんでも聞けて、なんでも美しいと感じられて、ハッピー!みたいな人格(バージョン)という印象を受けました。

矢継ぎ早に明らかになっていく事実として、
・小木は生きていた世界で命を絶った
そしたら、
・第三次世界大戦が勃発して人類は滅亡していることが明らかになり
・人類が滅亡した世界で、"人のような知能を持ったなんらかの者"が一種の仮想世界みたいなものを作り、人間の行動原理を観察し、自分たちが主となるあたらしい世界/新しい個体を作る(?)ための実験のようなものをしており、小木もその世界の住人で、"なんらかの者"達にとってのマウス(実験体)だった。

現れた"男のような形をしたなんらかの者"曰く、そういうことらしく…。

マウスとして生きていた世界を主人格の小木が放棄してしまう(命を経ってしまう)ことによって、別人格の悟は夕焼けの話をしたあの頃から閉じ込められてしまっていて、意思を持たぬまま・気付かぬまま同じ頃を延々ループしている悟のもとに、全てを理解した小木が駆けつけ、荒療治的に全ての真実を話していく。

劇中にも話が出てきて、お話のモデルにもなっている「ユニバース25」の実験を私は存じ上げなかったのですが、興味深い、人間ならではの残酷な実験ですね。
人口が減っていく世界、「そもそもなんでこうなっちゃうのよ?」を研究する学者さんが、今後の都市計画のシミュレーションとして「ちょっとネズミを人間と見立ててシミュレーションしちゃう?」ってことでネズミに繁殖に必要な十分なスペースと無限の食糧を与えられたら、彼らはどのような社会を作り出すのか?を観察したのがこの実験。

実験の中で、多くのネズミは監視下で生活するうちに激しい縄張り争い・餌の取り合い・繁殖行動を行うようになりましたが、そんな中で暴力も争いもセックスも何にもせず、静かに生きるマウスのことを"ビューティフルマウス"と呼んだとのこと。
この物語の副題は「GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE」。
劇中、小木が悟に「おはよう」を言うシーンがあるわけなんですが、このビューティフルマウスが悟のことなのか、小木のことなのか、次にきっと目覚めるであろう別の誰かに向けたものなのかは、「ビューティフルマウスとはなんなのか」を知ると、いくらでも解釈が広げられて美しいなと思いました。

全てを聞いた悟は大混乱。
何が正しいのか、どこからどこまでが正しい"自分の記憶"なのか、全部幻だったのか、この世界はなんなのか、自分は誰なのか、記憶の中の母は、小木はー。
もうこの大混乱中の演技が凄まじくて。
混乱の中で吐いて泣いて叫んで踠いて自問自答を、小木に疑問を投げつけて…。鈴木さん大丈夫なんか?とか冷静に考える思考回路すら観客に与えない姿。そこにいるのは実験体・悟でしかなかったから。
その姿がひたすらに痛々しくて哀しくて、鈴木さんのとてつもなさを幕が閉じた後にやっと深く息をしながら思い返して、改めて実感したのでした。

でもこういう姿を見せられる悟が、小木にとって理想で救いで"切り札"なのだ、と、悟の全てを包み込むような小木の、安西さんの演技を見て思った。
小木は悟に全てを分からせるときこそ激しかったですが、全てを知った彼は、どこかでずっと穏やかなように見えた。安西さんの悟を見つめる表情が、そう思わせてくれた。
世界に恐れず疑問を投げかけられる存在、ちゃんと意思を持った存在。実験の世界の中で、小木より誰より人間然とした悟は"なんらかの者"に対する切り札のような存在なのだと。

だから小木は自分はもう目覚めず、この世界の続き(の人生)は悟に託すようなことを示唆する。
でも悟は、それを拒否する。
今日眠りについても、また起きる時は一緒だと。
この世界がどんなものであっても、2人で過ごした日々や目にした綺麗な夕焼けはあんなにも美しかったのだから。
どちらか1人ではなく、一緒に生きられるように考えよう。と。
ここまでくると、事前に発表されたイントロダクションの言葉がすっと入ってくる。
「君が思う、そして僕が思う。
だからこそ君は君だし、僕は僕でいられるんだ。」
「人の記憶を思うんだ。それがいつか心になる」

