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BUMP OF CHICKEN「ひとりごと」
ねえ 優しさって知ってるんだ 渡せないのに貰えたんだ
きっとさ 人と人との 心の外の中にだけ在るんだ ひとりごと
一人では無理な事だから 誰かとの間に在るから
どちらのものでもない 名前のない それだけに出会いたい
優しさとは心の中にあって、誰かに渡したり貰ったりするものだと思っていたことに気付かされた。だからこそ、誰かとの間に在ってどちらのものでもないという考え方は価値観がひっくり返るような衝撃である。そうか。誰かに優しくしてもらったとき、それは受け取ったものだとばかり思っていたけれど、その優しさに気がつけたことだって優しさなのだろう。それら全てを内包しているのがこの歌詞なのだろうか。
自分から人に優しくするとき、自分は善良なのだという安心からある種の快感があるけれどそれと同時に自分に対しての気持ち悪さを感じていた。とっさに出た優しさにはなんとも思わないけれど、準備したような優しさには特にそう思う。自分でやっておきながら、心の中からネチョネチョしたものを差し出したような気がしてしまうし、そもそも上手く伝えられないことだってある。
「ひとりごと」には、前述した結論に至るまでのそういう葛藤も歌詞にある。
人に良く思われたいだけ 僕は僕を押し付けるだけ
優しくなんかない そうなりたい なりかたが解らない
ねぇ 心の中に無いよ 僕のためのものしかないよ
そうじゃないものを 渡したいけど 渡したい僕がいる
本当、これに気がつけることのすごさがすさまじい。
いつもそうだが、全部言い当てられている気がして思わずうおおお、と声にならない声が出てしまう。
BUMPのすごいところの一つはずっと本当のことを歌っていることにあると思う。ガラスのブルースの頃から今もずっとだ。だからこそ、いつの時代のどの世代の人にも支持されるのだろう。また、一曲のなかで展開があって気づきを与えてくれる。気づきまでの心の動きを詩的に述べる、それを展開と呼ぶのだろう。
また、何万回と聞いたことのある曲でもある日ふと、その歌詞の意味に気がつくのだ。きっかけは経験を通して自分と重ねたり、何でもないときもあったりする。そういう気づきからその曲が、自分の世界が、真新しく感じられる。その時々によって聞こえ方が変化するから、これほどまでに深みがあるのだと思う。
音楽のことはまるでわからないし歌詞への理解も浅いかもしれないけれど、そんなわたしでもすごいなあと思う。これも全てひとりごと。