発表された時は「つまり…どういうことだってばよ」状態だった私も、作品を見た今ならこの言葉で涙することができる。
眠りにつく2人が、翌日もその先も一緒に「おはよう」を言えたのか、それは私にはわからない。そういう幕の閉じ方をしていたように思う。


ディストピアでありながら、人間としての在り方や、人間同士の在り方を問うて投げかけてくるお話だった。
誰かに物申すとか、選挙行って投票するとか、会議で意見言うとか、好き勝手言って迷惑かける人もいれば、好き勝手言えずに抑え込んで飲み込んで苦しんでしまう人もいる、とすれば、主張し辛い、言いたいことも言えないこんな世の中(あれ?)で、何が正解だろうか。
人と人との関わりの中で、人と生きなければならないこの世の中で、皆が幸せに、一緒に生きるにはどうしたらいいだろう。
「ちゃんと生きるというのは難しいこと」と悟が言っていたように、その全てを解決して答えを出すのは難しすぎるので、私たちはこれからも、大きな実験台の上で、皆で一緒に考えていかなければならない。
全身全霊で伝えてくれた鈴木さんと安西さんのためにも、課された課題を、これからも一緒に生きていかなければならない。


一緒に生きよう…と、ドヤりながらふと気づいたんですが、この2人が短い仮初の青春を過ごし、笑い合い、苦しみ、泣き、眠りにつく姿を高みの見物していた私たちも、実験を行っていた"なんらかの者"だったってこと…!?
え!?あんなに辛い思いをさせて!!ダメじゃん!!一緒に生きていけないよ!!
もう自分で自分にグーパンするしかねえな!!(みぞおちを殴りながら)



話の流れで触れられんかったから山口大地さんについて…。
この作品の一つ前に観劇した「ETERNAL GHOST FISH」にもご出演、大変好いキャラを演じていらした方。こんなにも早い一方的再会を果たすとは…。
実は永魚で山口さんが気になっていまして、wikiでこれまでの作品を調べるなどしていたので、仕事の都合で私が観に行ける日がこの日しか無かった中、ゲストが彼だったことは運命を感じましたね。

事前に、ゲストの方はスーツ・ジャケット有りor無しで現れるということだけ聞いていたので、山口さんはどっちで出てくるんや…と思っていたらどっちでも無かった。
ネオみたいな人出てきた。(なお、人物的にはエージェントスミス)

これのグラスオフver..が現れたと思ってもらっていい

滅茶苦茶かっこよかったです。
"人の形をした人ならざる者"感が出ていて、異質でサイコで威圧的で恐くて最高でしたね。
"そこにいて、話をしていることに違和感を覚える存在"ってそうそう無いと思うのですが、山口さんの佇まいや演技からそれを感じました。



あと余談程度に…。この回は映像機器トラブルがあり、本来だったら投影されていたはずの映像が流せなくなってしまった…ということで。
私、見ようか?直せるかもしれん。トラブルはケーブル?筐体?」と映像職の本能で現場でしゃしゃろうかとも思ったのですが、しゃしゃらずとも大満足に終わりました。
どんな映像だったか見ることは叶わずですが、より五感と想像力が駆り立てられる状況下で観れたのかなと思います。
お二人の手の動きや表現や瞳の輝きのおかげで、私の目の前には綺麗な景色が沢山広がりました。
このレア回を観れてラッキー!!!!


最後に欲を言うならば……
あと何回かこの作品に触れたかったな~~~!
話が理解できるできない云々ではなく、良かったから、また観たかった。
悟と小木にまた会いたかった。
鈴木さんも安西さんも、すごかった。
語彙はないけど、それに尽きる。


大千穐楽から時を超えてそんなお話でした。
生きていれば、また会える気がしますね。
「おやすみ」「おはよう」

グッドイブニングビューティフルワールド




観劇後に印象に凝った言葉とか状況をメモっといたおかげで助かったぜ…。
ありがとう、もう1人の僕!(遊戯王?)
何書いてるのか分からなかったらすいません…。


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